経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI) は6月30日、2020年3月期の決算を発表した。
営業損益は赤字で、特別損益で構造改革費用がかさんだため、最終的な損益が1000億円余りの赤字と、6年連続の最終赤字となった。
同社は2020年3月期の第1四半期で債務超過になり、赤字が更に膨らむが、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントの出資契約がまとまって、同社への優先株発行とこれに伴うINCJの長期債務の優先株への切り替えにより資本が増強され、債務超過から離脱した。
菊岡稔社長は「構造改革で経営状況は大幅に改善した。収益を生み出せる体質に持っていけるよう、最大限頑張りたい」と述べた。
但し、同社を巡る環境は非常に厳しい。
また、シャープとの間で続いている白山工場の売却交渉については「交渉は最終段階に入っている」として早期の合意を目指す考えを示した。
業績の推移は下記の通り。同社は2019/3の損益を当初の発表後、修正している。
単位:億円 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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特別損失の内容は次の通り。
2018年3月期 固定資産減損損失 1,038億円 海外子会社整理損 155億円 棚卸資産評価損 116億円 その他 128億円 合計 1,437億円 2019年3月期 白山工場資産減損 747億円 その他 14億円 合計 761億円 2020年3月期 事業構造改善費用 672億円 不適切会計関連費用 36億円 その他 5億円 合計 713億円
今期の事業構造改善費用の主なものは下記の通り。白山工場の減損と拠点撤去費用 525億円、早期退職 78億円、委託会社への違約金 31億円、減損69億円、補助金返還 8億円など
なお、特別利益は次の通り。
2019年3月期 持分変動利益 127億円
2020年3月期 投資有価証券売却益 306億円
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JDIは2020年第1四半期で白山工場の減損を含む517億円の事業構造改善費用を特別損失として計上し、連結純損益は833億円の赤字となり、純資産 -790億円と、債務超過となった。
2019/8/14 JDIが債務超過に
JDIは2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。
2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約
この結果、2020年3月末までの間に、INCJのA種優先株1,020億円、いちごのB主優先株504億円の合計1,524億円が払い込まれ、資本金、資本剰余金がそれぞれ762億円増加した。
利益剰余金は1014億円の損失増となったが、資本増強によりこれを打ち消し、株主資本は477億円、純資産は534億円と、債務超過から脱した。
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2020年3月13日、いちごアセットマネジメントとの間で100億円の追加の資金調達で基本合意したと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で事業環境が悪化しており、追加的な運転資金を確保する。
この改定には、全体の半分を占めるC種優先株の転換価格を1株20円に変更することを含んでいる。これにより、全体の転換価格は1株50円から30円弱に引き下げられ、C種優先株の転換後のいちごの出資比率は当初の想定と比べ、大きく増えることとなる。
2020/1/31合意 2020/3/13合意 金額 株数 金額 株数 B種優先株 504億円 @50 10.08億株 554億円 @50 11.08億株 C種優先株 504億円 @50 10.08億株 554億円 @20 27.70億株 合計 1008億円 @50 20.16億株 1108億円 @28.57 38.78億株
これは、契約中のMAC条項(Material Adverse Change Clause)or MAE条項(Material Adverse Effect Clause)と呼ばれる条項に基づくもので、契約書にサインした時からクロージングまでの間に発生する各種リスクを契約当事者間で配分するための取り決めをいう。
2020/4/25 JDIといちごアセットマネジメント、最終契約を大幅に変更
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