住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで 二度目の減損損失計上

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住友商事は7月20日、マダガスカル共和国 で推進中のニッケル採掘・精錬の「Ambatovy Nickel Project」に関して、約550億円の減損損失が発生する見込みとな ったと発表した。

同社は2016年1月にも、ニッケル価格の下落を理由に約770億円の減損損失を計上すると発表している。

2016/1/19 住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上  

2005年 にマダガスカル共和国でニッケル採掘から精錬までを一貫して手掛けるAmbatovy Nickel Projectに参画した。

JV名 ① Ambatovy Minerals  ニッケル採掘
Dynatec Madagascar  ニッケル精錬
株主
(当初)    
住友商事 27.5%

 ファイナンスの組成と販売を担当

Korea Resources Corporation 27.5%

 ファイナンスの組成と販売を担当

Dynatec Corporation (Canada) 40.0%

 操業を担当

SNC Lavalin Inc. (Canada) 5.0%

 設計/資機材調達(EPCM)を担当

   

 

Dynatec はエンジニアリング・鉱山会社で、ニッケルについては、最高レベルの知見・経験を持つ。

SNCは幅広い分野で設計・エンジニアリング・建設・操業マネジメント
を実施する世界有数のエンジニアリング会社で、ニッケルの湿式製錬プロジェクトを手がけた実績を持つ。

Korea Resources(韓国鉱物資源公社)海外資源開発投資の国策会社

住友商事は2017年5月2日、本件のストラクチャー変更で基本合意したと発表した。 青字が変更後。
Sherritt は資金難で2015年末から拠出を停止して、住商や韓国資源公社が出していた。
Sherritt は12パーセントに出資比率を落としてオペレーターを継続するとともに、2015年末より停止していた株主資金拠出を、停止時点に遡って新しい持分比率に応じて再開した。
住商の肩代わり分は債権を出資に変えるもので新支出はない。

住友商事 27.5%→32.5%→47.7%  2015/9 SNC Lavalin分5% を買収
Korea Resources Corporation 27.5%→40.3%  
Sherritt International 40.0%→12%  2007 Dynatec を買収  
       
今回、更に変更となる。末尾を参照。
住友商事と韓国鉱物資源公社はそれぞれ、ニッケル地金の50%の販売権をもつ。
立地

Ambatovy鉱山はAntananarivoから東へ80km、海抜1,000m程のAmbatovyに位置する。
鉱山面積は約1,300haで、鉱石は深さ20m~100mを削ぎ取るように露天掘りで採掘される。
発掘後、水と混合させたスラリー状態にして、スラリーパイプラインで東海岸の港町Toamasiaまで220km運 び、精錬する。

初期投資 2006/10時点 25億米ドル→2007/8時点 33億米ドル

2007年8月、21億米ドルのプロジェクトファイナンス契約を締結
 国際協力銀行(協調融資を含め7億米ドル)
 韓国輸出入銀行(同 6.5億米ドル)
 カナダ輸出開発公社(3億米ドル)
 欧州投資銀行(3億米ドル)
 アフリカ開発銀行(1.5億米ドル)


2013年3月の報告では、これまでの投資総額はパイプラインの設置、鉄道などのインフラ、ニッケル地金生産のためのリファイナリー向けなど、約55億ドルを上回った。

現在の報道では72億ドルとされる。

能力
ニッケル地金 60,000トン  2011年世界シェア 4%
コバルト地金 5,600トン  同上       7%
硫安  190,000トン  
鉱山寿命 少なくとも27年間を想定


今般、新型コロナウイルス感染拡大に伴う操業の一時停止及びニッケル中・長期価格見通しの下落等
を踏まえ、同プロジェクトの事業計画を見直した結果、プロジェクト会社が保有する固定資産の簿価を全額回収することは困難と判断し、回収可能価額まで減損損失を計上することにな った。

これに伴い、「持分法による投資損失」約550億円を計上見込み。

Ambatovyのこれまでの損失は計1518億円に及ぶ という。年内は操業停止が続くとみられ、業績の重荷となる。

ーーー

なお、共同出資しているカナダの資源開発会社Sherritt International が、財務悪化を受けて、カナダ会社法に基づき、Plan of Arrangement(債務整理計画)を裁判所に提出し、債務整理プロセスに入っている。

同社は、Plan of Arrangementの賛否を問う投票を債権者向けに実施した結果、このたび債権者の89パーセントの賛成を得た旨を公表した。

このなかに、住友商事のSherritt International に対するローン債権とSherritt が保有する本事業の株式12%のうちの6.5%を交換することが含まれる。

今後、裁判所による承認などを経て、住友商事の持分は54.17%に上昇する。50%超にはなるが、同社では引き続きKorea Resourcesとの共同支配企業として持分法を適用する見込みとしている。

Sherritt Internationalは2007年にDynatec を買収し、49%株主となり、Operatorとなった。

しかし、資金難で資金拠出を停止、2017年5月にストラクチャー変更で基本合意した。
Sherritt は12パーセントに出資比率を落としてオペレーターを継続する。住友商事は債権を出資に変え、出資比率を47.7%にした。

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