11月の大統領選を控え、トランプ大統領は主要公約のObama Care廃止に向けた動きをアピールする狙い。
しかし、最高裁が年内に判断を下すことはないとみられている。
最高裁判事は現在、保守派が5人、リベラル派が4人だが、最近は保守派の判事がトランプ大統領の意に沿わない判断を下すケースが相次いでいる。
Ronald Trump は2016年10月下旬の大統領選挙前に、大統領に選ばれた場合の公約 "Donald Trump's Contract With The American Voter" を発表した。
その中で、政権の最初の100日で議会を通すよう戦うとするなかに、「Obamacare Actの廃止」がある。
トランプの大統領就任後、共和党はObamacare Actの廃止、Obama Care代替案の採用に動いた。
しかし、可決の見通しが立たず、トランプ米政権は2017年3月に代替法案の下院本会議での採決を見送り、法案を事実上撤回した。
2017年12月に大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)が成立したが、そのなかでObama Care 非加入の場合の罰金が廃止された。
今回、司法省はこれの廃止で制度全体が無効になると主張する。
実際に廃止されると約2千万人が無保険者となる恐れがある。
民主党のバイデン前副大統領はObama Careの強化を掲げており、「新型コロナウイルス蔓延中に何百万の生命を危険に晒す」と批判した。医療制度改革が大統領選の争点の一つになる。
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Obama Careは、アメリカ人と合法的に滞在する外国人に対して、Obama Careの基準を満たす健康保険を取得し維持することを義務と定めた。そして、 その健康保険を持っていなければ、タックス・ペナルティ(罰金)を払う必要がある。
そのほか、持病を理由に保険会社が加入を拒否するのを禁じる項目や、26歳まで親の保険に留まることが出来る規定などがあり、何百万もの低所得の米国人が保険に加入できている。
トランプはこの制度がコストが掛かり過ぎるとし、これに置き換わるものをつくるとした。その場合、Obama Careで評判のよい規定は残すが、対象人数は減らすとしている。
2017年12月に大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)が提出された。
このなかにObamacare の個人加入義務の廃止がある。非加入の場合のタックス・ペナルティ を廃止する規定である。
下院案は「加入義務の維持」、上院案は「廃止」をうたっていたが、米共和党指導部は12月15日、大型減税法案を最終決定、保険加入義務は廃止とした。
2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着
当時は上院、下院とも共和党が握っており、両院とも可決、トランプ大統領は2017年12月22日、大型減税法案(Tax Cuts and Jobs Act)に署名し、法案が成立した。
2017/12/25 米減税法案 成立
この結果、2019年1月1日からObama Careは強制加入("individual mandate")ではなくなり、無保険であることに対するペナルティはフェデラル・レベルでは ゼロになった。州によっては元通りにしている州もある。
今回、司法省は最高裁への訴えで、「強制加入はObama Careの残り規定から分離できないもの」とし、「その強制加入が、議会が非加入に対するペナルティを削除した結果、憲法違反となった」と主張した。
「強制加入」が違憲である以上、それと不可分の他の規定も違憲で、全体が違憲であるとする。
現在は下院で野党民主党が多数を占めるため、議会ではObama Care廃止を決められず、最高裁か違憲のお墨付きをもらおうとするものである。
White Houseは6月26日、Obama Careは"an unlawful failure"であるとの声明を出した。
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