ミツバチ大量死の一因とされるネオニコチノイド系農薬の規制強化

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ミツバチ大量死の一因とされるネオニコチノイド系農薬への規制を強化するため、 新規に登録する農薬の安全性などを審査する環境省は、安全性審査の対象となる影響評価生物に野生のミツバチを追加する方針を固めた。

申請のあった農薬について、試験データが充実するセイヨウミツバチで毒性などを確かめて登録基準を作り、安全性に問題があれば登録を認めない方針。

農林水産省も2020年4月施行の改正農薬取締法で、影響評価対象に飼育用ミツバチを加えたほか、農薬の容器に被害を与えない使用方法を表示することなどを義務付けた。

新規登録農薬について、メーカーにはミツバチへ被害を与えない散布時期や回数、濃度など使用方法の明記 を義務付けた。
農家にはその表示通りに使用することを義務付けた。
表示や使用の違反に罰金を科す罰則規定も盛り込まれた。

ネオニコチノイド系農薬はイネなどの害虫のカメムシの防除目的で1990年代ごろから水田などで広く散布されてきた。

1990年代初めから、世界各地でミツバチの大量死・大量失踪が報告されている。
働き蜂のほとんどが女王蜂や幼虫などを残したまま突然いなくなりミツバチの群れが維持できなくなってしまう現象は「蜂群崩壊症候群」(CCD:Colony Collapse Disorder)と呼ばれる。

ネオニコチノイドはこの主な原因と疑われており、 EU は 2013 年5 月、蜜蜂への危害を防止するため、ネオニコチノイド系農薬の使用の一部を暫定的に制限することを決定した。

2013年1月に、3種類のネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリド、クロチアニジン及びチアメトキサム)について、蜜蜂に被害が出る可能性があるとし、
2014年5月に、以下を決めた。
・穀物や蜜蜂が好んで訪花する作物については、種子処理、土壌処理又は茎葉への直接噴霧による使用禁止。
・施設栽培における使用や、花が終わった後の野菜・果樹に対する使用は、農家や防除業者であれば使用可能。(家庭園芸用等では禁止)


日本では、これらの農薬は水稲のカメムシ防除に重要だが、使用時に蜜蜂の被害が報告されており、農林水産省では、農薬の使用方法の変更が必要かどうかを検討し、必要であれば変更するとしている。

     農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(Q&A)(2016
年11月22日更新)

しかし、農薬工業会はネオニコチノイド系殺虫剤 の影響を否定している。

日本では蜂群崩壊症候群(CCD)は確認されていない。
・日本でのミツバチ被害事故の原因は農薬の「直接暴露」であり、農家と養蜂家間の連携不十分がその原因の一つ。
・1993年以降ネオニコチノイド系殺虫剤が使用されているが、その出荷量とミツバチ群数に相関は認められない。

     ミツバチ被害事故に関する農薬工業会の見解について (2019年8月改訂)

欧米などで規制が進んでいることや、ミツバチが植物の受粉など生態系の中で重要な役割を果たしていることなどを考慮 し、国は使用制限へ方針転換した。

中央環境審議会は6月26日、第二次答申(生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について)を発表した。

2018年6月交付の改正農薬取締法で、農薬の動植物に対する影響評価の対象が、水産動植物から生活環境動植物に拡大され た。その結果、環境大臣から中央環境審議会に対し、「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について」の諮問がなされた。

今回の答申では、野生ハナバチ類の影響評価について次のように述べている。

野生ハナバチ類は、植物の授粉に重要な役割を果たす花粉媒介昆虫であることに加え、欧米等において、農薬による被害のおそれがある対象としてリスク評価、規制が行われていること 、我が国でも、農林水産省が、養蜂用ミツバチに対するリスク評価を導入していること等を勘案すれば、評価対象動植物に加えることが適当である。

野生ハナバチ類については、試験方法が公的なテストガイドラインとして確立されており、なおかつ摂餌量等のデータが充実しているセイヨウミツバチを供試生物とした試験成績に基づき、リスク評価を行う。

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