低効率の石炭火力を休廃止へ

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経済産業省は低効率な石炭火力発電所の休廃止に乗り出す。現在約140基ある石炭火力のうち、低効率とされる約110基のうち9割にあたる100基程度を対象とし、2030年度までに段階的に進める。

具体的には、電力会社が発電できる量に上限を設けて、古い発電所を休止や廃止するなどして、段階的に引き下げていく方法などが検討されている。災害などの際に大規模な停電を防ぐためにすべてがすぐに廃止されないような仕組みも検討する。

一方、二酸化炭素の排出を抑えた効率がよい石炭火力発電所は新設も認める。

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2019年に改定した政府の「エネルギー基本計画」では、2050年に向けた対応として非効率な石炭を段階的に削減するとしているが、その取り組みを加速する。

「エネルギー基本計画」 5.化石燃料の効率的・安定的な利用
(1)高効率石炭・LNG火力発電の有効活用の促進

石炭火力発電は、安定供給性と経済性に優れているが、温室効果ガスの排出量が多いという課題がある。
環境負荷の低減という課題と両立した形で利用していくため、温室効果ガスの排出を抑制する利用可能な最新鋭の技術を活用するとともに、エネルギーミックス及びCO2削減目標と整合する排出係数を目標としている電力業界の自主的な枠組みの目標達成に向けた取組を促す。

高度化法において、2030年度に販売電力の44%を非化石電源とすることが規定されている。
省エネ法に基づいて発電効率の向上を求めており、石炭火力発電の新設は最新鋭のUSC相当の発電効率を求めている。

今後、これらの規制的措置の実効性をより高めるため、非効率な石炭火力(超臨界以下)に対する、新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組みや、2030年度に向けて着実な進捗を促すための中間評価の基準の設定等の具体的な措置を講じていく。

国際社会の強い批判に応える狙いだが、高効率型の発電所は維持する方針で、欧州の全廃路線とは一線を画すことになる。

2019年12月にスペインで開かれた「COP25」では、国連のグテーレス事務総長が石炭火力発電の利用をやめるよう各国に呼びかけた。

英国は、2010年に28%だった石炭火力発電の割合を、2025年までにゼロにする方針で、フランスは、2022年までに石炭火力発電を廃止する。
ドイツは、2017年の時点で石炭火力の依存度が日本よりも高かったが、7月3日に2038年末までに段階的に完全撤退する法案が可決された。国内に77基ある全ての石炭・褐炭の火力発電所が廃止される

カナダは、二酸化炭素を回収して地下に埋める技術が導入されていない従来型の石炭火力発電は、2030年までに段階的に廃止する。

日本は、COP25に参加するにあたり、小泉環境相は石炭火力の輸出を原則認めない方針を打ちだそうとしたが、経済産業省や官邸との調整がつかず見送った。
梶山経済産業大臣は、国内で「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と述べた。

これを受け、COPの会場では日本に「化石賞」が贈られた。

今回、梶山経済産業大臣は次のように述べた。

2018年7月のエネルギー基本計画の中で非効率な石炭火力発電所についてはフェードアウトを図っていくという表現があるが、これについては、この表現だけで、具体的な手法について何も今までに仕組みがなかった。これらも踏まえて仕組みづくりをしていこうということ。

日本が、エネルギー資源がない中でベストミックスをしていく、そして再生可能エネルギーも入れていく中で、調整力として火力も有用な電源であると思って いる。
火力発電は、調整電源や、また災害時の立ち上げのときの電源として非常に重要な電源であるということには、考え方は変わりはない。

一方で、非効率の石炭火力というのは、多くのCO2を排出するということにつながる。

そういったものを、資源のない国なりにしっかりと考えながら高効率化をしていく、そして、再エネも入れたベストミックスをどうしていくかということを考えていくという中で議論を進めていきたい。

石炭火力の輸出支援については、次期インフラシステム輸出戦略骨子策定に向けて、関係省庁で議論をしているという段階で、詰めの段階に来ているので、この答えは控えたい。

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2018年7月のエネルギー基本計画では2030年度の電源構成に占める石炭の割合を26%としている。

電源

エネルギー基本計画

 問題点

2010年
震災前
2016年 2030年目標
火力 石炭 27% 33% 26% → 高効率型の新増設を差し引いても20%程度まで低下
LNG 28% 40% 27% ◎ LNG火力の拡大でしのぐしかない。
石油 9% 9% 3%
小計 64% 83% 56%
原子力 26% 2% 22~20% → 現状約6%、再稼働は今後も難航必至
再生エネルギー 10% 15% 22~24% → 天候に左右、送電網利用ルール見直しや蓄電技術が必要

今回の方針変更で、旧型火力の休廃止と高効率型の新増設を差し引いて、2030年の石炭火力の比率は20%程度まで低下すると見られる。

原子力については再稼働は今後も難航が必至で、再生エネルギーも多くの問題を抱える。
当面はLNG火力の拡大でしのぐしかない。

大手電力からは「基準が決まっていないので何とも言えないが、9割の石炭を廃止するのは困難だ」との声や、「石炭を廃止する以上、国が原発の新増設を後押しすべきだ」と の声が聞こえる。

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小泉進次郎環境相が1月21日に、三菱商事が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について再検討を訴え、話題となった。

2020/2/6 小泉環境相、ベトナムへの石炭火力建設計画に反対 

経産相の説明の通り、現在、次期インフラシステム輸出戦略骨子策定に向けて検討中だが、概要は次の通りとされる。

輸出は、経済成長や国民生活に不可欠な電力であるアジアの途上国などを対象に例外的に認めるが、国内最高水準の「燃料効率43%以上」を要件とする。

「パリ協定」に基づき2050年までのCO2排出削減の長期戦略を策定する国への輸出を原則とし、戦略の無い国には策定を支援し、脱炭素政策への移行案を提案する。

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