トランプ大統領、香港に対する優遇措置廃止の大統領令に署名、香港自治法にも署名

| コメント(0)

トランプ大統領は7月14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名した。
「香港は今後、中国大陸と同様に扱われる」、「特別な恩恵も、特別な経済的待遇も、注意が必要な技術の輸出もなくなる」と述べた。

1997年7月1日に香港がイギリスから中国に返還された際、米国では「一国二制度が守られる 」という前提のもと、香港返還と同時に香港に対し通商投資について中国本土とは異なる優遇を認める米国 ・香港政策法 (United States-Hong Kong Policy Act)の効力が発生し、それが継続してきた。

貿易面では、WTO協定上の独立した関税地域とみなし、香港からの輸入関税はゼロに近い。
「香港の国際金融センターとしての役割を支援する」とし、「米ドルと香港ドルの自由な交換」を認めている。
その他、多数の優遇が認められた。

トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

2020/6/1 トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

これまで緩くしていた軍民両用技術の輸出制限を中国本土と同等とする。

香港のパスポート保有者向けの優遇措置を廃止する。(香港にビザなしで渡航できていた米国民が、今後はビザの規制を受けることも考えられる。)

香港とアメリカ間の低率の関税は消滅するとみられ、年間数百億ドル規模の両国の貿易は今後が危ぶまれる。

香港でビジネスをする米企業にも打撃を与える。

香港の世界的な金融ハブとしての地位と、中国にとっての国際金融市場への玄関口としての役割が損なわれるだろうとの見方が出ている。

但し、米国は今回、香港ドルと米ドルの交換停止=香港ドルと米ドルのペッグ(連動)制の見直しには言及していない。これをやれば、米国債の売却などの反撃に遭い、米国にも大きな被害が出る。

ーーー
これと同時に、香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁を可能にする香港自治法に署名し、成立させた。

上院が6月25日に可決、下院が若干内容が異なる議案を7月1日に可決し、翌7月2日に上院がこれを再可決し、ホワイトハウスに送っていた。

概要は次の通り。

「1国2制度」維持を求める香港市民の願いを後押しする。

国務省は1984年の中英共同宣言に反した当局者を特定し、その当局者と大規模な取引のある金融機関を議会に報告する。

香港の自治を侵害した当局者の米資産凍結、ビザ発給停止

制裁対象の当局者と取引した金融機関には米銀行による融資などを禁止(1年の猶予)

2019年11月27日に成立した2019年香港人権・民主主義法 に類似するが、最後の項目(米銀行による融資などの禁止)が追加されている。

最後の項目では、中国の銀行等が制裁対象の当局者と取引した場合、米銀との取引が出来なくなる。
具体的には、米銀からの融資禁止、米国債入札参加のPrimary dealer への指定禁止、米国管轄下での外国為替取引や資金移動の禁止、対象金融機関への商品やソフトウエア、技術の輸出制限・禁止
中国の巨大銀行に照準を当てたドル取引禁止の脅しとなっている。

なお、トランプ米大統領は6月17日に、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名 、これにより同法は成立した。
同法は、大統領に対し、ウイグル族弾圧に関わった中国当局者らを特定する報告書を議会に提出するよう求め、資金凍結やビザ取り消しなどの制裁を科す。

香港自治法はこれに続くもの。

トランプ大統領は、「香港から自由や人権が奪われた。香港市民への抑圧的な行為をした中国に責任を取らせる」と強調し、さらなる対抗措置も近く講じると説明した。

中国の習近平国家主席との電話協議の予定はないと断言し、距離を置いた。

ーーー

中国外務省は7月15日声明を出し、香港自治法 成立について「断固反対し、強く非難する」と表明した。声明は「中国は正当な利益を守るため必要な対応を行う」として、米側の関係者や団体に制裁措置を取ると明言した。

コメントする

月別 アーカイブ