塩野義製薬、中国平安保険と合弁会社設立

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塩野義製薬は7月13日、中国平安保険(集団)/ 中国平安人寿保険との間で3月30日に締結した資本業務提携に関する基本合意書に基づき、中国で合弁会社を設立する契約の締結を取締役会で決議した。

保険会社とのJVは異例だが、塩野義のシオノギヘルスケアと中国の事業をJV(塩野義51%)に差し出す、相手側から塩野義への2%出資を受け入れるという極めて異例なものである。

しかし、下記のとおり、相手の平安保険はAIに集中投資を行い、 ヘルスケアについては、患者、医者、病院の負担を軽減するため、患者、医療サービス提供及び支払のためのヘルスケアプラットフォームを構築し、サービスを提供している。

塩野義はこのプラットフォームを活用しながら、塩野義が有している医薬品やその候補を、中国・アジア市場 、更に医療インフラが未整備なアフリカなどに展開していこうとするもの。
IT、AIを活用した創薬のプラットフォームも手に入れる。

中国平安保険の提供する最先端技術を活用したヘルスケアサービスに塩野義の強みである治療ソリューションを融合することを目指す。

3月30日の記者会見の冒頭、手代木功社長は「久しぶりにわくわくしている」と語った。


概要は次の通り。

① 100%子会社の塩野義(香港)を設立 (資本金 50億円
② 上海に平安塩野義を設立 資本金
450億円相当 の人民元  (塩野義(香港)51% / 平安人寿保険 49%)
③ 香港に平安塩野義(香港)設立 (資本金 50億円 
塩野義(香港)51% / Tutum Japan(平安海外)49%)
④ 塩野義子会社 C&O 傘下の2社を平安塩野義に譲渡  (譲渡価格未発表)
⑤シオノギヘルスケアを平安塩野義(香港)に譲渡  (譲渡価格未発表)
⑥塩野義が第三者割当で平安人寿保険から2%の出資を受け入れ (335億円)


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中国平安保険は深圳に本社を置く保険会社で、株式時価総額は1700億ドルを超え、保険会社としては世界第1位。

馬明哲会長が1988年に起業し、保険事業を皮切りに、銀行事業、投資事業、インターネット金融などへと事業を拡大して、一大金融コングロマリットを築き上げてきた。2019年12月末時点で総資産額は126兆円に達する。

2013年ころから、クラウドコンピューティングやブロックチェーン、生体認証、ビッグデータ、人工知能(AI)などの技術の研究開発に積極投資をする一方、金融サービス以外に、自動車サービス、不動産サービス、ヘルスケア、スマートシティの4分野に焦点を当て、多様なサービスを提供する体制を構築してきた。

ヘルスケアについては、患者、医者、病院の負担を軽減するため、患者、医療サービス提供及び支払のためのヘルスケアプラットフォームを構築し、サービスを提供している。

On-line とOff-lineを統合した「O2Oの総合健康プラットフォーム」である。

「平安好医生」(Ping An Good Doctor)は包括的で一元的なヘルスケアエコシステムである。

2019年末の時点で3億1,520万人のユーザーが登録するモバイル医療アプリケーションで、スマホアプリを通して、オンライン医療サービスを提供する。 社内に常勤する医療チームや独自のAIをベースとした医療システムを活用し、24時間体制でオンライン診療、処方、医療機関の紹介・予約、セカンドオピニオン、医薬品宅配、保険器具の宅配、健康情報ライブ配信などを提供している。



すべての家族に専属のかかりつけ医サービスを提供すること、すべての人に健康管理の電子記録を提供すること、そして中国のすべての人に健康管理プランを提供することをビジョンとする。

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今回の業務提携のコンセプトは、「ヘルスケアの未来を創造する」で、主に下記を狙う。

①データドリブン (data-driven)の創薬・開発のプラットフォームの構築、及びそれによる医薬品(新薬・後発薬・一般用医薬品)の創薬・開発  

感染症、精神・神経・疼痛を重点疾患とし、塩野義が長年培ってきた疾患に対する理解と創薬力に、平安が所有するライフスタイルに関するビッグデータとAI解析技術を組み合わせることで、顧客それぞれのニーズを満たす個別最適なソリューションを提供できる創薬・開発プラットフォームを確立する。

生活データ、診断データ、治療法の効果を関連付ける。

また、塩野義が権利を持つ製品・開発品の中国を含むアジアのテリトリーにおける独占交渉権をに与え、塩野義のグローバル開発品の開発拠点へと育成する。

まずは多剤耐性グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコル及びオピオイド誘発性便秘症治療薬ナルデメジンのライセンス契約の締結を行う

また、現在日本で開発中の新型コロナウイルス感染症関連の開発品(ワクチン、治療薬、診断薬)についても、適切なタイミングで本合弁会社にライセンスする方向で検討中 。

②AIテクノロジーによる製造・品質管理体制の構築、及びそれによる医薬品(新薬・ 後発薬・一般用医薬品)の品質保証

医薬品の製造・品質管理の向上のため、塩野義が培ってきた製造、品質管理の技術やノウハウと、平安が有するAIテクノロジーとを融合させ、新たな製造・品質管理システムの開発を行う

製造及び分析の現場をAIを用いてリアルタイムで監視し工程を透明化するとともに、従来の管理システムを効率化することで、高品質と低コストを両立した革新的な医薬品製造・品質管理システムを構築する。

今回、JVに統合予定の南京工場から試験運用を進める。

③O2O(Online to Offline)活用した販売・流通プラットフォームの構築、及びそれによる医薬品(新薬 ・後発薬・一般用医薬品)の販売・流通

「平安好医生」と協業し、成長を目指す。

JVでは、塩野義が現在深圳販売会社及び南京工場を通じて中国で販売する後発薬、シオノギヘルスケアが販売する一般用医薬品をこのヘルスケアプラットフォームに組み込み、供給を開始するとともに、塩野義がグローバルで承認を獲得した抗菌薬セフィデロコル等の新薬の中国を含むアジアテリトリーへの早期展開を図る。

更に、医療ニーズの高い新薬、後発薬、一般用医薬品の導入を積極的に行う

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