トランプ大統領、処方箋薬の価格引き下げへ大統領令

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トランプ大統領は7月24日、処方箋薬の価格引き下げに向け4つの大統領令に署名した。 基本の考え方と3つの具体案から成る。

新型コロナウイルス感染が国内で再拡大する中、トランプ政権が11月の大統領選を視野に薬価引き下げにつながる措置を盛り込んだ大統領令の発令を検討していると伝えられていた。

基本の考え方についての大統領令では、就任直後から薬価引き下げを最大の目標の一つとしてきたとし、今回、処方箋薬を安価に入手できるよう行動するとした。

これまで長い間、他国で実施しているような薬価基準の設定が議論されてきたが、今回もこれには触れず、米国の処方箋薬は他の先進国より80%高いが、「米国は経済的に比較可能な諸国での最低価格を支払う」ようにするとした。

そのうえで、製薬会社との交渉が成功しなければ、この大統領令は8月24日に実施されるとした。具体案には触れず、製薬業界に振った形である。

「製薬会社が薬価を十分に下げる案を持ってくることを期待し、8月24日まで待つ。時計の針は進み始めた」と述べた。

しかし、製薬業界から薬価を他国並みに下げる案が出てこない場合、一体どうするのだろうか。

法改正が必要になるが、製薬会社はこれまで、「研究開発投資を回収できない」と反対している。

2010年3月にObama Care法が成立したが、Obama Care法でも薬価基準制度は導入されておらず、薬価は製薬会社が自由に設定できる。

Obama前大統領も、薬価基準を採用しないことで強力な医薬業界がObama Care 法に反対することを回避した。前大統領自身が医薬業界から多額の選挙資金の献金を受けていた。

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3つの具体案は次の通り。

① Executive Order on Access to Affordable Life-saving Medications インシュリン、アドレナリン

糖尿病の約800万の患者にとりインシュリンは命に係るし、アドレナリン注射薬は重症のアレルギー患者にとって同様であるが、ともに高価である。

連邦認定医療センターは法律により薬剤を安価に購入できる。保険等で安価に入手できない患者は連邦認定医療センター経由で安価に入手できるようにする。

② Executive Order on Increasing Drug Importation to Lower Prices for American Patients

米国では同じ薬剤でも海外よりも価格が高い。

処方箋薬の個人輸入禁止を変更し、条件付きで個人輸入を認める。

③ Executive Order on Lowering Prices for Patients by Eliminating Kickbacks to Middlemen

処方箋薬の価格は高いが、実際には薬剤給付管理会社などが多額のリベート(場合により薬価の50%)を取っている。
これらのリベートが患者に渡るようにする。

剤給付管理会社 (Pharmacy Benefit Management)は、保険者、製薬企業、医薬品卸、薬局、医療機関、患者といった様々な利害関係者の間に立って、医薬品のコストや薬物治療管理の観点から薬剤給付の適正マネジメントを行う

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トランプ政権は2019年にも薬価引き下げで動いたが、失敗している。

製薬会社が保険会社に巨額のリベートを支払うシステムを廃止し、高齢者向け医療保険(メディケア)の患者に直接還元されるようにする案を打ち出していたが、薬剤給付管理会社や保険会社、さらにはホワイトハウス内部からの反対を受け、2019年7月に撤回している。

製薬会社に処方薬のテレビ広告で薬価を表示するよう義務付ける新規則を作り、価格の透明性を向上させようとしたが、連邦地裁は無効との判断を示し、施行をとりやめた。

この時も、他国からの安価な医薬品輸入を認める方向で検討しているとしていた。


今回は本気でやるのだろうか、それとも選挙対策に過ぎないのだろうか。

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