米国防総省、レアアース事業への資金支援

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オーストラリアのレアアース企業Lynas Corpは6月27日、米国内に建設を計画する工場について、米国防総省から資金援助を受けることで合意したと発表した。重希土類を米国で分離・精製することで、中国への過度な依存を回避する狙いがある。

付記

CaliforniaのMountain PassをMolycorpから引き継いだMP Materials も7月31日、国防総省との間で米国でのHeavy Rare Earths 生産再開で契約を結んだと発表した。

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Lynas Corpは2019年5月20日、テキサスのBlue Line Corporation との間で、Blue Lineのテキサス州の工場内にレアアースを分離・精製する工場を建設する覚書を締結した。

Lynasがマジョリティを持つJVを設立し、来年にかけて処理工場を建設すべく協力する。

Lynasは豪州のMt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送し、Lynas Advanced Materials Plant で分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売している。

Lynasは現在、マレーシアで軽希土のPr、Nd を主に生産している。テキサスでは当初は重希土を生産し、その後は軽希土も生産する予定。

中国以外で重希土、中希土を大規模に生産する唯一の工場となる。

Lynas では、これまで米国の需要家に遠く離れたマレーシアから製品を供給してきたが、現地で供給できるようになるとしている。

Blue Line Corporationはテキサス州San Antonioに本社、同州Hondo に工場を持ち、レアアース、ジルコン化合物、ゾル-ゲル法などを扱っている。

2019/7/8 豪州のLynas、米国でレアアースの生産JV 

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米国ではMolycorpがCaliforniaのMountain Passでレアアースの採掘と生産を行っていた。

同社は6月25日、連邦破産法11条の適用を申請した。

2015/6/5 米レアアース最大手 Molycorp、社債利払い見送り →Chapter 11 申請

2017年にMP Materials がMountain Pass鉱山と他のMolycorp の資産を買収した。

2019年にMP Materials はMountain Passで凍結していた精製設備を再稼働することを決めた。

同社は年内に上場する予定となっている。

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米国防総省は、2020年4月22日、Lynas Corp / Blue Line とMP Materialsが2019年12月に申請していた本事業に対する資金支出を決定した。

しかし、4月29日に、「さらなる調査が必要」として支援を停止した。

報道によると、MP Materials は株主の過半数はシカゴに本拠を置くヘッジファンドだが、中国企業が少数株主となっており、米政府の専門家から懸念の声が上がっている。また複数の米上院議員は国防総省に対し、国内のレアアース事業のみに資金支援するよう要請していた。Lynasは豪州企業である。

今回、国防省は第3者による法律および事業面の調査が完了したのを受け、同省は資金支援の決定は公正に行われた とし、支援が米政府の最善の利益につながると結論付け、LynasとMP Materials への支援再開を決めた。

支援額は公表されていない。

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