昭和電工の2020年6月中間決算

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大幅減収、減益となった。中間決算は無配とした。期末配当は未定。

同社では、2021年以降に向けた経営改善への方針を明らかにした。
3千億円規模の資産のスリム化を行なう。設備投資の厳選で500億円を捻出、政策保有株の売却などで450億円以上の資産を圧縮する。非主力事業の売却でも2千億円を確保する。

収益面でも、コスト削減で200億円以上、本社の統合効果などで10億円以上を見込む。


単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 株主帰属
損益

配当

中間 期末
17/12 7,804 777 639 -133 374 0 5
18/12 9,921 1,800 1,788 -333 1,115 2 10
19/12 9,065 1,208 1,193 -214 731 5 8
20/12予 9,600 -300 -550 -900 0 未定
増減 535 -1,508 -1,743 -1,631 -5
19/6中 4,755 855 848 -12 658
20/6中 3,266 -258 -432 -64 -546
増減 -1,489 -1,113 -1,281 -52 -1,204


昭和電工は日立化成の公開買付を行ない、第2四半期に連結子会社とした。

日立化成株式に対する公開買付けを行な い、4月28日に87.61%を取得、同社を連結子会社とした。

2020年6月19日に日立化成を上場廃止、6月23日に完全子会社化した。
10月1日付で「昭和電工マテリアルズ」に商号変更する。

2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

日立化成の株式取得に係る費用として上期に 216億円(内、営業費用 43億円、営業外費用173億円)を計上した。
うち、営業費用の43億円は「全社」に含む。

下期からの日立化成の損益は「昭和電工マテリアルズ」セグメントに示す。
2020年12月期予想の200億円の赤字には、連結時の棚卸資産の時価評価に伴う連結上の売上原価調整額(118億円)、のれんなど償却額(下期分 187億円の合計305億円を含む。

「のれん」は昭和電工マテリアルズのセグメントで4790億円増加しているが、取得原価の配分が完了していないため、暫定的に算定したもの。6千億円規模になるという試算も示した。

日立化成の株式取得費用を除く第2四半期の損益は不明。セグメント別損益には表示なし。持分法損益と思われるが、前年同期比で余り差はない。

特別損失として、黒鉛電極のドイツの生産拠点の閉鎖で47億円の損失を計上した。

電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が長引き、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じており、ドイツ・マイティンゲンにある生産拠点の閉鎖について労使協議で合意に達した。 全体の生産能力は、年産4万t 減の21万tになる。


部門別実績

当期の売上高は前期比で大幅減となった。無機のうちの黒鉛電極の数量減、市況低下による販売減が大きい。

17/12 18/12 19/12 19/6 20/6 増減 20/12予
石油化学 2,407 2,580 2,409 1,223 910 -313
化学品 1,315 1,390 1,402 651 644 -7
エレクトロニクス 1,206 1,044 957 442 440 -2
無機 652 2,575 2,215 1,389 400 -989
SDKマテリアルズ 2,800
アルミニウム 968 991 905 453 354 -99
その他 1,255 1,341 1,177 596 518 -79
合計 7,804 9,921 9,065 4,755 3,266 -1,489 9,600


無機(黒鉛電極とセラミックス)の売上高はグラフと表の通り、従来は600億円前後であったが、2018年12月期に急増し、2575億円となった。
2019年6月中間も1,389億円と好調が続いたが、下期には826億円に減り、2020年6月中間は更に400億円に下がった。

詳細については下記参照。

営業損益は石油化学と黒鉛電極(無機)の赤字が大きい。

17/12 18/12 19/12 19/6 20/6 増減 増減理由 20/12予想
石油化学 334 203 172 85 -37 -121

数量要因  -551

価格要因  -206

コストダウン +68

その他   -424

10
化学品 165 174 137 55 50 -5 130
エレクトロニクス 219 124 49 9 18 8 90
無機 71 1,324 893 718 -229 -947 -230
SDKマテリアルズ -200
アルミニウム 67 49 17 5 -2 -7 15
その他 6 29 18 6 5 -1 10
全社 -84 -104 -78 -24 -63 -39 -125
合計 778 1,800 1,208 855 -258 -1,113 -300

油化学は、ナフサ価格低下による受払差、タイムラグによるものが -85億円。

黒鉛電極(無機)の減産強化による数量減、市況低下による赤字が大きい。特殊要因として、黒鉛電極の低価法による簿価切り下げ -217億円がある。
上記の通り、ほかに特別損失として黒鉛電極のドイツの生産拠点の閉鎖で47億円の損失がある。

SDKマテリアルズの200億円の赤字には、連結時の棚卸資産の時価評価に伴う連結上の売上原価調整額(118億円)、のれんなど償却額(下期分 187億円の合計305億円を含む。


黒鉛電極の状況

黒鉛電極は、電気炉による製鋼でスクラップを溶かして鉄へリサイクルするときに、導電体としてなくてはならない中心的素材で、約1600℃の高温になってスクラップを溶かす。
鉄1トンをつくるのに2キログラム弱の黒鉛電極を使う。

数年前に、高炉を中心とする中国鉄鋼メーカーの過剰生産で電炉の操業度が世界的に低下した。消耗品である黒鉛電極の需要も細り、2015年頃には黒鉛電極の販売価格は5年前の半値程度にまで落ち込んだ。

昭和電工は2016年10月に、ドイツのGL Carnbon GmbH より黒鉛電極製造の子会社 SGL GE Holding GmbHを買収すると発表した。 ドイツ、オーストリア、スペイン、アメリカ(2ヵ所)、マレーシアの6カ所に製造拠点を持つ。米司法省の指示で米国工場を東海カーボンに129億円で売却した。
昭和電工は再編後に生産体制見直しや管理部門の機能集約などで60億円以上のコスト削減が可能と試算し、2019年での事業黒字化を目指した。

直後に状況が一転した。中国で地条鋼という違法鉄鋼が禁止となり、安価で出回っていた鉄鋼が不足し、代替として鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉での生産が急増、黒鉛電極の需要が急増、価格が急騰した。

これが2018年12月期に売上高、営業利益が急増した理由である。

本ブログはこう書いた。

但し、こんな状況はいつまでも続くとは思えない。

中国では環境規制に対応した大手企業が黒鉛電極を増産する計画があるほか、原料のニードルコークスの需給も2019年から緩和する見通しで、価格も元に戻る可能性がある。

2018/8/13 昭和電工、2018年6月中間決算、黒鉛電極事業が大増益

昭和電工は2020年2月5日、電気炉製鋼用の黒鉛電極の世界生産能力を削減すると発表した。昨年下半期より、顧客である電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が継続し、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じていた。

2020/2/15 昭和電工、黒鉛電極の生産能力を削減 

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