米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する見通しとなった。
ーーー
議会はこれまで新型コロナ対策として4回の補正予算を通した。
第1弾:
トランプ大統領は3月6日、議会上下両院が可決した新型コロナウイルス対策用の83億ドルの緊急補正予算法に署名し、同法が成立した。
可決された83億ドルの予算のうち、ワクチンなどの研究・開発費用(30億ドル以上)、連邦・州・自治体の公共衛生機関への財政支援(22億ドル)などが含まれる。
ビジネス支援に関しては、10億ドルを新型コロナウイルス拡大により資金的損害を受けた中小企業などへの低利融資に充てるとしている。
また、4億3,500万ドルを外国の医療機関への支援として計上している。
第2弾:
トランプ米国大統領は3月18日、議会が可決した第2弾の新型コロナウイルス対策法案(「家族第一・コロナウイルス対応法」)に署名し、同法が成立した。第2弾の対策法では、個人への支援が主となっており、新型コロナウイルスの検査無償化や、従業員がウイルスの影響で休暇を取得せざるを得ない場合の所得保証などが盛り込まれている。
新型コロナウイルスの検査無償化については、無保険者向けの公的プログラムに資金を拠出するとともに、民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料にすることを義務付けている。
コロナウイルスの影響で出勤できない従業員への雇用の保証や有休疾病休暇の与え方、給与の支払い額、休業した従業員に支払った給与の税控除などについて定めている。
このほか、低所得者向けの食料補助プログラムや、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれている。
第3弾:
3月27日に議会は第3弾の2兆ドル規模の景気刺激策の法律(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act=CARES Act)を通した。
法案の内容は下記の通り。
・個人に1200ドル(夫婦に2400ドル、子供一人に500ドルずつ)の現金支払い(年収75000ドル以上の場合は減額)
・中小企業の、レイオフ回避、給与支払い補助のための3500億ドルの基金
・被害を受けた産業へのローン、保証、投資のため財務省が5000億ドルを用意
・ローンを受けた企業は、その期間は自社株の買戻しを禁止、その企業で425千ドル以上の給与を受ける役員等は次の2年間昇給無し
・保険業者は追加コストなしでコロナウイルス予防サービスを対象に加える。
・雇用維持の税額控除
・ヘルスケア補助に2400億ドル、病院補助に750億ドル、退職軍人のヘルスケアに200億ドル、緊急公共輸送に200億ドル、空港救済に100億ドル、CDC補助 45億ドル、
航空会社補助のローンに500億ドル、貨物航空補助に80億ドル、国防維持に必要な事業(不特定)の補助に170億ドル
・失業保険強化(各州の規定に加え、最長4カ月、週600ドルを加算)
2020/3/26 米与野党、2兆ドルを超える緊急景気浮揚予算案で合意
第3.5弾
トランプ米政権と与野党の議会指導部は4月21日、4840億ドルの新型コロナウイルス対策で最終合意した。第3弾の対策の補充で、COVID-19 3.5 relief packageと呼んでいる。
2020/4/24 米国で4800億ドルの3.5次対策で合意、更に第4次対策を検討
3月27日の第3弾に失業保険強化があり、各州の規定に加え、連邦政府として最長4カ月、週600ドルを加算することとなった。
これに基づき、現在は2500万人を対象に週600ドルを支給している。このほかに州の支給分(平均370ドル)があり、合計で約1000ドルになる。
この連邦政府の分が最長4カ月となっており、7月31日に失効した。これまでの週1000ドルが今後は平均370ドルになる。
ーーー
米下院は5月15日、民主党が主導する3兆ドルの新型コロナウイルス対策案(The Heroes Act)を、208対199の賛成多数で可決した。
主な内容は下記の通りで、連邦政府による週600ドルの失業給付上乗せの延長を決めた。
・ 州や地方政府にCOVID-19対応に従事する人への支払い用に1兆ドル
・ 医療従事者らに総額2000億ドルの特別手当( essential worker hazard pay)も支給
・ COVID-19対策(テスト、追跡、隔離)に750億ドル
・ 家計へは1人あたり最大1200ドル(家族に最高6000ドル)の給付
・ 中小企業向け緊急助成金に100億ドル
・ 郵政公社向け支援に250億ドル
・ 連邦政府による失業給付上乗せの延長
但し、上院で多数を占める共和党は上院では即否決するとしており、同案そのままでの成立は不可能である。
トランプ政権と共和党は大型減税などを軸に対案の検討に入った。
2020/5/16 米民主党、下院で新型コロナ対策第4弾を可決
米共和党の議会指導部は下院可決後の2か月半後の7月27日、ようやく1兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策法案 を正式に提示した。
追加対策には家計への直接支援を再び盛り込んだ。
8月中にも大人1人あたり最大1200ドルの現金を支給する。3月下旬に決めた経済対策第3弾でも同規模の現金給付を発動しており、今回で2回目だ。年収9万ドル以上の高所得者は対象外とするが、支給額は全体で2500億ドル規模と試算され、家計の手元資金の枯渇を防ぐ。
中小企業の支援策も部分延長する。従業員の雇用を維持すれば給与の支払いを連邦政府が肩代わりする仕組みだが、8月7日が申し込みの最終期限だった。これまでは従業員500人以下の企業は全て対象だったが、共和党案では売上高が5割以上減った企業に対象を絞る。ほかにも雇用を増やした企業には税額控除などで財政支援する。
7月末で期限が切れる失業給付の特例は、加算額を減らして12月末まで延長する。現在は連邦政府が週600ドルを上乗せしている が、10月初めまで加算分を200ドルに減らし、その後は州の支給分と合わせて失業前の給与の70%を上限とする。失業給付の特例加算は2500万人が支給対象になっているとされ、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。 延長そのものに反対する共和党議員が少なくない。
民主党が5月15日に下院で可決した法案では連邦政府による週600ドルの失業給付上乗せはそのまま延長となっているが、7月27日(失効の直前)に出した案では上乗せは200ドルと大きな差がある。失業給付の特例を維持するには両党の統一法案を上下両院で可決する必要があった。
ホワイトハウスは7月30日夜、民主党の議会指導部に対し、週600ドルの特例加算を4カ月だけ延長する折衷案を提示した。ただ、民主党は3兆ドル規模の包括法案を主張しており、合意には至らず、期限切れとなった。
米議会は8月7日まで審議を予定するが、その後は夏季休暇に入る。両党が決裂したまま休会し、雇用対策が宙に浮いたまま9月を迎えるリスクもある。
コメントする