キヤノンメディカルシステムズは新型コロナウイルスの感染の有無を唾液などから短時間で検査できるシステムを9月に発売する。
LAMP法の特許を持つ栄研化学とライセンス契約を結んでLAMP法による独自の試薬を開発し、同社の小型等温増幅蛍光検出装置で検出する。
前処理した検体から約10分で判定でき、前処理にかかる時間を含めても約40分と、PCR法よりはるかに速く、栄研化学が用いる検査システムに比べても短時間で診断できる。
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PCR法の手順は次の通りで、温度を上げて一本鎖に解離した後、温度を下げてアニーリングをするという作業を繰り返す。これに時間がかかる。
http://t-takaya.net/lecture/file/20181026.pdf を補正
LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)は栄研化学が独自に開発した、迅速、簡易、精確な遺伝子増幅法で、増幅効率が高いことからDNAを15分~1時間で109~1010倍に増幅することができる。
温度を上げて一本鎖に解離する必要がなく、増幅反応はすべて等温で連続的に進行する。
2本鎖DNAは65℃付近で動的平衡状態にあるため、いずれかのプライマーが2本鎖DNAの相補的部分にアニールし、そこから伸長することで片側の鎖がはがされ、1本鎖の状態になる。
http://loopamp.eiken.co.jp/lamp/principle.html
栄研化学は、2000年6月に日本遺伝子診療学会大会でこれを発表した。
同社は『Loopamp®新型コロナウイルス2019(SARS-CoV-2)検出試薬キット』の製造販売承認を3月31日に取得、4月10日に発売した。6月2日には検体種に唾液を追加適用することが承認された。
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キヤノンメディカルシステムズは3月に日本医療研究開発機構(AMED)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究における「迅速診断キットの基盤的研究開発」に参画し、迅速な新型コロナウイルス遺伝子検査システムの開発を開始した。
等温で連続的に進行するLAMP法の原理を使い、同社の小型等温増幅蛍光検出装置で検出する。等温増幅による迅速な遺伝子増幅と、蛍光測定を特長とした、小型かつ軽量な装置で、タッチスクリーンで簡単に操作ができ、リアルタイムに遺伝子増幅のモニタリングが可能である。
同社と長崎大学が共同開発した「新型コロナウイルスRNA検出試薬 Genelyzer KIT」は3月26日、厚労省から「陰性一致率100%、陽性一致率90%以上」として公表された。長崎港クルーズ船乗員全員検査などの実用事例を重ねてきた。
同社は6月9日に、北海道大学病院の協力を得て、唾液での検査の精度を調べたところ、10分程度で検出できることが確認され、従来の鼻咽頭拭い液と遜色ない結果を得ることができたと発表した。
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既報の通り、神奈川県衛生研究所と理化学研究所は2月27日、既存のリアルタイムPCR装置をそのまま利用することができ、増幅時間の短縮及びエネルギー消費量の削減が可能なSmartAmp法を開発したと発表した。
これは、PCR のような複雑な温度制御を必要としない。67℃での反応のみのため、温度コントロールに大量のエネルギーを必要とせず、機器の小型化に最適。
2020/2/29 COVID-19 ウイルス、迅速検出
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