モーリシャスの重油流出現場へ日本のマジックファイバー油吸着材

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JICAは8月17日、モーリシャス共和国政府からの要請に基づき、同国沿岸で座礁したばら積み貨物船「WAKASHIO」による油流出事故に対し、国際緊急援助隊・専門家チーム(二次隊)を派遣すると発表した。

一次隊 (団長1名、専門家4名、業務調整員1名)の6名は8月10日に出発し、現地で油防除作業等に関する支援活動を実施している。

二次隊は、団長1名、専門家5名、業務調整員1名の計7名で、現地で活用される油吸着材等の資機材を携行し、環境分野を中心に支援活動を実施する。

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7月25日夜、長鋪汽船の子会社が所有し、商船三井が傭船してインド洋を航行していたパナマ船籍のばら積み貨物船「わかしお」がモーリシャス南東部 Pointe d'Esny付近でサンゴ礁に乗り上げ座礁した。積み荷はなく鉄鉱石の輸送依頼があった場合に備え、中国からシンガポール経由でブラジルに向かっていた。座礁時に約3800トンの重油と約200トンの軽油を積んでいた。

長鋪(ナガシキ)汽船は江戸時代から150年以上海運業に携わり、国際海上物流を支える老舗企業で、岡山県笠岡市に本社を置く。

この海域を航行するほかの船舶はモーリシャスの領海(岸から22キロ以内)に入らないよう距離を保つのに対し、「わかしお」は立ち寄る予定のない島に向けて一直線に向かうルートを取った。

捜査関係者の話として、複数の乗組員が島に近付いた理由として「インターネット接続のため、島のWi-Fiに接続するためだった」と供述している 。 自動操縦に切り替えて、乗組員の誕生日パーティを開いていたとの報道もある。

地元警察は安全な航行を怠った疑いで船長ら2人を逮捕した。


2週間後の8月6日朝には燃料タンクに亀裂が入り、重油1000トン余りが流出した。流出した重油はモーリシャスの生態系を破壊し、経済や食料安全保障、健康にも深刻な影響を及ぼすことが懸念されることから、モーリシャスの首相は8月6日に環境緊急事態宣言を発出した。

モーリシャス政府などは8月12日までに海面を漂う約500トンの重油を回収したが、残る約500トンの多くが海岸やマングローブ林に漂着している。流出した油は、サンゴ礁や白い砂浜、手付かずのラグーンを汚染して おり、生態系への影響も懸念される。 沿岸部にはラムサール条約に指定された区域もある。

周辺に群生するマングローブ林にも重油が流れ込んでいる。マングローブ林は大小の根が複雑に絡み合うため、重油が入り込むと、ポンプなどの機材を使った除去ができず、根一本一本の油を丁寧に拭き取る地道な作業が求められる。

モーリシャス当局は8月15日、貨物船の船体が2つに割れたと発表した。

重油の漂着地域は下記の通り。
ソース:https://reliefweb.int/map/mauritius/mauritius-oil-spill-dg-echo-daily-map-19082020


モーリシャス政府は14日付の声明で、「経済、社会、環境面に影響が出ている」と指摘、「環境汚染による損失や損害の法的責任を追及する」と表明した。 油の海洋流出に関する国際条約では、事故の責任や保険加入義務は船主にある。

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今回 JICAチームが携行した油吸着材は、東京大田区の繊維メーカー エム・テックス㈱のマジックファイバー油吸着材で、ナノファイバー生産技術を活用して作られた極細ポリプロピレン繊維製の油吸着材。

超極細サイズや3次元立体構造などの効果を有しており、極細繊維をシート状に形成し、親油性の高いファイバーが大量の油分(自重の約50倍)を吸着し閉じ込め、短時間で除去する。水は弾き、油だけ吸収する。

JICAは、2019年8月の九州北部の記録的大雨で佐賀県の佐賀鉄工所から油が大量に流出した際の除去作業に使用された実績から これを現地に発送することを決めた。

この時は、工場敷地外へ流出した油が推定約5万4千リットルに上った。

復旧作業では吸着剤は18万枚以上が使われたが、「従来製品の吸着材とは比較にならない性能を持つ」(同町)として、使用した全吸着材のうち9割がマジックファイバー製だったという。
同社によると、「従来製品は水も一緒に吸ってしまうため、吸着材が水中に沈んで流出してしまった。また、油の保持力が低いため、仮置き場から油が漏れ出して二次被害を引き起こしたこともあった」という。

マジックファイバーの場合は、油だけを吸い、水は弾く。油分を吸着し閉じ込めるため、油が漏れ出すことはない。


エム・テックス㈱ ツイッターから

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