TikTokが米政府を提訴 

| コメント(0)

トランプ大統領は8月6日、動画投稿アプリTikTok を運営する北京字節跳動科技(ByteDance)との米国人の取引を禁止する大統領令及び、WeChat に関する騰訊控股(Tencent Holdings )との米国人の取引を禁じる 大統領令を出した。45日後に商務長官が禁止対象行為を決め、それ以降の取引を禁止する。

いずれも、米国を脅かす非常事態に対応するため大統領に商業活動を規制する権限を与える国際緊急経済権限法( International Emergency Economic Powers Act)とNational Emergencies Actなどに基づく。国際緊急経済権限法は1977年に施行された法律で、安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、その脅威に対処する。


トランプ大統領は8月14日夜、国家安全保障上の懸念を理由に、中国のBytedance(北京字節跳動科技)に対し、運営する動画投稿アプリTikTokの米国資産を売却するよう命じた。

2017年に買収した Musical.ly の株式や顧客データを売却するよう命じたものだが、Musical.ly のアプリはすでにTikTokと統合されており、事実上、TikTok売却を命じる内容となる。

2020/8/10 米国、TikTokとWeChatの運営会社との取引禁止 及び付記


TikTokは8月24日、 カリフォルニア州中部地区米国連邦裁判所に米商務省、トランプ大統領、Wilbur Ross商務長官に対する起訴状を提出した。

米政府がこのほど発表した同社と親会社のByteDanceに関わる大統領 令は、プロセスが合法的でなく、同社が享受すべき憲法で保障された権利を破壊した、同大統領令は「国際緊急経済権限法」の乱用であると指摘したと訴え、裁判で自分たちの合法的権利を守るとしている。

同社はnational-security threatではなく、政府はトランプ大統領の反中国の政治キャンペーンを進めるために行動しているとする。

ポイント:

8月6日の大統領令は詳細は不明だが(45日後に商務長官が禁止対象行為を決めることになっている)、それでもTikTokの米国事業にとって脅威である。
この命令は、事前通知も聴聞もなく、憲法修正5条の
due process of law に反している。

「何人も、法の適正な過程(due process of law)によらずに、生命、自由または財産を奪わ れることはない。何人も、正当な補償なしに、私有財産を公共の用のために収用されることはない。」

大統領令は真のnational emergencyに基づくものでない。政府はTikTokの活動が国際緊急経済権限法が対象とする「異常で特別な脅威」であるという法的基準に合致することを証明していない。

大統領によると、TikTokは米国で175百万回以上ダウンロードされており、自動的にユーザーの個人情報を収集する。これにより中国共産党が米国の個人情報を収集し、連邦職員やコントラクターの位置を追跡でき、個人情報に基づき脅迫や産業スパイも可能となる。TikTokはまた、香港やウイグルなど共産党が政治的にセンシティブになっている情報を監視している。

しかし、政府はTikTokが米国民のデータを中国政府に渡しているという証拠を示しておらず、TikTokは繰り返し、その恐れは根拠がないとしている。

TikTokは訴状で、米国のユーザーのデータは中国ではなく、米国とシンガポールに保管しており、また、米国のユーザーデータをByteDanceの他の製品から離すためのソフトウエア障壁をつくっているとしている。

トランプ大統領は8月14日にTikTok売却を命じたが、訴状ではこれには触れていない。

コメントする

月別 アーカイブ