米国、TikTokとWeChatの運営会社との取引禁止

| コメント(0)

トランプ大統領は8月6日、動画投稿アプリTikTok を運営する北京字節跳動科技(Bytedance) との米国人の取引を禁止する大統領令及び、WeChat に関する騰訊控股(Tencent Holdings )との米国人の取引を禁じる大統領令を出した。45日後に商務長官が禁止対象行為を決め、それ以降の取引を禁止する。

いずれも、米国を脅かす非常事態に対応するため大統領に商業活動を規制する権限を与える国際緊急経済権限法( International Emergency Economic Powers Act)とNational Emergencies Actなどに基づく。

大統領によると、TikTokは米国で175百万回以上ダウンロードされており、自動的にユーザーの個人情報を収集する。これにより中国共産党が米国の個人情報を収集し、連邦職員やコントラクターの位置を追跡でき、個人情報に基づき脅迫や産業スパイも可能となる。TikTokはまた、香港やウイグルなど共産党が政治的にセンシティブになっている情報を監視している。

WeChatについても同様とし、national securityを守るために積極的な行動をとる必要があるとした。

International Emergency Economic Powers Act は1977年に施行された法律で、安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、その脅威に対処する。

最近では、

トランプ大統領は2019年5月30日、メキシコが米国への不法移民流入を止めるまで同国からの輸入品に関税を課すと表明した。

2019年6月1日 米政権、メキシコからの全輸入品に関税、移民問題解決まで毎月税率引き上げ

現在、イランはこれにより金融制裁の対象となっており、イランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じている。
Huaweiはイランとの取引を行い、米ドル決済を米国の銀行を通じて行ったため起訴された。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

ーーー

トランプ大統領は7月31日、大統領権限を行使して、8月1日にもTikTokの米国事業を禁止する方針を表明した。

しかし、マイクロソフトのCEOがTikTok買収に向けた取り組みについて大統領と協議した。この結果、大統領は8月3日、マイクロソフトあるいは別の米企業への米国事業売却取引で9月15日までに合意が成立しないなら閉鎖させると言明した。

なお、売却について、「売却益の大部分は米財務省に支払わなければならない」との大統領発言が問題になっている。売却益の課税権は中国にあり、米国がこれを要求する根拠は全くない。

付記

トランプ大統領は8月14日夜、国家安全保障上の懸念を理由に、中国のBytedance(北京字節跳動科技)に対し、運営する動画投稿アプリTikTokの米国資産を売却するよう命じた。

2017年に買収した Musical.ly の株式や顧客データを売却するよう命じたものだが、Musical.ly のアプリはすでにTikTokと統合されており、事実上、TikTok売却を命じる内容となる。

Bytedanceは2017年に米国の動画アプリ Musical.ly を買収しTikTokと統合したが、Musical.ly を買収して米国市場に参入したことで「米国の安全保障を損なう行動を取る可能性がある」と判断した。
90日以内の売却を求めたが、トランプ氏は9月15日までに売却しなければ米国で取引を禁じると迫っている。

対米外国投資委員会(CFIUS)がMusical.ly 買収を調査していたが、所管の米財務省のムニューシン長官は14日、「TikTok利用者の個人データの流出を防ぐため、CFIUSとして今回の大統領令の発動を提言した」との声明を出した。

売却先の企業について米政府から事前の了解を取るよう命じた。


TikTok を運営するBytedanceは8月7日、米国が公平な対応をしなければ米国の裁判所に提訴するとの声明を出した。


トランプ大統領がTikTokを目の敵にしているのには、大統領の「個人的な恨み」があるとされる。

6月にオクラホマ州タルサで開いた選挙集会に先立ち、大統領の選挙チームは「合わせて100万人が集会の入場券を申し込んだ」とし、「10万人は来るだろう」としていた。しかし公式データでは、当日に入場した人は約6200人にとどまり、2万人を収容できる会場は空席が目立った。

米メディアによると、実際に会場には行かないがタルサ支持集会の無料チケットをリクエストするという運動がTikTokで始まったという。

始めたのはアイオワ州の女性で、「登録して、空席をつくろう」と呼びかけた。このビデオは210万回見られ、さらにtwitter、facebookなどで流された。

しかし、トランプ陣営はこの影響を否定しており、"fake news media"がコロナウイルスと黒人殺害の抗議運動を理由に集会に行くのをやめさせたと批判している。

ーーー

米国務省は8月5日、個人や企業情報を守るため国内通信分野での中国企業の排除に向けた新たな指針を発表した。中国製アプリの排除を米配信事業者に促し、中国企業が関与するクラウドサービスの利用は望ましくないとの見方を示した。

新指針は従来掲げてきた「Clean Network program」を拡充するもので次の5つ。

  • Clean Carrier:信用できない中国の通信業者が米国のネットワークに接続できないようにする。
  • Clean Store: 米国のアプリストアから中国製アプリを除外。プライバシー侵害、ウイルス、プロパガンダの危険除去
  • Clean Apps: 中国のスマホメーカーが米国製アプリを事前インストールするのを禁止。Huaweiのような人権侵害企業との提携を禁止
  • Clean Cloud: COVID-19ワクチンを含む米国の個人、企業の重要情報がクラウドベースシステムで、Alibaba、Baaidu、Tencentのような企業を通じて中国に渡るのを防止。
  • Clean Cable: グローバルなインターネット海底ケーブルが中国の情報収集に悪用されないようにする。


Pompeo国務長官は発表で、他国にも同調を求めた。

コメントする

月別 アーカイブ