アビガン、10月中にも承認申請へ 国内臨床第III相試験で 主要評価項目を達成

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富士フィルムは9月23日、COVID-19患者を対象とした「ビガン®」の国内臨床第III相試験において、主要評価項目を達成したと発表した。

富士フイルム富山化学は本年3月、非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象に「アビガン」の国内臨床第III相試験を開始した。

症状(体温、酸素飽和度、胸部画像)の軽快かつウイルスの陰性化までの時間を主要評価項目として、「アビガン」投与の有効性と安全性をランダム化プラセボ対照単盲検比較試験で検討した。

解析対象は156 例で、結果は下記の通り。

症状の軽快かつウイルスの陰性化までの時間の中央値:「アビガン」投与群で 11.9 日、プラセボ(偽薬)投与群では14.7日

非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者に「アビガン」を投与することで早期に症状を改善することを、統計学的有意差(p 値=0.0136)をもって確認

調整後ハザード比:1.593 (95%信頼区間1.024 - 2.479) を示した。

イベント発生の程度を相対的に比較する指標をハザード比といい、さらに比較群間の背景のズレを調整したものを調整後ハザード比という。
本試験におけるハザード比は、症状の軽快かつウイルスの陰性化の起こりやすさを示した指標で、ハザード
比が 1より大きい場合には、「アビガン」投与の方が好ましいと判定される。

安全性上の懸念:これまでに知られている腎機能や肝機能が低下するなど以外の副作用は見られず、安全性に関する新たな懸念はなかった。


富士フイルム富山化学は、本試験の詳細なデータ解析および申請に必要な業務を迅速に進め、
10月中にも「アビガン」の製造販売承認申請を行う。

付記 10月16日、COVID-19に係る効能・効果、用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行った。

付記 

富士フイルム富山化学は10月22日、「アビガン®錠」の中国展開に向けて、中国の安徽康瓴薬業有限公司(Carelink Pharmaceutical )をパートナー企業に選定した。
今後、Carelinkによる輸入医薬品承認の申請を通じて、「アビガン」の中国市場への導入を目指す。

「アビガン」の非臨床・臨床データ(対象:インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症)などを活用して、輸入医薬品承認に向けた申請業務を行う。


COVID-19治療薬はこれまで、「ベクルリー」(一般名Remdesivir)と「デキサメタゾン」が承認されている。

ベクルリー点滴静注液(Remdesivir)は、Gilead Sciencesが5月4日に承認を申請し、厚生労働省は5月7日、「特例承認」した。

厚生労働省は、COVID-19の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。7月21日に判明した。
既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。


富士フイルム富山化学は3月31日、承認取得に向け国内での治験(国内第III相試験)を開始したと発表した。

当初は6月末までの予定であったが、感染者が少なくなったなどの理由で予定を延長して続けられた。

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中国政府は3月17日、新型コロナウイルスによる肺炎の治療を巡り、富士フィルムのインフルエンザ薬「アビガン」の有効性を臨床研究で確認したと発表した。

2020/3/18 中国政府、新型コロナウイルスによる肺炎に富士フィルムの「アビガン」の有効性を確認

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安倍首相は3月28日夜の記者会見で、新型インフルエンザ薬「アビガン」について「新型コロナウイルスの治療薬として正式に承認するにあたって必要となるプロセスを開始する」と発表した。5月中の承認を目指すとした。

しかし、サリドマイド事件や薬害エイズ事件の例もあるため、厚労省は慎重な姿勢を崩さなかった。

2020/3/30 新型コロナ治療薬「アビガン」承認へ

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4月18日開催の日本感染症学会のWeb特別シンポジウムで、藤田医科大学微生物学講座・感染症科の土井洋平教授がアビガン投与の迅速観察研究の結果を報告した。

投与開始14日後に重症患者の6割が改善、軽症や中等症では9割の患者で改善が認められた。

土井教授は、転帰の判断が医師の主観によるものであるほか、吸入ステロイドのシクレソニドなどとの併用療法も多く、対照群も置かれていないなど、観察研究の限界もあると指摘、さらなる検証が必要との考えを示した。

2020/4/21 アビガン投与で重症患者6割、軽中等症患者9割が改善

しかし、7月10日の最終報告では、通常投与群では遅延投与群に比べ6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差には達しなかったとした。

有害事象については、検査値異常としての尿酸値上昇がファビピラビル投与中の患者の大半に見られたが、投与終了後には平常値まで回復し、その他重篤な有害事象等は見られなかった。




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