スイス国民投票、EUとの移動自由を維持

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スイスで9月27日、国民投票が実施され、EUとの間の人の移動の自由を定めた協定の破棄の提案について、反対61.7%、賛成38.3%で否決された。

直接民主制をとるスイスでは、国民に直接的な発言権が与えられている。

今回、投票にかけられた議案は5件。

議案 内容 結果 賛成 反対
移民制限イニシアティブ EUとの人の自由な移動に関する協定の破棄 否決 38.3% 61.7% 保守系右派・国民党が提起
戦闘機購入計画 議会承認の60億フランの購入 僅差可決 50.1% 49.9% 平和主義・左派勢力が反対
狩猟法改正 保護対象のオオカミなどの駆除 僅差否決 48.1% 51.9% 国民に不安 vs 種の保護
父親の育児休業 父親の2週間の育児休業導入 可決 60.3% 39.7%
税制改正 子育て世帯への税控除 否決 36.8% 63.2% 反対派:高額所得者にしか利益が及ばない

移民は過去50年間、スイスの国内政治で繰り返し議論に挙がるテーマである。

スイスはEU加盟国ではないが、EUと相互に依存した一連の協定を結んでいる。EUとの人の移動の自由を定めた協定は2002年に施行された。

しかし、201429日に実施された国民投票で、外国からの大量移民の受け入れ人数を制限するイニシアティブ(国民発議)がスイス国民の50.3%の僅差の賛成で可決され、スイスとEUの関係を損なうこととなった。

スイスで滞在あるいは働く外国人の総数と毎年の受け入れに対し、数量枠を設けることを規定するものだが、これまで数量枠の対象とはなっていなかったEU及びEFTAの加盟国の国籍者に対しても受け入れ数に上限を定めることになった。「人の移動の自由」協定に反する内容である。

今回、保守系右派のスイス国民党がEUとの移動の自由を中止するよう求めていた。

移動制限を支持する人々は、スイスは独自に国境を管理し、自分たちが望む移民のみを選べるようになると主張、反対する人々は、健全な経済をリセッション入りさせることになるほか、何十万人ものスイス市民が持つ欧州各地での居住や就労の自由を奪うことになるとした。

EUとのこの協定には、同時に締結された他の6つの双務協定が一括して適用されることを定めた共通条項,通称「ギロチン条項」が入っており、1つの協定でも失効すると他の6つの協定も6か月の猶予の末に自動的に破棄されてしまうことになっている。そうなれば、スイス経済にとって極めて大きな影響が生じる。

提案が否決されたことで、国民党党首は自分たちの運動を「ダビデとゴリアテの戦い」のように、弱小勢力が強大な敵に立ち向かうようなものだったとし、「だが、我々は国のために戦い続け、移民政策の決定権を取り戻す」と述べた。

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