ジャパンディスプレイ(JDI)は8月28日、白山工場の土地、建物及び付帯設備等をシャープへ譲渡する最終契約を締結した。
同社は3月31日に、生産装置の一部の売却について同社顧客(明示しないが、Appleである)と最終契約を締結したと発表したが、追加の生産装置の譲渡の最終契約を締結した。
2020/4/2 ジャパンディスプレイ、白山工場の生産装置の一部をアップルに売却
売却内容は下記の通り。
売却先 | 売却資産 | 譲渡価額 | 簿価 | 現況 |
シャープ | 白山工場の土地、建物、付帯設備等 | 390百万米ドル(約412億円) | 500億円 | 2019/7から稼働を停止していた。
譲渡に向け、本年初めからテスト稼働実施。 |
顧客 (Apple) |
白山工場の液晶ディスプレイ生産設備 | 200百万米ドル(約211億円) | 1.5億円 | |
85百万米ドル(約90億円) | 0.8億円 | |||
合計 |
675百万米ドル(約713億円) | 502.3億円 |
これらの売却で、営業外収益及び特別利益で約268億円、 特別損失で最大で約116億円が生じる。
白山工場の生産設備で簿価が少ないのは、過去に減損処理をしているためである。
2018年3月期 固定資産減損損失 1,038億円 2019年3月期 白山工場資産減損 747億円
JDIは2015年3月6日、石川県白山市に第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場を建設すると発表した。月産2万5000枚の能力で、投資額は1700億円。
新工場の建設はAppleからの増産依頼によるもので、投資資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄った。但し、Apple専用とせず、中国スマホメーカーなど他社へも供給する予定。
問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。
・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。
・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。
・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。
返済原資は貸し手であるAppleからの注文次第であることが問題で、Apple側の理由で注文が減ると、たちまち返済原資に行き詰まる。
工場がApple専用であれば、Take or Payなど、それなりの条項が入れられたと思われるが、他社への供給もできるようにしたのが逆目に出る形となった。(Appleが減った分は他社に売ればよいとの言い訳ができる)
Appleからの注文の減少で、JDIは行き詰った。
同社は、業績及び財務改善施策として2019年6月12日に構造改革を発表し、その一環として白山工場の一時稼働停止を決定し、同年7月から生産を停止した。
1) 今後の需要の大幅回復の見込みが立たないモバイル事業の縮小と、これに伴う白山工場の一時稼働停止 及び茂原工場後工程ラインの閉鎖
2)人員削減
3) 役員報酬及び社員給与等の削減
4) 執行体制の刷新2019/6/17 ジャパンディスプレイ、苦境に
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2019年末に、JDIが白山工場を Appleと シャープへ売却する方向で交渉していると報じられた。
JDIは2019年12月に下記の発表をしている。
当該顧客(Apple)との間で、当社によるいちごアセットグループからの400億円以上の資金調達の実施等を条件として、
当社顧客が取引の支払条件の緩和を行う旨、及び
当社白山工場の生産装置の購入を通じて実施する可能性も含めて、当社による当社顧客からの200百万米ドルの資金調達を実施する旨の最終契約の締結に向けて協議することで合意いたしました。2018/12/19 ジャパンディスプレイ、いちごアセットグループからの資金調達に関する基本合意書締結
Appleとしても、JDIがつぶれては大変なので、いちごアセットによる支援を応援した。
JDIは2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。3月13日には、100億円の追加の資金調達で基本合意、最大 1108億円となる。これに基づき、アップルと最終契約を締結した。
2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約
具体的には、白山工場内の液晶ディスプレイ生産装置を200百万ドルで売却する。
売却代金200百万ドル(概算215億円)は3月31日付で、アップルからの前受金残高879億円(2月末残高)と相殺する。
「これ以外の白山工場の製造装置、白山工場の土地及び建物について、国内事業会社へ譲渡すること について 継続検討中です」としていた。
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今回、シャープが土地、建物、付属設備を買い取り、Appleが買収した液晶ディスプレイ生産設備を借りて、Appleのために受託生産する。
JDIが生産装置の一部の売却について顧客(アップル)と最終契約を締結したと発表したのは3月31日であった。同時に交渉をしていたシャープとの契約がいままでかかったのは、シャープが赤字にならないようにとのハードな交渉をAppleと続けていたからとされる。
シャープはJDIとAppleの不平等契約とその結果をみている。
シャープ自身も以前、亀山第1工場をAppleの投資を受けて、iPhoneの専用工場としたが、Appleの発注がなくても外部に販売できず、前受金の返済を迫られた経験を持つ。
今回、JDIからの資産購入に当たっては、現金支出は行わず、JDIのAppleからの前受金の残高を引き継いだ。Appleへの前受金返済については、Appleからの発注に応じて行なうとした模様。
当然、能力余剰分についてはApple以外への販売を考えている。
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JDIは8月26日、株主総会を開き、604億円(50億円+554億円)の追加出資受け入れなどを承認した。
いちごアセットからの出資のまとめ:
2020/1/31合意 | 2020/3/13合意 | 2020/7/21最終契約 | ||||||||
金額 | 転換 | 株数 | 金額 | 転換 | 株数 | 払い込み | 金額 | 転換 | 株数 | |
B種優先株 | 504億円 | @50 | 10.08億株 | 554億円 | @50 | 11.08億株 | 2020/3 | 504億円 | @50 | 10.08億株 |
D種優先株 | 2020/8/28 | 50億円 | @50 | 1.00億株 | ||||||
C種優先株 | 504億円 | @50 | 10.08億株 | 554億円 | @20 | 27.70億株 | ||||
E種優先株 | 2020/10~ 2024/6 |
554億円 | @24 | 23.08億株 | ||||||
合計 | 1008億円 | @50 | 20.16億株 | 1108億円 | @28.57 | 38.78億株 | 1108億円 | @32.44 | 34.16億株 |
総会では、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行することや、取締役7名選任を決議した。
同社は3月25日に臨時株主総会を開き、いちごアセットのScott Callon を取締役に選任、代表執行役会長にしたが、今回再任され、取締役会議長、代表執行役会長に選任された。
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