米政府、カナダのアルミ製品への追加関税を撤廃

| コメント(0)

米国通商代表部(USTR)は9月15日、カナダからのアルミニウム製品の一部に再び課していた追加関税を9月1日にさかのぼって撤廃すると 発表した。

後記の通り、 トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。
米国は2019年5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。

しかし、トランプ大統領は本年8月6日、1962年通商拡大法232条に基づき、カナダからのアルミニウム製品輸入の一部に対して10%の追加関税を8月16日から再び賦課するとの大統領布告に署名した。

2019年6月から2020年5月に、カナダからの非合金アルミニウム塊の輸入がそれ以前の12カ月と比較して86%増加したことを挙げ、これによりカナダからのアルミ製品の輸入が同期間で全体で27%増加したと指摘し 、カナダからの非合金アルミ塊輸入に対して10%の追加関税を課すとした。

米アルミニウム協会は8月6日、「政権が国内のアルミニウム関連企業・消費者の声を聞かずに、カナダのアルミニウムに232条関税を復活させたことに非常に落胆した」とし、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の利益を損なう判断だと批判した。

他方、アルミニウムの一次生産大手である米国一次アルミニウム協会(APAA)は、「トランプ政権による断固たる行動は、カナダからのアルミニウム輸入の前例のない増加により深刻な損害を受けている米国のアルミ一次生産業を救う」と評価する声明を出した。

これを受け、カナダ副首相は8月7日、米国から輸入するアルミニウム製品の一部に対して総額36億カナダ・ドル相当の報復関税を発動すると 発表した。「不当な関税に対して、カナダは労働者を守るために迅速かつ強力に対応する」と述べた。


報復関税措置は2020年9月16日までに発動されるが、対象品目の候補には、アルミニウム塊のほか、洗濯機、冷蔵庫、自転車、ゴルフクラブなどのアルミニウム使用製品が含まれる。報復関税の対象品目には10%の追加関税が課される。

USTRはこのたび、カナダ政府との協議を経て、当該製品の輸入が2020年の残り4カ月以内に正常化する見込みと判断し、9月1日にさかのぼって10%の追加関税を撤廃するとした。

ただし、2020年9~12月のそれぞれ月末から6週間後に実際の輸入量を検証し、各月の輸入見込み量の105%を超えている月が1つでもある場合は、輸入見込み量を超えた月の全ての輸入に対し、遡及して10%の追加関税を課すとともに、その後も追加関税を維持する可能性があるとしている。
加えて、実際の輸入量が見込みを超えた月があった場合、その翌月には見込みを超えた分と同量の輸入が減少することを期待するとしている。

両国政府は2020年末に再び協議し、2020年9~12月のアルミ貿易の状況と2021年の市況見通しについて検証する 。

ーーー

トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。

2018/3/3 トランプ大統領、鉄鋼とアルミに追加関税、日本も対象

鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。

ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。

日本は除外対象にならなかった。

2018/3/26 米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動

トランプ大統領は、猶予期限切れ直前の4月30日、カナダ、メキシコ、EUへの関税の猶予を更に1カ月延長すると発表した。その間に譲歩を迫る。
カナダ・メキシコとはNAFTAの再交渉中。EUは「断固とした対応をとる」としており、難航する見通し。

ホワイトハウスによると、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアについてはほぼ合意に達しており、30日以内に詳細を詰める。
3か国は米国にとって貿易黒字国で、米国への鉄鋼・アルミ流入抑制対策で協力する。

韓国については、3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。

米政府は5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

2018/6/2 米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

トランプ大統領の強硬策に米国内でも反対が広がった。

2018/6/29 米輸入鉄鋼協会、鉄鋼関税を「違憲」と提訴、米自動車業界も自動車の追加関税に反対

EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

世界貿易機関(WTO) は6月19日、ノルウェーが、鉄鋼とアルミニウムを対象とする米国の輸入制限は国際的な貿易ルールに違反しているとしてWTOへの提訴手続きを始めたと発表した。

欧州委員会は6月20日、報復措置の第1段階を発動すると発表した。

2018/6/23 米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後 

ーーー

トランプ米政権は2018年9月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したと発表した。メキシコとの間では、8月27日に基本方針に関する暫定合意が成立している

NAFTA(North American Free Trade Agreement)の名称を「USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement=米国・メキシコ・カナダ協定)」に変更する。

米国が求める乳製品の市場開放でカナダが一定の譲歩を示した。米国が撤廃を求めてきたNAFTA 19条の紛争解決メカニズムは、新協定ではそのまま残される。

協定は16年間有効で、発効後、原則6年ごとに再評価し、各国が次の16年間の更新意思を示さないと失効する「サンセット条項」も盛り込んだ。

2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称

米国は2019年5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。
カナダ、メキシコも、米農産物などにかけてきた報復関税を取りやめることで合意した。

2019/5/20 米、カナダ・メキシコへの鉄鋼・アルミ関税を撤廃

コメントする

月別 アーカイブ