トランプ大統領、後任最高裁判事を指名

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トランプ大統領は9月26日、18日に死去した連邦最高裁のRuth Bader Ginsburg判事の後任に、第7巡回区控訴裁判所Amy Coney Barrett判事 (48)を指名した。

Today, it was my great honor to nominate one of our nation's most brilliant and gifted legal minds to the Supreme Court.

She is a woman of unparalleled achievement, towering intellect, sterling credentials, and unyielding loyalty to the Constitution: Judge Amy Coney Barrett..

敬虔なカトリックで、中絶に否定的な立場で知られており、最高裁判事になれば、人工妊娠中絶を不当に規制する州法を違憲とするロー対ウェイド(Roe v. Wade)判決を覆すことを支持するだろうと見られている。

大統領は、与党共和党が多数を占める上院で「極めて速やかに」承認されるとの見通しを示した。

大統領選挙の直前に選任するのは、共和党の2016年の主張(下記)と矛盾しており、かつ、大統領の選挙での敗戦に備えてのものとされる。

上院共和党が本当に賛成するのだろうか?

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トランプ大統領による後任判事の即時指名方針について、民主党のバイデン大統領候補は、大統領選の期日前投票が既に始まっていると指摘し、この時期の後任指名を「米国民は支持しない」と強調、大統領選の勝者が指名すべきだと訴えている。

Ginsburg判事は亡くなる前に、孫娘に最後の願いとして、「次の大統領が就任するまでは、私の後任を決めないように」を託したとされる。

最高裁判事は大統領が指名し、上院が過半数の賛成で承認する。

上院では通常、野党のフィリバスターを打ち切って採決に持ち込むには60議席の賛成が必要になる。

2017年4月にトランプ指名のNeil Gorsuch 連邦控訴裁判事を最高裁判事に承認するに際し、米上院は共和党提案の審議打ち切りの動議を賛成多数で可決した。最高裁判事の承認に関してのみ単純過半数の賛成で打ち切りを可能にする規則変更で、民主党員も3名が賛成した。「核オプション」と呼ばれた。

2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認 

現在の上院の構成は次の通り。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
53 45 2 100

今のところ、現時点での共和党内での後任選びへの反対は2名にとどまっている。

その一人は、2016年にオバマ前大統領が指名した最高裁判事候補の承認を、当時上院を支配していた共和党が「次期政権まで待つべきだ」として拒否したことを挙げた。

2016年2月にAntonin Scalia最高裁判事が死去し、Obama大統領は2016年3月に後任に中道派のMerrick Garland連邦高裁判事を指名した。

しかし上院で多数を占める共和党は「選挙の年に最高裁判事を承認するのは不適切」という理由で審議そのものを拒否した。(仮に審議しても否決された可能性が強い。)

大統領選ではトランプが当選、保守派のNeil Gorsuch を指名、上院は2017年4月10日に承認し、これにより、保守派4、スイング1、リベラル4 となった。

2016年の場合は、次の大統領選挙まで半年以上あった。実際にScalia判事死去から後任の指名まで、1年以上の空席となった。 それでも当時の共和党は大統領選前の選任を否定した。

トランプ大統領は、Ruth Ginsburg 判事の後任の議会承認について「大統領選前が望ましい」と指摘し、その理由に関し、郵便投票を巡る訴訟を念頭に「最高裁が本来あるべき姿よりも政治的になる場合に備えて判事が9人いることがとても重要だ」と述べた。

これまでは、保守派5名、リベラル派4名だったが、最近は保守派の判事がトランプ大統領の意に沿わない判断を下すケースが相次いでいた。

今なら上院が共和党が多数のため、保守派を選ぶことが出来る。6対3となれば、仮に保守派の1名が反対票をいれても、なお保守派の意向が通ることとなる。

トランプ大統領は、大統領選に敗北した場合の訴訟を優位に進めるため、自身の考えに近い最高裁判事を指名し、上院での議会承認を急いだ。

大統領は9月23日、11月の大統領選で郵便投票が不正の温床になるとの持論を改めて展開した。

「大統領選で民主党候補のバイデン前米副大統領に敗北した場合、平和的な政権交代を約束するか 」との記者団からの質問に対し 、「民主党は詐欺を行おうとしていて、連邦最高裁で争われることになる」と述べ、郵便投票の集計など、選挙結果をめぐって法廷闘争になる可能性があるという認識を示した。

大統領選では新型コロナウイルスの感染を防ぐため郵便投票を利用する有権者が急増する見通しだが、民主党員の利用が共和党員よりも圧倒的に多いとされる。トランプ 大統領はこれまで、郵便投票の拡大で不正が起きると主張し、反対してきた。

郵便投票については 2020/7/1 米最高裁、テキサス州の郵送投票の対象拡大認めず

(最高裁は郵送投票拡大を認めなかったのではない。控訴裁が審議が続く間、1審の判決を一時凍結したのを、取り消さなかっただけである。)

なお、こうした事態を受けて米上院は24日、「秩序だった平和的な政権移行」を確約する決議を全会一致で採択した。

Resolved, That the Senate ー
(1) reaffirms its commitment to the orderly and peaceful transfer of power called for in the Constitution of the United States; and
(2) intends that there should e no disruptions by the President or any person in power to overturn the will of the people of the United States.

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「核オプション」について

当初は最高裁判事の選任だけでなく、上院での連邦判事や各省の長官の承認も60票が必要であった。

2003年(George W.Bush大統領時代)に共和党が上院で51議席で上院の多数を占めていたが、民主党がフィルバスターで人事を次々に否決した。このため、共和党内で「核オプション」が議論された。

2013年(Barack Obama大統領時代)に、民主党が多数を占めたが、逆に共和党がフィルバスターを使った。

このため、民主党が「核オプション」採用に踏み切り、最高裁判事を除き、連邦判事や各省の長官の承認は多数決とした。

なお、当初はこの方式は"the Hulk"(マンガの主人公 超人ハルク) と呼ばれた。共和党の Trent Lott上院議員が"the nuclear option"と名付けた。



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