トランプ米大統領は9月19日、北京字節跳動科技(ByteDance)の運営するTikTokの米国事業売却交渉を巡り、ByteDanceと米IT大手Oracleなど米企業との提携案を「概念として(in concept)承認する」と述べた。
提携案について「私は承認した。もし彼らの合意が成立すればそれでよいし、合意しなくても構わない」と述べた。
また、TikTok米国事業(及び中国を除く海外事業)を引き継ぐ新会社にはOracleや米小売り大手Walmartが出資すると明らかにし、合意の枠組みは米国の国家安全保障上の懸念に対処しているとの認識を示した。
トランプ大統領は「中国とは無関係になり、全く安全になるだろう。それが今回の取引の一部になる 。全ての支配権を握るのは偉大な米企業2社、WalmartとOracleだ」と述べた。
今回の計画を進めるには中国政府の承認も必要になる。
米商務省は9月18日、TikTokとWeChat の規制を発表したが、9月19日に「最近の前向きの展開を受け、大統領の支持のもと」 、TikTokの規制を9月20日から9月27日午後11:59まで延期すると発表した。
付記
Trump大統領は9月21日、新会社TikTok Globalの株式の一部をByteDanceが保有するなら、提携案の承認を撤回すると述べた。
「Oracleが完全な支配権を持たないのであれば、われわれは合意を認めない」
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この以前に下記の報道があった。
・ Oracle など米企業が米国のTikTok事業の少なくとも60%を取得
・ 新たにグローバル本社(TikTok Global) を設立、1年以内に米市場でIPOを実施
取締役会は米国人が過半数、CEOは米国人
Oracle は20%出資
Walmartも出資し、取締役派遣
実際にこの通りであると見られる。(一部は解釈によって)
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・TikTokによると、TikTok Global にOracle と Walmart が20%出資する。中国のByteDance本社がマジョリティを持ち続ける。
TikTokは以下の通り述べた。
Oracle はtechnology provider となり、米ユーザーのデータを管理し、米国のセキュリティニーズを満たすよう、コンピューターシステムを管理する。(TikTokはOracleのCloud 上で運営される。)
Walmart はcommercial partner となる。
両社はTikTok Global の pre-IPO financing に参加し両社合計で20%の出資を行う。
TikTok Global 本社を米国に置き、拡大し、25,000人の雇用を行う。
新体制は下記の通りとなる模様。
北京字節跳動科技(ByteDance)
→TikTok Global ByteDanceがマジョリティ
Oracle と Walmart が20%出資
取締役は5人のうち米国人が4人、
CEOは米国人
Oracleがデータ管理を受託
Oracleは9月19日、基本合意に達したと発表した。
報道によると、TikTok Global にOracleが12.5%、Walmartが7.5%、ByteDanceが80%の出資となる。
なお、ByteDanceにはSequoia Capital、General Atlanticなど米投資家が40%出資している。
このため、TikTok Globalには、米投資家が合計で52%(80x40%+20%) 出資しているとの主張が成り立つ。
・トランプ大統領は、「TikTokはWalmartとOracle に完全にコントロールされる」と述べた。
実際にはTikTok Global はByteDanceがマジョリティを持つ。そうでないと、中国政府の承認が得られない。
中国商務省と科学技術省は8月28日、一部のハイテク技術を海外に移転する際に中国政府の許可が必要になるなど、規制強化を発表した。 TikTokで使われている技術が輸出規制に含まれる可能性がある。
2020/9/2 中国、ハイテク技術の輸出規制を強化、TikTok売却に影響か
中国から見れば、 ByteDanceは中国人が60%所有するため中国企業と言え、TikTokGlobalは中国企業が80%所有する。
米国から見れば、TikTok Global はByteDanceの80%のうちの40%(=32%)とOracle/Walmart の20%を加えた52%を米企業が支配すると言える。
米国での事業運営、データ管理についてはWalmartとOracle がコントロールする。
・大統領は、TikTok Global本社がテキサス州に置かれるとし、「少なくとも」 2万5000人が採用される見通しだと語った。
・新たなグローバル本社のTikTok Globalは教育基金に50億ドルを寄付する。
トランプ大統領は、これが今回の取引に関して米政府への支払いを求めていた自身の要求を満たすとの見方を示した。
トランプ大統領は7月31日、大統領権限を行使して、8月1日にもTikTokの米国事業を禁止する方針を表明した。しかし、マイクロソフトのCEOがTikTok買収に向けた取り組みについて大統領と協議した。この結果、大統領は8月3日、マイクロソフトあるいは別の米企業への米国事業売却取引で9月15日までに合意が成立しないなら閉鎖させると言明した。
売却について、「売却益の大部分は米財務省に支払わなければならない」とした。
これについては大統領は最近、そのような支払いは違法になると弁護士に指摘されたことを認めた。
TikTok Globalに教育基金に50億ドルを寄付させることで、売却益を米政府に支払えという要求が満たされたとした。
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今回、延期されたが、米政府によるTikTokのダウンロード禁止については、中国政府もByteDanceも反対した。
中国商務省は9月19日、TikTokとWeChatの米国内での新規ダウンロードを9月20日から停止すると米政府が発表したことに対し、「関係企業の正当で合法な権利と利益を甚だしく損ない、正常な市場の秩序を乱すもので、中国は断固として反対する」とする報道官談話を発表した。
「仮に米国が我意を通すならば、中国は必要な措置をとり企業の合法な権益を断固守る」と対抗措置をとることを示唆した。
ByteDanceは「今回の決定に反対するとともに、深く失望している。引き続き訴訟を続け、ユーザーや会社などの正当な権益を守る」との方針を示した。
WeChat の騰訊控股(Tencent)は、「米政府とコミュニケーションを続け、長期的な解決策を得たい」とした。
TikTokは既に8月24日に カリフォルニア州中部地区米国連邦裁判所に米商務省、トランプ大統領、Wilbur Ross商務長官に対する起訴状を提出している。
2020/8/27 TikTokが米政府を提訴
ByteDanceは9月18日夜、TiKTokに関わる取引を禁じる米大統領令とそれに基づく措置の差し止めを求める訴えをワシントンの連邦地裁に起こした。
米国への「並外れた特別な脅威」を阻止するためでなく、政治的理由からTikTokの禁止に動き、権限を逸脱している。
「憲法修正第1条」が定める表現の自由の権利も侵害する。トランプ政権の行為が「数百万の米国人が自己表現のために集うオンラインコミュニティーを破壊するものだ。米商務省は米国人利用者のプライバシーとセキュリティーに対する TikTokのコミットメントを示す証拠を「無視」している。
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