世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は9月15日、中国の主張を認め、米国の中国製品への追加関税がWTO協定に反し、不当と結論付ける報告を公表した。
結論:税率の上限を超えており、米国は例外的な関税措置が正当化される根拠などの説明を果たしていない。
The challenged measures are prima facie inconsistent with Articles I:1, II:1(a) and II:1(b) of the GATT 1994;
The United States has not met its burden of demonstrating that the measures are provisionally justified under Article XX(a) of the GATT.
トランプ政権が輸入制限のために課した関税を不当と判断した初めての例となった。
WTOの紛争解決手続きは2審制のため、異議がある場合は上訴できることになっているが、2審の上級委員会は米国の反対で欠員を補充できず、機能停止に陥っている。
米政府はWTO判断を非難する声明を出す一方、上訴するかどうかについては明らかにしていない。
Well, then we'll have to do something about the WTO, because they've let China get away with murder.
They consider China to be a developing nation. And as a developing nation -- did this just happen, Steve? Just happened?
All right, we'll take a look at that, but I'm not a big fan of the WTO. That I can tell you right now. Maybe they did us a big favor.
経緯は次の通り。
1) USTRは2018年4月3日、中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税の原案を公表した。
産業用ロボットなど生産機械を中心とした約1300品目に25%の関税を課す。
2) 中国は4月4日、GATTルールに基づき米国に協議を要請した。
3) トランプ米政権は2018年6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として、中国による知財侵害の被害額と同規模の500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表した。
中国が巨額補助金を拠出してハイテク産業を育成する「中国製造2025」計画を名指しで批判し「中国は不公正な手法で米国の知財や技術を得ており、もはや耐えられない」と主張した。
まず7月6日に340億ドル分の制裁関税を発動し、残りの160億ドル分は一般の意見聴取後に発動する。
2018/6/16 米、対中制裁関税 発動へ、中国も報復
4) 中国は、2018年7月6日、7月16日に更に協議を要請した。
5) トランプ米政権は2018年9月17日、中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を9月24日に発動すると発表した。
2018/9/20 米国、対中関税第3弾を9月24日発動
6) 中国は、9月18日に更に協議を要請した。
7) 両国の協議は2018年8月28日と10月22日に行なわれたが、成果は無かった。
中国は2018年12月6日、WTOパネル設置を要請した。
米国の対中制裁関税は下記の通りで、今回は①~③が対象となっている。
当初 8/23 発表 10/11 12/13 ①~③
2500億ドル① 340億ドル 2018/7/6 25% 2019/10/1 30%予定
(→10/15に延期)
引き上げ延期
(25%維持)25%据え置き ② 160億ドル 2018/8/23 25% ③ 2000億ドル 2018/9/24 10% →2019/5/10 25% ④ 3000億ドル 一般 1200億ドル 2019/9/1 10% 9/1 15% → 7.5%に引き下げ 消費財 1600億ドル 2019/12/15 10% 12/15 15% 予定 → 発動見送り
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