米上院、Barrett最高裁判事の指名承認に暗雲

| コメント(0)

米上院では今月一杯、Barrett最高裁判事の指名承認を巡る争いが続く。

トランプ大統領は9月26日、Ruth Ginsburg 判事の後任に第7巡回区控訴裁判所のAmy Coney Barrett判事(48)を指名した。

大統領は、上院承認について「大統領選前が望ましい」と指摘し、その理由に関し、郵便投票を巡る訴訟を念頭に「最高裁が本来あるべき姿よりも政治的になる場合に備えて判事が9人いることがとても重要だ」と述べた。大統領は、大統領選に敗北した場合の訴訟を優位に進めるため、自身の考えに近い最高裁判事を指名し、上院での議会承認を急いでいる。

2016年2月にAntonin Scalia最高裁判事が死去し、Obama大統領は2016年3月に後任に中道派のMerrick Garland連邦高裁判事を指名した際には、上院で多数を占める共和党は「選挙の年に最高裁判事を承認するのは不適切」という理由で審議そのものを拒否した。

民主党のバイデン大統領候補は、大統領選の期日前投票が既に始まっていると指摘し、この時期の後任指名を「米国民は支持しない」と強調、大統領選の勝者が指名すべきだと訴えている。

2020/9/28 トランプ大統領、後任最高裁判事を指名

上院の共和党リーダーの Mitch McConnell 院内総務は大統領選前の承認を目指し、次の日程を決めた。

10/5~10/18 pro forma session

審議すべき議題はないが、規則等の都合上形式的に開催。一般の議員は首都にいる必要はない。投票が必要な際は24時間前に通知

司法委員会はBarrett最高裁判事任命の審議を行う。

10/22 司法委員会で投票

10/26の週(選挙投票日の前週) 上院で投票


しかし、ここにきて大問題が発生した。

トランプ大統領は10月2日未明、新型コロナウイルスの陽性と発表した。

大統領夫妻が感染した経路は不明だが、9月26日にホワイトハウスで開いた連邦最高裁判所の新判事の候補を紹介した行事がクラスターにつながったとの見方が浮上している。 このあと、室内でレセプションがあった。

司法委員会は22名で、うち共和党 12、民主党10、議決には過半数が必要である。 (過半数出席も必要)

上の写真のMike Lee、Thom Tillis の2上院議員が司法委員会のメンバーである。(Tillis議員の右側に座っているJosh Hawley上院議員も委員会メンバー。検査の結果、陰性と判明)

司法委員会の議論にはリモートで参加できるが、投票は(接戦の場合)出席が必要である。

民主党が全員出席すれば、共和党は可決のためにはこの2人のうち1人は出席が必要である。さもないと、出席できるまで投票を延期する必要がある。 委員会議決なしの本会議議決も法的には可能だが、重要事項でのこの例はない。

委員会で可決された後、上院本会議に移る。

上院では共和党は53議席を占めており、「核オプション」により過半数の賛成で可決される。

しかし、共和党のSusan Collins 議員とLisa Murkowski 議員は既に反対を表明している。

大統領選に敗北した場合の訴訟を優位に進めるため、自身の考えに近い最高裁判事を指名し、上院での議会承認を急ぐという大統領発言で、反対に回る議員が出る可能性はある。

また、 上の2人のほかにも新型コロナの更なる蔓延で欠席が出る可能性もあり、大統領の希望通りになるかどうか、不明である。

(上院では可否同数の場合、上院議長を務める副大統領が票を投じる。)

コメントする

月別 アーカイブ