iPS細胞を使ったがんの治療法の治験

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千葉大学の本橋新一郎教授はこのたび、理化学研究所と共同で、iPS細胞から作った免疫細胞を投与してがんを治療する医師主導治験を始めた。
頭けい部がん(鼻、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺などに発生するがん)の患者4~18人が対象で、iPS細胞を使うがん治療は国内では初めてとなる。

健康な人の血液からがんを攻撃する免疫細胞の一種「NKT細胞」を取り出し、理化学研究所でiPS細胞を作る。
この iPS細胞を大量に増やしてNKT細胞に育て、がん患者の患部に通じる血管に2週間ごとに3回投与する。

ウイルスや細菌などから身体を守る「免疫」働きの中心にいるのがリンパ球だが、千葉大学では「NKT細胞」(Natural killer T 細胞)という種類のリンパ球に着目した。

1986年に千葉大学の谷口 克教授(現 理化学研究所 客員主管研究員)らが発見した細胞で、T細胞、B細胞、NK細胞に続く第4のリンパ球と言われている。

人体には少数(リンパ球の0.1%以下)しか存在しないが、強い抗がん作用を有している。
直接がん細胞を殺すだけではなく、他のリンパ球の作用を高めて間接的にも抗がん作用を発揮する。

元来血液中には少ししかいないNKT細胞を十分な数に増やすのは容易ではなく、増殖させることが困難な患者もいる。

理化学研究所で作製に成功したNKT細胞由来のiPS細胞は簡単に十分な数のiPS-NKT細胞を準備することが可能である。

そこで、従来の治療では再発して有効な治療がない頭頸部がん患者に、このiPS-NKT細胞を繰り返し動脈投与する。

10月14日に1人目の患者に最初の投与を始めた。問題が起こらなければ投与量を増やし、安全性や効果を調べる。

グループでは3回投与で合わせて数千万個のNKT細胞を移植したあと、2年かけて安全性や効果を慎重に確認する。

頭頸部がんの治療には手術、放射線、抗がん剤が用いられる。実際にはこれらの治療を組み合わせて行われるが、手術による食事や発声への障害、変形、抗がん剤や放射線による副作用などから治療による患者への負担は大きい。一方で進行したがんの治療成績は依然として不良である。

治療にNKT細胞免疫治療を応用することで患者に負担が少なく、かつ治療成績を向上させる。




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