米独禁法違反事件での罰金刑の扱い

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連邦取引委員会(FTC) は2014年9月、米製薬会社AbbVie 提携先のBesins Healthcareベストセラー新薬のテストステロン補充療法ジェル薬AndroGelのジェネリック薬への米国民のアクセスを違法に妨害したとして両社を提訴した。

U.S. District Court for Eastern Pennsylvaniaは2018年6月29日、両社に対し独禁法違反で罰金448百万ドルの支払いを命じた。

被告の行為でジェネリックの上市が本来の2013年6月から2014年12月に延びたとし、その間の利益分として448百万ドルの罰金とした。

2018/7/6 米製薬会社AbbVie と提携先のBesins Healthcare、ジェネリック薬の妨害で罰金448百万ドル

本件に関し、Philadelphia の第3巡回区控訴裁判所は9月30日、地裁に罰金支払いを命じる権限は法的にないとして、これを取り消した。

AbbVie とBesins Healthcareが、AndroGel
のジェネリック誕生を遅らせるためPerrigo Co.に対し根拠のない特許侵害訴訟を提起し たことで、独禁法に違反していることは認めた。FTCが問題としたTevaとの取引についてもFTCの主張を認めた。

控訴裁のこの決定は3対0であった。

FTCは罰金取消の判決に不満を表し、対応を検討するとし ている。

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問題は、独禁法違反で不当に利益を得た場合の、不当利益の扱いである。

FTC法第19条では、FTCは裁判所を通じて消費者被害の回復を請求できる。①契約取消・改定、②金銭・財産返還、③損害賠償、④違反事実の周知などである。

このためには、審判手続きを経て審決又は同意命令を得た後でなければ、裁判所に請求できない。

もう1つは、FTC法13条(b)である。

FTCの法執行の規定の侵害が行われているかまたは行われようとしていると信じるにたる理由がある場合、FTCは当該行為が違法であるかどうかを認定する行政的な手続を停止して、地方裁判所に問題となる違法行為の禁止を求めることができ、 適切な場合には終局的差止を求めることができる。

ここでは、差し止め命令についてしか定めておらず、消費者被害の回復請求については明示的に規定していない。

しかし、差し止め命令に付随して、他の救済についても申し入れる権限をFTCが有するというFTCの解釈を裁判所も受け入れ、1980年以降、FTCは審判手続きをとることなしに裁判所に消費者被害の回復を請求してきた。

U.S. District Court for Eastern Pennsylvaniaの2018年6月29日の判決もこれに従うもので、両社に対し独禁法違反で罰金448百万ドルの支払いを命じた。

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しかし、最近はFTC法13条(b)を文言通りに判断する裁判官が増えてきた。規定にないので消費者利益の回復は出来ないとするものである。

2018年に2つの相反する判決があった。この点でFTCは、Amg CAPITAL Managementの件では勝訴、Credit Bureau Center LLCでは敗訴となった。この2件は統合され、来年に最高裁で判断が下る。

Philadelphia の第3巡回区控訴裁判所の今回の判断は、Credit Bureau Center LLCの件に続くものである。

最終的には、最高裁が判断するか、又は法改正を行なうかである。

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