フランス、デジタル税を再開 

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フランスのルメール経済・財務相は10月18日、延期していた同国独自のデジタル税徴収を12月から開始すると明らかにした。

OECDが協議しているデジタル課税等についての「包摂的枠組み」の結論を待ち、年末まで凍結するとしていたが、OECDが1012日に、合意期限を当初の「2020年内」から「2021年半ばまで」に延期すると発表したのを受けたもの。

米通商代表部(USTR)は既に7月10日に報復関税(化粧品、ソープ、ハンドバッグの21品目、13億ドル分に25%)を発表しており、2国間や多国間で協議する追加の時間を確保するため、発動日は180日間先送りして2021年1月6日に設定している。恐らく、課税を12月に繰り上げると見られる。

2020/7/14 米国、フランスのデジタル課税に報復関税 


付記

米通商代表部(USTR)は2021年1月7日、フランスが導入した「デジタルサービス税」への対抗措置として計画した制裁関税を巡り、発動を無期限で延期すると発表した。

IT企業への課税を巡る貿易摩擦はひとまず回避される。

USTRは延期の理由について「同様の調査が並行して続いており、対応をそろえる」ためだと説明した。

トランプ米政権は2021年1月6日、世界の「デジタルサービス税」を調査した結果、インド、イタリア、トルコが導入した制度が米国企業を不当に差別していると認定したと発表した。
現時点では追加関税などの制裁措置を講じない方針だが、検討を続ける。

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これまでの経緯:

(フランス vs 米国)

フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

内容は次の通り。

課税事業 (i) ユーザーが他のユーザーとコンタクトしたり、商品やサービスを購入するデジタルインターフェースの供与
(ii) フランスのユーザーに広告する業者にデジタルインターフェースでサービスを供与
課税対象企業 課税事業の全世界売上が750百万ユーロ以上で、
フランスのユーザーからのそれが25百万ユーロ以上
税率 対象売上高の3%
課税開始 2019/1/1に遡及

マクロン大統領は8月26日、フランスの「デジタル課税」を巡り、米国と合意を得たことを明らかにした。

フランスのデジタル課税と経済協力開発機構(OECD)がまとめている課税制度に基づく税収の差額を仏政府が企業に払い戻す方針で暫定合意に達した。

この時点では、米国が報復措置は取らないことで合意したとみられていた。

2019/7/31 フランスのデジタル課税法案成立、米国は報復を示唆

しかし、米通商代表部(USTR)は2019年12月2日、フランスが導入したデジタルサービス税が米国のIT企業を不当に差別していると断定した調査報告書を発表した。

24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税を検討する。

2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討

フランス大統領は2020年1月20日、米国などのIT大手を対象にフランスが独自導入した「デジタル課税」に米政府が対抗措置を検討している問題で、両政府が解決を探る協議を年内は継続することでトランプ米大統領と合意したと表明した。 フランス側が年末まで課税を凍結する見返りに、米側は報復関税を年内は発動しない。


米通商代表部(USTR)は7月10日、フランスの「Digital Services Tax」を巡り、化粧品、ソープ、ハンドバッグの21品目、13億ドル分のフランス製品に25%の報復関税を課すと発表した。

Digital Taxに関して2国間や多国間で協議する追加の時間を確保するため、発動日は180日間先送りして2021年1月6日に設定した。

2020/7/14 米国、フランスのデジタル課税に報復関税 


(他欧州諸国 vs 米国)

イタリア議会代議院(下院)は2019年12月23日、2020年の予算案を賛成334、反対232で可決した。このなかで、フランスに追随してデジタル課税の2020年1月1日導入を決めた。

2019/12/30 イタリア、デジタル課税を導入、フランスに追随

英政府は2020年3月12日、大手IT企業を対象にした新たなデジタル課税を4月に導入することを正式に決めた。

2020/1/29 デジタル課税を巡る問題 

米通商代表部(USTR)は2020年6月2日、Digital Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。

2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討


(OECD)

経済協力開発機構(OECD)は2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。10月17日からの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告し、2020年1月の大筋合意に向け、各国は詰めの議論に入る。

ムニューシン米財務長官は2019年12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国はDigital Taxに強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。

デジタル課税を巡る議論はOECDを中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航した。

OECDは2020年2月13日、多国籍企業への課税に関する新しい国際ルールが適用された場合、世界の法人税収の4%に相当する年1000億ドルの税収増が見込まれるとの試算を公表した。

2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表

米通商代表部(USTR)は6月17日、Mnuchin米財務長官がDigital Taxを巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。

2020/6/23 米、デジタル税を巡る国際協議からの撤退を示唆

OECDは1012日、デジタル課税等について検討しいる「包摂的枠組み」が、合意期限を当初の「2020年内」から「2021年半ばまで」に延期する旨の声明を発表した

合意期限が延期された背景として、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響と、参加国の間で政治的見解の相違や技術的問題があることに触れられている。
米国が昨年12月にデジタル課税の枠組みを「セーフハーバー」とする案(企業がデジタル課税の対象となるか否かを選択できることを認める案)を提案したことを指しているのではないかと思われる。

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