東京電力福島第1原発で汚染水浄化後に残る処理水の処分に関し、政府は海洋放出の月内決定を見送る方針を決めた。
当初、政府は海洋放出を決定する方針を固め、10月末にも決定するとされていた。
梶山経済産業相は10月23日、「27日に政府方針の決定はしない」と否定。「さらに検討を深め、適切なタイミングで結論を出していきたい」と述べた。
海洋放出に対しては、地元や全国漁業協同組合連合会などから根強い反発の声が上がっている。
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福島第一原発の汚染水でALPS等で処理され、原発敷地内のタンクにたまる水は約120万トンにのぼる。2020年末までに137万トン分のタンクを確保する見通しだが、これで敷地内のタンク建設用地は無くなる。2022年9月末に満杯になる。
汚染水に含まれるほとんどの放射性同位体は、複雑な浄水システムで除去されることになっている。しかし、放射性同位体の1つであるトリチウムは除去が不可能のため、汚染水は巨大タンクに貯水されている。
トリチウムを含む水は薄めて海に流すことが国際的に認められている。
IAEA(国際原子力機関)の調査団は2015年2月17日、調査報告書を発表した。そのなかで、汚染水を処理したあとのトリチウムを含んだ水について、国の基準以下まで薄めて海に放出することも含め検討する必要があるという考えを示した。
政府は海洋放出に当たり、風評抑制対策として少量の放出から始め、トリチウム濃度は国の規制基準(1リットル当たり6万ベクレル)の約40分の1となる1500ベクレル未満まで希釈、年間に放出するトリチウムの総量も他原発と同程度を想定している。
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2020年末までのタンクの建設計画は約137m3である。2020年9月17日現在で、ストロンチウム処理水が2.3万m3、多核種処理水が120.8万m3、合計 123万m3となっている。
本年1~9月の汚染水発生量は1日当たり約140トンで、2022年9月末に満杯になる。
原子力規制委員会が認可した福島第1原発の実施計画では、ALPSの設置目的はトリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値未満に下げることと明記している。
2018年8月に河北新報が、2017年度にヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。
それまで東京電力はこれを明らかにしていなかったが、2018年9月28日、汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとした。
原子力規制委員会から「タンクから出る放射線が『敷地境界』に与える影響をなるべく早く低減するように」と求められ、2015年度まではALPSの吸着材の交換にかかる時間を節約するため、取り除く能力が落ちるのに目をつぶり、交換頻度を下げた。 さらに2013年には、ALPS本体の部品の腐食による水漏れが起きた という。
これについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、ALPSの運用開始当初から残留を認識していたとし、トリチウム以外についても希釈して法令基準濃度を下回れば海洋放出を容認する考えを示した。 「希釈すれば法令基準を下回るのは明白なことで、大きく問題にすることがなかった」と述べた。(東京新聞 2018年8月23日)
この発言は大問題である。
実際には東電も政府もこの方法は採らず、ALPSで再浄化した上で、トリチウム濃度 を希釈し、放出するとしている。
東電の最新の発表では、2020年6月30日時点で、 ALPS処理水は 111.58万トンあるが、内訳は下記の通り。(万トン)
告示濃度以下 29.5 27% 1~5倍 37.4 73% 5~10倍 20.7 10~100倍 16.2 100倍以上 6.5 合計 110.3 100% 再利用タンク 1.3 再計 111.6
ALPSの設置目的のトリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値未満に下げること を満たしているのは、たった27%に過ぎない。しかも新聞が報じるまでは明らかにしていない。原子力委員会は、設置条件を満たしていないことを認識していながら、なんら措置を行っていなかった。
東電は処理水を再浄化する試験を9月に始め、主要な放射性物質の濃度は基準値を下回ったと発表し、来年1月までさらに詳しく調べるとしている。
それ以外の放射性物質の濃度は明らかにしていない。
それにもかかわらず、政府は当初、海洋放出を10月27日に決めるとしていた。
政府と東電は、ALPSで再浄化した上で、トリチウム濃度は国の規制基準(1リットル当たり6万ベクレル)の約40分の1となる1500ベクレル未満まで希釈し、放出するとしている。ALPSでの再浄化を徹底し、国際原子力機関(IAEA)による監視態勢を強化。監視の透明性を確保するため、水産業者の参加も視野に入れる。
再浄化すべき汚染水は80万トン以上ある。毎日発生する汚染水をALPSで処理しながら、同時に再浄化し、それを希釈して放出する ことになる。
これをどうやって実施するのだろうか。このままでも2022年9月末にタンクが満杯になるのに、再浄化や希釈するためのタンクはどうするのだろうか。
参考 2020/8/12 福島原発汚染水問題で、60年保管説
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