Eli LillyのCOVID-19用抗体薬に動き

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Eli LillyのIgG1 モノクローナル抗体 LY-CoV555 について動きがあった。病状の進行した段階では効かず、治療コース初期には有効である可能性が出た。

Eli LillyのIgG1 モノクローナル抗体 LY-CoV555 については、3種類の治験が行われている。

1) 米国立衛生研究所(NIH)が実施する初期の後期治験「ACTIVE-3」は、入院している約300人の患者を対象とする。

2) 別の政府主導の中期治験「ACTIV-2」は入院していない約220人の患者を対象とする。

3) Ely Lillyは軽度から中程度の新型コロナ患者を投与の対象にして治験を行ない、10月上旬、FDAに緊急使用許可を申請している。


Eli Lillyは10月13日、COVID-19抗体治療薬の臨床試験で被験者の登録を安全性への懸念が理由で停止したことを明らかにした。米政府の支援を受けて進めている臨床試験は独立したデータ安全性監視委員会(DSMB)から停止の勧告を受けたと述べた。

停止となったのは、「LY-CoV555」についてNIHが新型コロナの入院患者を対象に実施していた治験「ACTIVE-3」であった。

別の政府主導治験「ACTIV-2」については中断を勧告しておらず、ACTIV-2は継続しており、Ely Lilly主導の治験も影響を受けていない。

2020/10/15 Johnson & Johnson、コロナワクチンの治験を一時停止、Eli Lillyの抗体治療薬も  

NIHは10月26日、 「ACTIVE-3」の治験を中断したまま、終了すると発表した。安全面に問題がないことが分かったが、「LY-CoV555」は入院患者向けでは効果がない公算が大きいと説明した。
治験で相当な高用量が投与されたが、効果的だったことが示唆されなかった。

Ely Lillyは今回の決定について、この抗体医薬が病状の進行した段階にあるコロナ入院患者の回復を助ける可能性が低いことを示唆するデータに基づくものだと説明した。そうした残念な結果が「コロナの予防や初期治療に成功するチャンスを損なうとは想定していない」と強調した。

Eli Lilly はこの抗体医薬について、10月上旬にFDAに外来患者向けでの緊急使用許可を申請した。申請は軽度から中程度の新型コロナ患者を投与の対象にしており、今回の結果は影響しないとみている。早ければ11月には複数の抗体を合わせた「抗体カクテル」の緊急使用も求める方針。  

治験の中間結果では、投与により軽度から中程度の新型コロナ患者の入院率が低下していた。安全面に問題がないことが分かったことから、承認にこぎ着けられると自信を示した。

治験結果とNIHの今回の発表から、新型コロナウイルスが肺に深く侵入し深刻なダメージを与える前の、治療コース初期にコロナ向けモノクローナル抗体が投与された場合にのみ効果がある可能性がうかがえる。

付記

FDAは11月9日、緊急使用許可を承認した。症状が軽度から中程度の成人と12歳以上の小児への、発症から10日以内の投与が求められている。
Eli Lillyは年内に100万回分を製造する。
米政府とは30万回分を375百万ドルで供給することで合意している。

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