Remdesivirについて、国際的な臨床試験を行った結果、入院患者の死亡率の改善などには「ほとんど効果が認められないか、全く効果が認められなかったようだ」とする暫定的な結果を発表した。このレポートはまだ peer reviewを受けていない。
WHOは、4つの薬で臨床試験を行った。
1) Remdesivir
2) 抗マラリア剤のhydroxychloroquine
3) HIV感染症のHAART療法に用いられるプロテアーゼ阻害薬のLopinavirとRitonavir の合剤(AbbVie Inc.が販売する商品名Kaletra)
4) インターフェロンWHOは当初、Remdesivirと、LopinavirとRitonavir の合剤商品名Kaletraの試験を行った。
2020/2/22 COVID-19、WHOが2つの治療法試験
ヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine)は抗マラリア剤で、免疫に関わる病気の全身性・皮膚エリテマトーデス治療薬としても使われている。
トランプ大統領が新型コロナウイルスをめぐり、繰り返し、「マラリアなどの治療に使われる薬が有効だと思う」と主張した。
WHOは5月25日、ヒドロキシクロロキンの臨床試験を一時中断すると発表した。英医学誌 Lancet が患者の死亡リスクを増大させると報告したため。
2020/4/9 トランプ大統領、CVD-19治療に抗マラリア薬を絶賛
WHOの臨床試験は30か国で11,266人を対象に実施した。
うちRemdesivirが2,750人、Hydroxychloroquine 954人、Lopinavir 1,411人、Interferon plus Lopinavir 651人、Interferon のみ1,412人、プラセボ(薬なし) 4,088 人である。
死亡率は下記の通り。
薬投与 プラセボ Remdesivir 301/2,743 303/2,708 Hydroxychloroquine 104/947 84/906 Lopinavir 148/1,399 146/1,372 Interferon 243/2,050 216/2,050
結論 全ての剤で、死亡率、呼吸器使用、入院日数で見ると、ほとんど 又は全く 効果がないように見える。
These Remdesivir, Hydroxychloroquine, Lopinavir and Interferon regimens appeared to have little or no effect on hospitalized COVID-19, as indicated by overall mortality, initiation of ventilation and duration of hospital stay.
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Remdesivir のメーカーのGilead Sciencesは、WHOのデータは厳格な検証をまだ受けていないもので、これまで別の臨床試験で示された有効性と矛盾しているとする声明を発表した。
臨床試験の方法についてもクレームをつけ、こんな研究から有意義な結論は出ないとした。
The trial desig pritotized broad access, resulting in siginificant heterogeneity (不均質)in tril adoption, implementation, controls and patient populations and consequentl, it is unclear if any conclusive findings can be drawn from the study results.
そして、最近発表された National Institute for Allergy and Infectious Disease の試験ではCOVID-19で入院した患者の状況が改善したことを示しているとした。
The New England Journal of Medicine は10月8日、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が主導する国際的な臨床試験の最終報告 Remdesivir for the Treatment of Covid-19 -- Final Reportを掲載した。
アメリカ、日本を含む10か国でCOVID-19で入院した成人およそ1000人を対象に実施され、Remdesivirを最大で10日間、投与したグループと投与しなかったグループで経過を比較した。
Remdesivir | プラセボ | |||
対象 | 541人 | 521人 | ||
回復 | 399人 | 355人 | ||
回復期間 | 15日目 | 11日 | 15日 | |
29日目 | 10日 | 15日 | 酸素吸入治療では 11日対18日で7日短縮 |
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死亡率 | 15日目 | 35人 6.7% |
61人 11.9% |
酸素吸入治療では |
29日目 | 59人 11.4% |
77人 15.2% |
酸素吸入治療では 9人 (4.0)% vs.25人 (12.7%) |
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深刻な有害事象 | 24.6% (131/532) | 31.6% (163/516) |
結論 RemdesivirはCOVID-19で入院した大人の回復期間を短くする点でプラセボより優れている。
呼吸器感染症の割合も低い証拠がある。
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米食品医薬品局は5月1日、Remdesivirを症状の重い入院患者に投与する緊急使用を許可している。(正式の承認はまだ)
日本の厚生労働省は海外で先に承認された場合、日本での審査を短縮する「特例承認」を適用し、5月7日、Remdesivirを「特例承認」した。
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