アステラス製薬は10月15日、極小サイズの体内埋め込み型医療機器を開発する米 iota Biosciences, Inc. を買収する契約を締結した。
10月29日に買収を完了し、完全子会社とした。
iota Biosciencesは、カリフォルニア大学バークレー校の研究者のMichel MaharbizとJose Carmenaによって2017年に設立されたスタートアップ企業。
二人は2018年12月にホコリほどの大きさしかないワイヤレスセンサー「Neural Dust」を開発したと発表した。
体内に埋め込んで超音波を照射すれば、その部位にある器官のデータを外部から読み取ることができる。超音波振動でデータを取り出すため、センサーには微小な圧電性結晶 (piezo crystal) を搭載しており、たとえばロボット義手/義足を動かすのに必要な神経の微小電流を体外へと無線伝送させるといった使い方が可能である。
従来の埋め込み型医療機器は電力を供給するバッテリーや情報通信用のケーブルおよび大きな電子回路の搭載が必要であるため、サイズの小型化が難しく、多くの場合、その埋め込みに侵襲性の高い手術を要するという課題があった。
「Neural Dust」は、電力供給および無線通信に超音波を用いることで、極小の体内埋め込み医療機器を可能にした。手術時だけでなく手術後の生活においても患者にかかる身体的な負担を軽減することが期待される。
超音波は体を透過する。
超音波がデバイスを給電し、神経や筋肉が何をしているかによってわずかに変わった状態で跳ね返ってくる。
絶えずパルスを送ることで、システムは正確なモニターデータを絶え間なく集める。これにはまったく出血を伴わない。唯一のトランスミッションは超音波であり、何十年もの研究でその使用の安全性は証明されている。
交換なしで、生涯使い続けることができる。
図: https://news.berkeley.edu/2016/08/03/sprinkling-of-neural-dust-opens-door-to-electroceuticals/
アステラス製薬は2018年5月にiota社に一部 出資した。
同社は2019年9月に、極小の体内埋め込み型医療機器を用いた新たな生体センシングおよび治療手段の実現を目指し、iota社と共同研究開発契約を締結した。
共同で、アンメットメディカルニーズの高い複数の疾患を対象として、埋め込み型医療機器の詳細な仕様を検討し、前臨床試験を実施するとした。
提携以来、iota社の持つバイオエレクトロニクス分野の基幹技術と深い知見、アステラスの持つ生体や疾患理解における専門性や、創薬研究から上市への豊富な経験がもたらすシナジーによる共同研究開発を進めている。それらの成果を含む複数プロジェクトの臨床試験を2020年代前半に開始を予定している。
今回、アステラス製薬が保有する分を除く株式をすべて買収し、完全子会社とした。
対価として契約一時金約1億2,750万米ドルを支払う。
更に、iota社の株主(アステラス製薬を除く)は、取引完了後の一定期間内にiota社が所定のマイルストンを達成した場合に、最大で総額約1億7,650万米ドルの追加支払いを受け取る。
これまでの共同研究開発において見出したプロジェクトの開発を迅速に進めるほか、iota社独自の技術を用いた新たな疾患への適用および新規技術の開発に取り組むことで、バイオエレクトロニクス分野でイノベーションを生み出す拠点としてRx+®事業のさらなる加速を目指すとしている。
Rx+®事業とは、医療用医薬品(Rx)で培ったアステラス製薬の強みをベースに、最先端の医療技術と異分野の先端技術を融合させることで、Patient Journey(診断、予防、治療および予後管理を含む医療シーン全般)全体において患者に貢献し、単独で収益を生み出せる事業の枠を越えた新たな事業
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