プロ野球のドラフト指名を拒否した選手との契約制限を12球団で申し合わせた通称「田沢ルール」について、公正取引委員会は11月5日、「独占禁止法違反の恐れがあった」との見解を公表した。
公取委は「日本プロフェッショナル野球組織」(NPB)を同法違反の疑いで調べたが、9月にルールが撤廃されたため、違反認定をせずに審査を終えた。
田沢純一投手は横浜商科大学高等学校から新日本石油に入り、大活躍した。
2008年のドラフトでは1巡目指名が確実だったが、2008年9月に記者会見でメジャーリーグ挑戦の意思を表明、同時にプロ野球12球団宛にドラフト指名を見送るよう求める文書を送付した。
NPBは、有力な新人選手が12球団を経ずに外国の球団と選手契約することが続いた場合、日本のプロ野球の魅力が低下するおそれがあるとの認識の下、2008年10月にNPBの議決機関である実行委員会において、以下の件申合せを行なった。(通称 「田沢ルール」)
新人選手が、ドラフト会議前に12球団による指名を拒否し、又はドラフト会議での交渉権を得た球団への入団を拒否し、外国球団と契約した場合、
外国球団との契約が終了してから高卒選手は3年間、大卒・社会人選手は2年間、12球団は当該選手をドラフト会議で指名しない。
NPBは2008年10月以降、本件申合せを有効なものとして維持してきていた。しかし、実際に本件申合せが適用されて12球団に契約を拒絶された例はなかった。
今季大リーグのレッズを自由契約になった田沢が今夏に独立リーグのBC埼玉に入団したことで再び注目された。
プロ野球12球団とNPBは9月7日、実行委員会を開きドラフト拒否選手との契約制限を申し合わせた通称「田沢ルール」の撤廃を決めた。日米の野球を取り巻く環境が当時と変わり、8月に選手会からも要望があったことから、撤廃を決めたとい う。
本件についての独禁法の考え方は下記の通りで、公取委は「独占禁止法違反の恐れがあった」との見解を公表した。
一般に、事業者団体が、構成事業者に対し、他の事業者から役務を受けることを共同で拒絶するようにさせる場合であって、他の事業者が当該構成事業者と同等の役務提供先を見いだすことが困難なときは、当該他の事業者を当該役務の提供市場から排除する効果を生じさせ、当該役務提供市場における公正な競争を阻害するおそれがある。
独占禁止法第8条第5号〔一般指定第1項第5号(共同の取引拒絶)〕
公取委の本件審査の過程において、NPBから公正取引委員会に対し、 ① 本件申合せを廃止したこと、 ② 本件申合せを廃止したことを公表するとともに、関係団体等に周知したことの報告があり、この措置が、独占禁止法違反の疑いを解消するものと判断し、本件審査を終了した。
公取委は、なぜ12年後の今頃になって、これが独禁法違反と判断したのだろうか。
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