三井化学と三井物産は11月11日、共同TOBにより本州化学工業 (東証2部上場)の普通株式を 全株取得すると発表した。
両社は現在、本州化学にそれぞれ26.99%出資しているが、TOBによる非公開後の出資比率を三井化学が51%、三井物産が49%とする。
TOB価格は1株1,830円。
11月11日の終値は 1,283円であった。
SMBC日興証券の各手法による株式価値の範囲:
市場株価法:1,213円~1,281円
DCF法:1,718円~2,082円付記
日本、欧州、中国、台湾及びトルコの競争法に基づく手続きが充足できたため、2021年5月17日からTOBを開始する。
本州化学は、1914年11月に由良浅次郎らが設立した由良精工合資会社を前身とする。欧州からの輸入が途絶えた染料を自製するため、日本で初めてアニリン及び合成フェノールの工業化に成功し、現在の和歌山市小雑賀において本格的な生産を開始した。
1953年に会社更生法の適用を受けるが、三井物産の前身の一つの第一通商の全面的な支援のもと、1956年3月に会社更生手続を終結した。
途中、1955年10月に社名を現在の「本州化学工業」に改称した。
1959年に日本で初めてビスフェノールAを国産化し、1967年には世界で初めて合成クレゾールを工業化した。
(1988年に主力製品であったビスフェノールA事業を三井石油化学工業に譲渡)
1980年に多品目を切り替え生産できるプラントを建設し、独創的でニッチな製品へと注力分野のシフトを加速し、ファインケミカルスペシャリストを標榜する研究開発型企業へと大きく舵をきった。
2001年には、特殊ビスフェノールの生産増強を目的として、ドイツに合弁会社Hi-Bis GmbHを設立し、2014年には、第二期プラントが稼働した。
社名 Hi-Bis GmbH 事業 特殊ビスフェノールの製造販売 場所 ドイツ ザクセン・アンハルト州ビッターフェルド市 株主 本州化学 55%、三井物産 35%、Bayer 10% 設立 2001/11 能力 5千トン 2014年に第二期プラント 備考 自動車部品、超高密度DVD等に用いられる特殊ポリカーボネート樹脂原料
全量バイエル向け
現在の事業:
2020/3月期実績 (億円) 売上高 営業損益 化学品 ビフェノール、クレゾール誘導品等 97 10 機能材料 電子材料、特殊ビスフェノール等 58 9 工業材料 主にHi-Bisの特殊ビスフェノール、受託品等 53 19 その他 4 0 全社 - -8
最近の業績:
単位:億円 (配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益配当
中間 期末 2019/3 208 31 30 18 10 18 2020/3 213 30 30 17 12 20 2019/9 94 10 10 4 12 2020/9 97 18 18 11 12 2021/3予 200 25 24 14 12 20
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買収する三井化学、三井物産と本州化学との関係は下記の通り。
三井化学(三井石油化学) | 三井物産(第一通商) | |
前身の第一通商が原料供給、製品販売 | ||
1953 | 会社更生法からの再建支援、出資(20.91%) 以降、複数回の第三者割当増資、複数回の譲受、譲渡 |
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1959 | 本州が三井石油化学にフェノール供給開始 以降 アニリン、BPA等を三井グループに供給 |
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1968 | 三井石油化学、本州株式7.78%を東レから取得 以降、第三者割当増資、少数株主から譲受 |
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1987 | 三井物産から本州株式譲受(→30.98%) | 三井物産に本州株式譲渡(→30.98%) |
1988 | 三井石油化学がビスフェノールA事業を譲受 三井石油化学のファインケミカル技術者を移管 |
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現状 | 本州の増資により出資比率26.99% | 本州の増資により出資比率 26.99% |
フェノール及びメタ・パラ・クレゾールの主要販売先 | 原料供給、製品販売、新規事業開発支援 |
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