大阪地裁、大飯原発の設置許可取り消しを命ず

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関西電力大飯原発3、4号機の耐震性を巡り、安全審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は誤りだとして、福井県などの住民らが国に原子炉設置許可の取り消しを求めた訴訟の判決が12月4日、大阪地裁であり、裁判長は国に設置許可の取り消しを命じた。

原子力規制委による原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてとなる。

付記 国は大阪地裁の判決を不服として12月17日控訴した。

大飯原発を巡る訴訟で、住民側が勝訴したのは2014年5月の福井地裁の運転差し止め命令(控訴審で逆転敗訴)以来2度目。

東京電力福島第1原発事故後、安全性の保証をせずに大飯原発3、4号機を再稼働させたとして、福井県の住民らが関西電力に運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は2014年5月21日、現在定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

「この地震大国日本において、基準値振動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準値振動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。このような施設のあり方は原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりにも楽観的といわざるを得ない。」

名古屋高裁金沢支部は2018年7月4日、運転差し止めを命じた一審・福井地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却した。

「原子力規制委員会の新規制基準に違法・不合理な点はなく、大飯原発が同基準に適合するとした判断にも不合理な点はない」「原発の危険性は社会通念上無視できる程度にまで管理・統制されている」と判断した。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

大飯3、4号機は現在は定期検査中で稼働していないが、検査が終われば判決が確定するまで稼働できる。
判決が確定した場合、関電はより厳格な耐震設計で工事をやり直し、改めて許可を得るまで稼働できない可能性が出てくる。

  認可 テロ対策
工事期限

状況

再稼働予定
関電 大飯 3号 2017/8/25 2022/8/24 停止 2020/7定修 1次系配管に損傷   → 規制委側は議論を継続
4号 停止 2020/11/3 定修入り  
 

訴訟では、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の評価を基に、設置を許可した規制委の判断が妥当かどうかが主な争点となった。

原告側は、関電や国が想定される揺れを過小評価しており、3、4号機の耐震設計は不十分だと主張。これに対し、国側は数値は妥当で原発の安全性は担保されていると反論していた。


判決要旨は次の通り。

結論:

原子力規制委員会の判断に不合理な点があり、設置許可を取り消す。原告の主張する地盤安定性や津波想定に関する誤りなどは、いずれも採用できない。

裁判所の審理は、規制委の判断に不合理な点があるかどうかとの観点から行う。
現在の科学技術の水準に照らして、規制委が使った審査基準に不合理な点があるか、判断過程に看過しがたい過誤、欠落がある場合には、その判断に基づく設置許可は違法だとするのが相当である。

基準地震動:

規制委は基準地震動を策定する際、震源断層の長さにまつわる不確かさなど、影響の大きな要素を分析し、適切に考慮すると内規で定めている。

規制委の「審査ガイド」は「経験式を用いて地震規模を設定する場合、適用範囲が十分に検討されていることを確認し、ばらつきも考慮される必要がある」と定める。

ばらつきの意義:

地震規模は基準地震動を策定するための重要な要素である。経験式から算出される地震規模は平均値であって、実際に発生する地震規模はそれより大きい方に外れることが当然に想定される。地震規模の設定では、平均値をそのまま使うのではなく、平均からのずれを考慮することが相当である。

ただし平均値に上乗せすることが必要かどうか検討した結果、不必要とした場合は、平均値をそのまま地震規模の値とすることも妨げられない。

このばらつきに対する解釈は、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて耐震設計審査指針が改定される際、経験式より大きな地震が発生することを想定すべきだとの指摘を受けて定められた経緯とも整合する。

判断過程に欠落:

関電は基準地震動を策定する際、地質調査などに基づいて設定した震源断層面積を経験式に当てはめて出した地震規模の値をそのまま使用。実際の地震規模が平均値より大きくなる可能性を考慮して設定する必要があるかどうかを検討せず、上乗せもしなかった。

規制委も上乗せをする必要があるかどうかについて何も検討せず、関電の設置許可申請が基準に適合し、審査ガイドを踏まえているとした。
規制委の判断過程には看過しがたい過誤、欠落があるというべきだ。

この点に関し、規制委の考え方は次の通り。

安全審査では耐震のために想定する最大の揺れ「基準地震動」を基にした対策を確認する。基準地震動の算出では、計算式を使いながら想定する地震の規模を検討。震源と原発の距離なども踏まえて導き出されている。

その際、計算式で使う数値は、平均的なものではなく、大きな規模の地震も考慮されたものになっている。

しかし、ガイドラインについては「表現が曖昧と言われても仕方ない部分があり、解釈に違いが出てしまう可能性があった 。」規制委はガイドの見直しを予定している。


その他の原発での裁判の状況:

高浜3号、4号機

福井地裁は2015年4月14日、運転差し止めを求めた仮処分申請で、再稼働を認めない決定

2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定

福井地裁は2015年12月24日の異議審で仮処分の決定を取り消し、再稼働を認める判断

ーーー

大津地裁は2016年3月に運転停止の仮処分を命じた。

大阪高裁は2017年3月28日、「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、大津地裁の仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めた。

2017/3/28 大阪高裁、高浜原発3・4号機の再稼働認める判断

伊方3号

山口地裁岩国支部は2019年3月、運転差し止めを求めた仮処分申請を却下した。

この即時抗告審で広島高裁は2020年1月17日、山口地裁岩国支部の決定を取り消し、四国電力に運転差し止めを命じる決定を出した。

2020/1/20 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め

定期検査で停止していたが、司法判断が覆らない限り、運転を再開できない。
なお、定期検査中の1月25日に電源が一時喪失するトラブルがあった。

四国電力は2月29日に異議と仮処分の執行停止を申し立てを行なった。異議審の決定は2021年3月の予定。

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