トランプ大統領、新型コロナウイルス追加景気対策予算法案の署名を拒否

| コメント(0)

前記の通り、米国の2021会計年度予算案と追加経済対策案がようやく可決され、政府機関閉鎖をぎりぎりで回避されると見られた。

与野党協議に参加していたムニューシン財務長官は「超党派の可決を歓迎する」と述べた。

両法案はホワイトハウスに送られたが、驚愕の事態が発生した。

トランプ米大統領は12月22日、米議会が可決した9000億ドルの新型コロナウイルス対策法案の修正を求め、現行案のままなら署名を拒否すると表明した。

「現金給付額は1人当たり600ドルと極めて少なく、2000ドル(夫婦で4000ドル)に引き上げるよう議会に求める」と主張、「不要な項目を除いた法案を再送付してこなければ、経済対策は次期政権、多分 私だ、でまとめることになる」などと述べた。

I am asking Congress to amend this bill and increase the ridiculously low $600 to $2,000 or $4,000 for a couple.

支援策に含まれている他国への資金援助に難色を示し、困窮するアメリカ人にまわすべきだと述べた。

「この支援策にはカンボジアに8550万ドル、ビルマに1億3400万ドル、エジプトとその軍隊に13億ドル、これはほとんど丸ごとロシア製の兵器購入に使われるだろう、それからパキスタンの民主化・ジェンダープログラムに2500万ドル、さらにベリーズ、コスタリカ、エルサルバトル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマに合わせて5億500万ドルが振り向けられている」

(海外支援は大統領の予算要求によるもので、全く矛盾している)

さらに、芸術施設ケネディー・センターが開館していないにも関わらず4000万ドルを受け取り、その他の美術館や博物館にも10億ドル以上があてがわれるのかと疑問を呈した。

その上で、「議会は外国やロビイスト、特別な権益には多額の金を出す一方で、それを必要とするアメリカ人には最低限しか送らない。アメリカ人のせいじゃない。中国のせいだ」と結論付けた。

Congress found plenty of money for foreign countries, lobbyists and special interests, while sending the bare minimum to the American people who need it. It wasn't their fault. It was China's fault.

大統領が法案署名を拒否する場合は、日曜日を除いた10日以内に議会に差し戻し、議会が3分の2の賛成多数で関連法案を再可決すれば、大統領の拒否権を覆して法案成立にこぎ着けられる。
法案は上院、下院とも3分の2以上の賛成多数で可決しており、再議決による成立は可能である。

しかし、2021会計年度のつなぎ予算は12月28日までで、経済対策法案は2021会計年度本予算と一体化しているため、大統領が法案を抱え込んで28日までに議会へ差し戻さなければ、連邦政府予算そのものが失効して、政府機関の一部閉鎖に追い込まれかねない。(新たなつなぎ予算を通す手はある。)

12月26日には3月に発動した失業給付の特例措置も期限切れとなり、自営業者らも含めて1200万人の収入が大幅に失われる懸念がある。
12月末には家賃滞納者の強制退去の猶予措置も切れ、1月には500万人が住居の立ち退きを迫られる可能性もある。

新議会は2021年1月3日に招集される。それまでに追加景気対策予算法案が成立しない場合、廃案となる。

トランプ大統領は大きな人質をとったことになる。

付記

米政権・議会による9000億ドルの経済対策の成立が大幅に遅れ、12月26日に1200万人分の失業給付の特例措置が失効した。

付記

トランプ大統領は12月23日、2021会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法案にも拒否権を発動した。

海外駐留米軍の性急な削減を制限することや、南北戦争での南部連合軍にゆかりのある米軍基地名の変更条項などを問題にした。

下院は12月28日、これを2/3以上の賛成で再可決した。上院待ち。

共和党 民主党 無所属 合計
賛成 109 212 1 322
反対 66 20 1 87
棄権 20 1 21

合計

195 233 2 430


コメントする

月別 アーカイブ