歯の再生を促す医薬品を開発するトレジェムバイオファーマ

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11月30日の日本経済新聞(オンライン)は、"歯の治療にも再生医療 「歯生え薬」実用化目指す" と報じている。

歯の再生を促す新規医薬品を開発する歯科領域の創薬ベンチャー、 トレジェムバイオファーマ (Toregem BioPharma) は2020年5月12日に設立された。
Toregemの社名は Tooth Regeneration Medicine(歯の再生薬)から採った。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の高橋克准教授が、永久歯の次に生える歯(第3生歯)を成長させることによって歯の再生の実現が可能なことを発見した。
一般的な歯の治療法である義歯やインプラントの人工歯に対し、自己歯の再生が根治的な治療法と成り得る可能性がある。

ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)、それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されている。

実際には、乳歯と永久歯のあとに第3歯堤という歯の原器があるが、骨形成タンパク質(BMP)等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子の働きによって第3生歯は消失してしまう。

USAG-1遺伝子の欠損マウスでは、本来は退化消失するはずの痕跡的乳切歯が生き残った結果、過剰歯として萌出することが確認されている。

橋克准教授による長年の研究により、この拮抗分子USAG-1遺伝子を抑制する中和抗体やsiRNA2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまうRNA干渉に関与するRNA)によって無歯症モデル動物で欠損歯が歯槽骨と共に回復することが分かった。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の喜早(きそ)ほのか氏がCEOを務める トレジェムでは、USAG-1中和抗体のヒト化に向けた開発を進めており(現在は前臨床開発段階)、中和抗体とsiRNAの化合物を新規医薬品として上市することを目指している。

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まずは120万人いると言われる先天性無歯症に対する治療薬を1号として上市を目指す。上市を2030年頃と想定している。

歯の欠損を有する患者(無歯症患者)に先天性の症例が存在し、原因遺伝子としてEDA, MSX1, WNT10A, RUNX2などが同定されている。
先天性無歯症は患者が未成年で顎骨が発達期にあるため義歯やインプラントの適用が困難で、成人するまでの長期間を温存療法で耐えるしかなく、歯の欠損が栄養確保と成長に悪い影響を及ぼすため、根治的な治療法の開発が強く望まれている。

同社では、こうした原因遺伝子変異をバイオマーカーとして対象患者を選択し、USAG-1中和抗体を適用していく。

これにより安全性と有効性を確立し、2号として部分無歯症へ適応拡大して事業成長を図り、その後、加齢や歯周病、事故等で歯を失った後天性無歯症で第3生歯を発生させ、インプラントや義歯と並ぶ新たな選択肢を提供する。

なお、京都大学イノベーションキャピタルは2020年9月同社に対して50百万円の投資を実行した。

 参考資料:

  2020/5/26
京都府 京都企業紹介 
トレジェムバイオファーマ株式会社

  2020/11/19 THE INDEPENDENTS 歯の再生治療ベンチャーにおける市場戦略とライセンス交渉



エア・ウォーターでは、不歯から歯髄を採取し、その中に含まれる歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯神経を喪失した歯に移植することにより歯髄を再生する治療を開発中。

2020/6/29  エア・ウォーター、「歯髄幹細胞を用いた再生医療」を世界で初めて実用化

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