米上院、トランプ氏の弾劾裁判は2月9日開始

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上院で予定されるトランプ前大統領の弾劾裁判は2月9日に審理を開始することで与野党が合意した。

1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件について、民主党はトランプ氏が「反乱を扇動」したとして、1月13日に下院で
232対197の賛成多数で弾劾訴追した。

2021/1/14 トランプ大統領 2度目の弾劾訴追

本来であれば、下院は弾劾訴追決議を上院に付託し、 これを受けて上院は弾劾裁判を開く。

しかし、今回はバイデン政権の閣僚指名の承認手続きがほとんど終わっておらず、また経済対策法案の審議も必要であり、これらを優先させる必要がある。

報道によると、Biden次期大統領は共和党のMcConnel上院総務に電話し、弾劾と通常審議を(例えば午前と午後に分け)並行して行う「分離審議(Bifurcatiion)」の可能性について話し合ったというが、合意できていない。

このため、下院は上院への送付を遅らせた。

民主党と共和党で日程を協議した結果、下記の通りとなった。

1月25日に下院が弾劾決議を上院に送付

(この間、通常の法案審議と、トランプ前大統領の弁護準備)

2月9日に審理開始 

上院議員が弾劾裁判の陪審員となり、最高裁長官が裁判長となる。

上院の審議日程は、多数党の院内総務が決める。今回、民主党が多数党となったが、民主党院内総務のChuck Schumer上院議員が審理開始前の準備期間を認めた。

共和党のMitchell McConnell 院内総務は、 審理開始前の準備期間を民主党が認めたことを歓迎し、「下院が素早く最低限の手続きで進んだだけに、共和党としては上院が今後、トランプ前大統領の権利と法定手続き、上院という制度や大統領の職位を尊重するよう、働きかけた。その目的は実現した。これは法定手続きと公平性の勝利だ」 と評価した。

トランプ前米大統領は、上院での弾劾裁判を担当する弁護人にサウスカロライナ州のButch Bowers 弁護士を起用した。
当初は顧問弁護士の Rudy Giuliani 氏が担当する見込みだったが、同氏は最近、議事堂乱入事件直前の支持者集会に自らも参加していたことを理由に弁護を担当しない考えを明らかにした。

上院は与野党の勢力が50対50となったが、有罪とするには3分の2以上(67人)の賛成が必要で、共和党から少なくとも17人の賛同が必要となる。

McConnell 院内総務は1月19日の上院本会議で、連邦議会議事堂占拠事件について、「トランプ大統領や他の影響力を持つ人々に扇動された」と発言した。
「暴徒はウソをすり込まれていた」と述べ、大統領選で大規模な不正があったとの根拠のない主張を繰り返したトランプ氏らを批判、「我々は団結し、米国ではたとえ一晩でも怒る暴徒たちが法の支配を拒否することはさせないと明言した」と強調した。

同事件を巡る上院のトランプ氏弾劾裁判に影響を与える可能性がある。

有罪となった場合、上院は過半数の賛成で、トランプ氏から今後公職に就く資格を剝奪することができる。

憲法に2つの規定がある。

憲法 第1章第3条第7項

弾劾事件の判決は、職務からの罷免、および名誉、信任または報酬を伴う合衆国の官職に就任し在職する資格の剥奪以上に及んではならない。
"Judgment in Cases of Impeachment shall not extend further than to removal from Office, and disqualification to hold and enjoy any Office of honor, Trust or Profit under the United States."

第6項では「何人も、出席議員の3分の2の同意がなければ、有罪の判を受けることはない」としているが、資格剥奪については3分の2の規定がない。

1862年と1913年に上院はWest Humphreys 判事と Robert Archbald 判事の弾劾裁判で3分の2の同意でそれぞれ有罪とし、資格剥奪については単純多数決で決めた。

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憲法修正14条

第3節、アメリカ合衆国議会議員、国の機関の役人、州議会議員、あるいは州の行政及び司法の役人として、アメリカ合衆国憲法を支持することを以前に誓い、かつそれらに対する反乱に加わった者あるいはその敵に対して援助や同調した者は、アメリカ合衆国下院または上院議員、大統領および副大統領の選挙人、あるいは国または州の公的、軍事的役職に就くことはできない。

ただし、アメリカ合衆国議会が各院の議席の3分の2以上で決した場合は、その禁止規定を排除する。

第5節、アメリカ合衆国議会は適切な立法により本修正第14条の条項の施行権限を有する。

今回の弾劾は、「反乱を扇動」で訴追されており、上院で有罪となれば、憲法修正14条で公職につくことができず、これは議会の適切な立法で過半数で施行できる。


参考

米国は南北戦争時に憲法修正13条で奴隷制度廃止を決めたが、更に修正14条を採決し、南部各州に批准を迫った。
第3節の意味は下記の通り、南部連合を支持した公務員からの選挙権と公職就任権をはく奪するためのものであった。

  1. 合衆国市民権は出生または帰化によって取得される。各州は合衆国市民に保障されている権利を制限してはならない。
  2. 南部が黒人男子に投票権を認めない場合は、その数が男子総人口に占める割合に比例させて、その州から選出される下院議員数を削減する。
  3. 南北戦争で南部連合を支持した元公務員から選挙権と公職就任権を剥奪する。
  4. 南北戦争中の 政府の公共債務は支払われるが、南部諸州の負債支払いと奴隷解放による損失の補償の請求権は認めない。

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