米議会、国防法案の大統領拒否権発動を大差で覆す、大統領が景気対策予算案につけた条件も通らず

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米上院は1月1日、Trump大統領が拒否権を行使した国防権限法案を81対13の2/3以上の賛成で再可決した。 下院も既に再可決している。現政権で議会が大統領の拒否権を覆したのは初めて。

1月3日に新議会が始まるため、ギリギリの採決だった。

トランプ大統領は、2021年度予算案と新型コロナウイルス対応景気対策予算案を一旦拒否し、12月27日に一転、これにサインしたが、いろいろ条件を付けた。

2021会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法案にも拒否権を発動した。海外駐留米軍の性急な削減を制限することや、南北戦争での南部連合軍にゆかりのある米軍基地名の変更条項などを問題にした。

これらについて、下院は民主党主導ですべて対応したが(支給額の1人当たり2000ドルへの引き上げ法案を可決、国防権限法の拒否権を覆す2/3以上での再可決)、上院で共和党の意見がまとまらず、混乱した。

1月3日には現メンバーによる議会は終了し、新メンバーによる議会がスタート、ペンディングの法案は全て廃止となる。

今回、国防法案は再可決したが、 下院が可決した2000ドルへの引き上げは諦めた。先に議決し、大統領がサインした2021年度予算案と新型コロナウイルス対応景気対策予算案(1人当たり600ドルの支給)が成立する。

国防権限法については、下院は12月28日、これを2/3以上の賛成で再可決した。大統領の拒否権を覆すには上院、下院がそれぞれ2/3以上の賛成が必要で、上院の決定待ちとなっていた。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 109 212 1 322
反対 66 20 1 87
棄権 20 1   21

合計

195 233 2 430

1月1日の上院の採決は下記の通りで、共和党の反対は7名のみで、40名が大統領の意向に反し、賛成した。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 40 40 1 81
反対 7 5 1 13
棄権 5 1 6
合計 53→52 45→46 2 100


11月3日に投票が行われたアリゾナ州の補欠選挙で、元NASA宇宙飛行士の民主党のMark Kellyが共和党現役(議員辞任で知事が一時的に指名)のMartha mcsallyに勝利した。
補欠選挙のため、一般の当選者の就任の1月3日を待たず、12月に就任、共和党が1名減となった。

大統領はツイッターで以下の通り述べた。

Our Republican Senate just missed the opportunity to get rid of Section 230, which gives unlimited power to Big Tech companies. Pathetic!!!
Now they want to give people ravaged by the China Virus $600, rather than the $2000 which they so desperately need. Not fair, or smart!

国防法案については述べず、景気対策予算案につけた条件(2000ドルへの引き上げ、Big Techを利するSection 230 の再検討)が通らなかったことを「痛ましい」としている。

ーーー

経緯は次の通り。

トランプ大統領は、2021年度予算案と新型コロナウイルス対応景気対策予算案を一旦拒否し、12月27日に一転、これにサインしたが、いろいろ条件を付けた。

新型コロナウイルス追加景気対策予算案の、1人当たり600ドルの支給に対し、成人には2000ドル、子供には600ドルを渡すこと。
Big Techを利する
Section 230 を再検討し、取り止めるか、大幅変更すること
今回の大統領選挙で発生した多くの不正投票に強く対応すること

米下院は12月28日、9000億ドルの新型コロナウイルス対策に盛り込んだ家計への600ドルの現金給付案を2000ドルに積み増す単独法案を賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 44 231   275
反対 130 2 2 134
棄権 21     21

合計

195 233 2 430

これに対し、共和党上院トップのMcConnell 院内総務は12月29日、①一人当たり2000ドルへの引き上げ、②Section 230の削除、③選挙制度検討の委員会を設置し、議会へ勧告を含めた法案を提出した。大統領の要請であるとし、3つを一括法案にするとした。

実際には、上院での法案提出を支配するMcConnell 院内総務が、2000ドルへの引き上げに反対、民主党などが反対する他の項目との一括法案にしたとされる。この案は共和党を含め反対が強く、可決される見込みはなく、McConnell 院内総務も諦めた。

その間、トランプ大統領はツイッターで2000ドル案を要求し続けた。

Give the people $2000, not $600. They have suffered enough!

$2000 for our great people, not $600! They have suffered enough from the China Virus!!!

Unless Republicans have a death wish, and it is also the right thing to do, they must approve the $2000 payments ASAP.
$600 IS NOT ENOUGH! Also, get rid of Section 230 - Don't let Big Tech steal our Country, and don't let the Democrats steal the Presidential Election. Get tough!

$2000 ASAP!

「ひ弱で疲れ切った共和党の"leadership" 」が国防権限法案を通そうとしているとし、これをやめて、もっとよい法律にせよとし、さもなくば交代せよとした。(これについては後記)

Weak and tired Republican"leadership" will allow the bad Defense Bill to pass.
Say goodbye to VITAL Section 230 termination, your National Monuments, Forts (names!) and Treasures (inserted by Elizabeth "Pocahontas" Warren), 5G, and our great soldiers being removed and brought home from foreign lands who do NOTHING for us.
A disgraceful act of cowardice and total submission by weak people to Big Tech.
Negotiate a better Bill, or get better leaders, NOW! Senate should not approve NDAA until fixed!!!....

民主党の Chuck Schumer院内総務は2日続けて、下院で議決した2000ドル法案を議決するよう求めた。

2000ドル案については、共和党内で意見が分かれている。

1月5日の決選投票を控えるジョージア州の2議員を含め、多くの議員が支持を表明している。
2024年の大統領候補とみなされているJosh Hawley、Marco Rubio 両議員は2000ドル案を推進した。
以前のリーダーNewt Gingrichは2000ドルを決めないとジョージア州で2議席を失い、上院で敗者になると警告した。

しかし、大部分の共和党議員は、追加が4000億ドルにも達するとして反対している。
討議では、「4000億ドルもの追加は多すぎる。議会は既に十分の額をCOVID支援に支給している」との発言があった。

しかし、McConnell 共和党院内総務は「必要としない多くの家庭に金が配られる」「もっと支援が必要な家庭があるなら、上院は限定した支援策を考える。しかし借入金での一斉支払いは駄目だ(Not another firehose of borrowed money)」と述べ、大統領の圧力があっても、意見を変えないことを明らかにした。2000ドル案について採決しないことを決めた。

議場で、「民主党主導の下院が通した2000ドル法案は、上院ではすぐに通るような現実的な道はない」と述べた。「上院は、追加で借金して、支援を必要としない民主党の友人に支払うようなことはしない」と付け加えた。

1月3日には新議員が宣誓、現在の議会は終了するため、既に可決されている600ドルを2000ドルに増やす法案は消えたも同様である。


国防権限法案についても、下院は大統領の拒否権を否定する2/3以上で可決したが、上院では難航した。

無所属のBernie Sanders 議員は2000ドル案が議決されるまでは国防権限法案の議決を妨害するとしている。議場でMcConnell 共和党院内総務に対し、「地元で選挙民に聞けば、直ちに2000ドルが必要としていることが分かる」と伝えた。

しかし、McConnell 院内総務は12月30日夜、討論終結を発動、討論を制限、Sandersによるfilibusterのオプションを封じた。

この結果、上院は1月1日に国防権限法案についての採決を行った。 同時に2000ドル案の議決可能性は消えた。

ーーー

国防権限法案について:

4500ページにも及ぶ総額7400億ドルの国防権限法案を巡り上下両院の共和、民主両党は何カ月も交渉を続けてきた。

米軍兵士の昇給や戦闘機および戦艦の購入数、ロシアや中国など競合国への対応などを幅広く網羅している。

法案はドイツ駐留米軍の規模維持を支持する内容となっている。国防総省は2020年7月に、トランプ大統領の決定に従い、 影響評価を行わずに、ドイツに駐留する約3万6000人のうち約1万2000人を削減すると発表したが、議会が阻止に動いた。

南北戦争の南軍を讃える全ての名称、シンボル、ディスプレイ、モニュメント、道具などを3年以内に取り除くことを命じている。

軍の施設にはBraxton Bragg 将軍の名前を付けた Fort Bragg、Robert E. Lee 将軍からのFort Lee などが有名。

第二次大戦中に欧州と日本でモニュメント、美術品、記録等を破壊から守った人々を評価するという条文もある。

your National Monuments, Forts (names!) and Treasures (inserted by Elizabeth "Pocahontas" Warren
〔大統領は以前に、
Elizabeth Warren上院議員をけなし、400年前のインデアンの女性Pocahontas から採った渾名をつけた。〕

中国の5G通信技術(Huawei製のこと)を使用する国には武器や軍隊を送るのを再検討するよう国防総省に求める条項もある。
(トランプが、これをなぜ非難するのか不明)



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