中国政府は1月15日、レアアース(希土類)への統制を強化する「レアアース管理条例」(稀土管理条例)の草案を発表した。「国家利益と産業の安全を守る」ための措置だと説明しており、ハイテク分野で対立の長期化が見込まれる米国を牽制する狙いとみられる。
レアアースは中国の伝統産業の変容、新興産業の発展、国防科学技術産業の発展にとって非常に重要であると指摘し、「特別に保護」し、希土類の採掘と製錬の分離のために「総合指数管理システム」を確立する必要があるとしている。
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中国の全国人民代表大会常務委員会は2020年10月17日、ハイテク製品の輸出管理を強化する輸出管理法案を可決、同法が成立した。12月1日に施行した。
国家の安全を損ねると判断した海外企業をリスト化し、輸出を禁止できるようにする。
米国が通信機器大手、華為技術(Huawei)など中国企業への禁輸措置を強める中、同様の対抗措置が可能となる。
対象品目の全容は明らかになっていないが、高速通信規格「5G」関連や、ソフトウェアの設計図である「ソースコード」などが入る見通しで、レアアースが品目に含まれるかが焦点の一つである。
2020/10/21 中国、輸出管理法成立、ハイテク禁輸
中国商務部は12月2日、国家安全に関わる物品や技術の輸出を制限する輸出管理法を巡り、規制対象となる品目の一部を発表した。レアアースは含まれていない。
2020/12/4 中国、輸出管理法の対象品目第一弾を発表
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工業情報化省が公表した草案によると、条例はレアアースの採掘や精錬分離、利用、製品流通などサプライチェーンの全体に適用する。
また、レアアースの輸出入に携わる企業に対し輸出管理などの法律・法規を順守しなければならないと明記した。
「輸出管理法」でレアアースが対象になるとの見方があるが、複数の制度を使い統制強化が進む可能性がある。
草案について2月中旬まで専門家などの意見を集めており、年内にも施行される可能性がある。
草案では、国内のレアアースの採掘、精製、分離に亘る割当管理、投資の承認システム、監督を含んでおり、中国がレアアース産業の管理を標準化し、産業の高度の開発推進を進めると見られる。
レアアース産業の政策立案の責任を持つ調整機構を設立する。
レアアースの生産割当制度は2006年から行なわれているが、厳しい規則や監督はなかった。新制度がこれを行なう。
レアアースの輸出についても影響があると見られている。
レアアースの輸出は最近減少しており、2020年は35,448トンで、前年比23.5%減となっている。
一つは、政府が産業の高度化を図り、レアアース鉱石での輸出を減らし、加工品の輸出を奨励していることによる。
政府が戦略的材料の規制を強化していることも影響している。
中国紙は本件の記事のなかで、トランプ米大統領が昨年、国防生産法を使用して国の鉱業開発を加速し、米国の輸入鉱物への依存を減らすことを承認する執行命令に署名した、と述べている。
トランプ大統領は2020年9月30日、レアアースにおける米国の中国依存を低減し、米国内の鉱山開発を加速させるため、国内鉱業界の緊急事態を宣言する大統領令に署名した。
大統領令は、内務省に対し、国防生産法(Defense Production Act)に基づき国防のための鉱石加工の資金を得るための計画を策定することを命じている。
国防生産法は朝鮮戦争の勃発を受け、1950年9月8日に成立した。大統領に下記の権限を与える。
・企業に対し、国防に必要とみなされる契約を結ぶことを命じる権限。
売り惜しみや、便乗値上げすることを禁じる対象品目を指定する権限。・国防のため、モノやサービスや設備を割り当てるためのメカニズム(規則や命令など)を決める権限。
・国防のために必要な不足する物品や重要な物品が防衛のために使えるよう、民間経済に介入する権限。
・国防のため、資産の徴用、業界への生産増の命令、賃金・価格のコントロール、労働紛争の終止、
消費者与信や不動産与信の制限、優先度の設定、原材料の配分などの権限
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