塩野義、コロナ重症化抑制薬の開発権を米社にライセンス

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塩野義製薬は1月26日、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めていたDP1受容体拮抗薬S-555739について、 米国のBioAge Labs, Inc.との間で COVID-19の重症化抑制を対象としたライセンス契約を締結したと発表した。


BioAge Labsは本化合物のCOVID-19の重症化抑制に関する米国、欧州での独占的開発・販売権を獲得、さらに、
新型コロナ以外の感染症の重症化抑制など、他の疾患への適応追加に対する独占的交渉権が付与される。

塩野義は、本契約の締結に伴う一時金、今後の開発進展に応じたマイルストン、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを受領する。

この化合物は、塩野義が創製したDP1受容体拮抗薬であり、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めていたが、この開発は現在中止している。
複数の非臨床および2,400例以上を対象とした臨床試験において、DP1受容体への高い親和性および選択性に加え、良好な忍容性、安全性が確認されている。

DP1受容体(DP1 receptor)は、ヒトなどに存在するGタンパク質共役受容体の1種で、全身の様々な細胞に発現しており、様々な生理反応に関与している他、病理学の分野では炎症やアレルギーに関係する受容体の1つとして知られる。

BioAge Labs は加齢や老化に関連する疾患を治療するための医薬品を開発している米国のバイオテクノロジー企業で、同社が実施した独自のAIによるオミクス解析(生体を構成しているさまざまな分子を網羅的に調べること)から、加齢に伴う免疫機能低下を改善する創薬ターゲットとして、DP1受容体が同定された。

加齢による免疫機能の低下は、感染症に対する罹患率ならびに死亡率を高める大きなリスク因子となる。そのため免疫機能を亢進させることで、COVID-19を含む種々の感染症の重症化抑制に繋がる可能性が示唆されている。

また、アイオワ大学で実施されたSARSコロナウイルスを感染させた加齢マウスモデルに既存のDP1受容体拮抗薬を投与した試験では、マウスの死亡率の改善とともに、肺内のウイルス量の有意な低下が報告された。

これらを踏まえてS-555739のドラッグリポジショニング(ヒトでの安全性や体内動態が確認されている既承認薬について、別の疾患に対する治療薬として開発する手法)による高齢者の免疫亢進薬としての開発期待から、今回の契約締結に至った。

BioAge Labsは、2021年上期に、COVID-19患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験の開始を計画している。

塩野義では、BioAge Labsによる試験結果が良好であれば、これを活用して国内申請する可能性もあるとしている。

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