三菱商事、ベトナムの石炭火力「ビンタン3」撤退へ 

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三菱商事がベトナムで計画している石炭火力発電プロジェクト「Vinh Tan 3」から撤退する方針を固めたことが報じられている。
地球温暖化対策で、石炭火力発電への世界的な批判が強まることや、それに伴って融資など資金対応が難しくなっていることに対応した。同社が計画中の石炭火力から撤退するのは初。


小泉進次郎環境相が反対を表明し、
機関投資家大手18機関が撤退を求めたVung Ang 2石化火力発電事業については、事業継続の意向である。

Vinh Tan 3 計画

計画:1,980MWの石炭火力発電(超々臨界圧)

立地:ビントゥアン省

隣接して既にビンタン1、2、4発電所が稼働中。

事業者:Vinh Tan 3 Energy Joint Stock Company

出資者:

One Energy 49%
ベトナムのPACIFIC Corporation 22%
ベトナム電力公社(EVN) 29%
合計 100%


* One Energy 出資者

当初 2019/12 2020/10
三菱商事 40% 40%
中国電力 20% 20%
香港CLP 40% 離脱
KEPCO 40%
合計 100% 100%

総事業費:約20億米ドル

設計・調達・建設担当は中国の哈爾浜電気

予定:2020年建設開始、2024年稼働開始

融資団には、中国の国家開発銀行を中心に、中国工商銀行(ICBC)、中国建設銀行、中国銀行、交通銀行、英 Standard Chartered Bank、HSBCが加わる予定だった。

しかし、Standard Chartered Bankは2019年12月17日、石炭ポリシーを強化し、ビンタン3とブンアン2の双方から撤退した。そして2020年1月に、HSBCもすでに撤退していたことがわかった。HSBCは同発電所のフィナンシャル・アドバイザーに選定されていた。

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三菱商事が参加するOne Energy はベトナムのVung Ang 2 石炭火力発電事業にも参加している。

計画:1,200MW(600MW×2基)の石炭火力発電(超々臨界圧)

立地:ハティン省ブンアン経済区内(既設のブンアン1石炭火力発電所の隣接地)

事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company

出資者:OneEnergy Ltd.(三菱商事 40% / 中国電力 20% / KEPCO 40%)が100%

当初 2011/9 2012 2018/4
OneEnergy 30% 30% 48.45% 100%
現地 LILAMA 25% 撤退
Ree 冷蔵電気工業 23% 48% 51.55%
その他 22% 22%

総事業費:約22億米ドル

融資者:国際協力銀行と民間金融機関

設計・調達・建設(EPC)契約者:(当初)Energy China GPEC(中国)、GE(米)

             両社が撤退し、韓国勢が引き受けるとする報道がある。

予定:2020年建設開始、2024年稼働開始

小泉進次郎環境相は2020年1月21日、三菱商事が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について再検討を訴えた。 計画について「理解が得られるものではなく、つくるのはおかしい」と異例の反対意見を表明した。日本以外の国の企業が建設を担当し、政府の輸出要件に反することを理由に挙げた。

「日本がお金を出しているのに、結果的にプラントを作るのは中国やアメリカの企業だ。こういう実態はおかしい」と述べた。

2020/2/6 小泉環境相、ベトナムへの石炭火力建設計画に反対 

機関投資家大手18機関は2020年10月21日、Vung Ang 2 石炭火力発電事業に投融資等で関与している日本と韓国の企業・金融機関に対し、気候変動を悪化させるとして同事業から撤退するよう求める共同書簡を送付した。

2020/12/1 投資家連合、三菱商事などのベトナム石炭火力計画からの撤退を要求

三菱商事は2018年10月に「ESGデータブック」の改訂版を発表し、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を発表しているが、すでに開発に着手した案件(本件を含む)は例外としている。

国際協力銀行(JBIC)は、2020年12月28日、Vung Ang II Thermal Power との間で、ブンアン2石炭火力発電事業を対象として、融資金額約636百万米ドル(JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンスによる貸付契約を締結した。



付記

三井物産の安永竜夫社長は2020年10月9日のロイターとのインタビューで、インドネシア、中国、マレーシア、モロッコの4カ国に持つ石炭火力発電事業を2030年までにゼロにする考えを示した。各国の事情を考慮しつつ「売却のタイミングを見ていく」とした。

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