ファイザーワクチン「5回」問題

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厚労省は2月9日、ファイザーのワクチンについて、1つの小瓶から6回分の接種ができることとなっていたが、国内の注射器では5回しかできないことを明らかにした。

現在、1つの容器で6回の接種を前提にしているため、計画されている供給量で接種を受けられる人数は2割近く減ると騒ぎになっている。

実は、ファイザーとの基本合意では1瓶5回を前提に6000万人分、1億2000万回分の供給を受けるとなっていた。

製品は、小瓶に1.8 mlの塩化ナトリウムを加えて希釈し、注射剤2.25 mlが得られる。
各患者に与える注射は0.3mlとなっている。

計算上では2.25 ml ÷ 0.3ml で、7回の投与すら可能である。

しかし、ファイザーは当初、1つの容器で5回の接種を前提にしていた。 下記の通り、注射器によって0.3ml以上使わざるを得ないものがあるため、安全を見て、全体をそれに合わせたと思われる。

日本で一般に使われている注射器は注射器の端に薬が残る構造になっている。 残った分は捨てざるを得ず、1回で0.3ml 以上が必要となり、1瓶5回が正しい。

欧米ではその部分にゴムを詰め、薬が残らない Loaded 注射器が流通している。日本でも一部使われている。

一般の注射器

Loaded type

この場合、1回0.3mlでよいため1瓶で5回使っても、まだ余ることとなる。

ワクチンが欧米で投与され始め、貴重なワクチンを捨てることになると、このことが話題になった。

この状況を勘案して、1瓶6回に変更したと思われる。但し、欧米でも全てが Loaded注射器を使っているのではない。

欧州連合(EU)の機関である欧州医薬品庁(EMA)は、1月8日、ファイザー製ワクチンの使用のためのプロトコルを更新したが、この問題について下記のように述べている。

このワクチンの小瓶には、6回分の投与に十分な量が入っていることを認める(1瓶で6回使うことが公式に許可)。
ただし、そのためには、注射器や針の部分にワクチンが残る量が少ないものを使う必要がある。
標準的な注射器と針を使うと、6回分には足りない場合がある。

厚労省とPfizerは2021年1月20日、新型コロナウイルスワクチンについて、日本への供給契約を正式締結したと発表した。2021年に1億4400万回分(1人2回接種の場合7200万人分)が供給される。

しかし、基本合意での1瓶5回を前提にした6000万人分を1瓶6回に置き直しただけであり、供給される量は基本合意と同じである。

厚労省は今になって、国内で用意されている注射器では5回しかできないとするが、上記の事情は知っている筈である(知らなければおかしい)。また、日本にLoaded注射器が十分にないことも知っている筈である。

基本合意時の6000万人分を7200万人分に増やして発表すべきでなかった。但し、Loaded型注射器なら1瓶で6回使用できるとすればよかった。

なお、ニプロでは増産を検討している。


付記

このタイプの注射器を生産している世界最大の注射器メーカーBecton Dickinsonは、このような注射器は「ニッチな製品」であり、需要は「伝統的に最小限にとどまっている」 ため、「このような製品の生産能力は限られており、生産能力を高めるには時間がかかる」としている。

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これまでの注射器ではワクチンに限らず、貴重な医薬品を必ず無駄にすることになる。

素人の疑問として、ローデッドタイプが発明された後、なぜ、早急に切り替えなかったのだろうか。既存のものに、薬を無駄にすることよりも大きな利点があるのだろうか。

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