DICは2月19日に発表した2020年12月期決算で事業整理損として特別損失8,762百万円を計上した。
DICは2019年8月29日、BASFの顔料事業であるBASF Colors & Effectsに関する株式及び資産の取得を決定したと発表した が、独禁法当局の審査に時間がかかっていた。
事業整理損は本件での問題解消措置として実施する事業売却に関するもので、これにより日本とEUの承認を得た。
現在、米FTCの承認手続きを行なっている。
付記
2021年6月30日をもって全ての手続きが完了したため、両社間でクロージングに合意、資産および株式の買収を完了した。
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DICは2019年8月29日、BASFの顔料事業であるBASF Colors & Effectsに関する株式及び資産の取得を決定したと発表した 。
DICは高成長で高付加価値なスペシャリティ領域(ディスプレイ・化粧品・自動車など)における顔料業界のリーディングカンパニーを目指し、機能性顔料の拡大を進めてきた。
同社はそのうち有機顔料とエフェクト顔料(アルミ顔料)で世界有数の会社だが、BASFは欧州を中心にグローバルに拠点を有し、高級顔料、エフェクト顔料(化粧品向け)及び特殊無機顔料において世界有数の会社で、両社の製品ポートフォリオは重複が少なく製品補完性が極めて高い。
買収により、市場での評価が高い高機能製品をポートフォリオに取り込み、機能性顔料事業を拡大する。
取得価額は、対象事業の企業価値(1,150百万ユーロ)から2018年末時点の現預金・借入金等の残高を調整した 985百万ユーロ(1,162億円)である。
BASFの顔料事業は、全世界で約2,600人の従業員を有しており、2018年の売上高は約10億ユーロであった。
当初、取引完了を2020年末までとしていたが、独禁法審査で時間がかかった。昨年10月に「2021年第1四半期中」と変更した。
日本の公取委は両社の事業の独禁法上の問題点を分析し、Pigment Red 179、Pigment Violet 29、Pigment Red 202が問題であると指摘した。
公取委の指摘を受け、DICは米国子会社であるSun Chemical CorporationのBushy Park, South Carolina工場で生産されている高級顔料に関わる事業を売却する方針を決定した。
この工場は高級顔料の生産工場として自動車塗料向け等の顔料等を生産しているが、BASF Colors & Effectsが保有する顔料事業の取得によりDICの高級顔料は大きく拡充される見込みであるため事業戦略上の影響は軽微としている。
実は、この工場は2003年に当時の大日本インキ化学がSun Chemical を通じてBayer子会社のBayer Polymerから買収したものである。
この時点では、米FTCの指示を受け、Sun Chemical は同社のぺリレン事業をスイスのCiba Specialty Chemicals に売却している。
公取委は、DICのこの問題解消措置を前提にすれば競争を実質的に制限することにならないと認め、2000年12月24日にこれを承認した。
欧州委員会も、日本の公取委と同様の懸念を表明していたが、この問題解消措置を受け、2020年12月7日に承認した。
なお、米連邦取引委員会からの承認を得るための作業を継続中で、場合により「2021年第1四半期中」から遅れる可能性がある。
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