アンジェスは2月4日、オーストラリアで実施中の高血圧DNAワクチンの第I/IIa相臨床試験において、投与後の経過観察期間を経て、初期の試験結果の評価を行った結果、重篤な有害事象はなく、安全性に問題がないこと、また、アンジオテンシンIIに対する抗体産生を認めたと発表した。
今後、安全性、免疫原性および有効性を評価する試験を継続的に行っていく。
今回の臨床試験は、高用量のアンジオテンシンII受容体拮抗薬による血圧のコントロールが必要な高血圧患者を対象とした偽薬(プラセボ)二重盲検比較試験で、安全性、免疫原性および有効性の評価を目的としたもの。症例数は 24例で、高血圧ワクチン投与が18例、プラセボ投与が6例であった。
高血圧の原因は下図の通り。
腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠという物質をつくる。
アンジオテンシンⅠはアンジオテンシン変換酵素によりアンジオテンシンIIに変換される。
アンジオテンシンⅡは
①全身の動脈を収縮させるとともに、
②副腎皮質からアルドステロンを分泌させ、アルドステロンはNaを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加し、血圧が上がる。
https://www.adalat.jp/ja/home/pharmacist/basic/01/t07.php の図をもとに補正
高血圧の治療においては多くの経口医薬品が使用されている。これらの薬は毎日忘れずに服用する必要がある。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI):アンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)の酵素活性を阻害することにより、アンジオテンシンIIの産生を抑制、血圧を下げる。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB):アンジオテンシンⅡは受容体に作用してアルドステロンを分泌させるが、この受容体を阻害する。
このため同社では、血圧上昇作用を持つ体内物質である「アンジオテンシンII」に対する抗体を体内で作り出し、その働きを抑えることで高血圧を治療することを目的にDNA ワクチンの開発を進めている。
アンジオテンシンⅡは体内でつくられるため、免疫系で外敵と認識されず、抗体がつくられにくい。
このため、アンジオテンシンⅡと別の物質を合体させた疑似アンジオテンシンⅡのワクチンをつくった。これを注射し、アンジオテンシンⅡに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンⅡの作用を減弱させることで長期間安定した降圧作用を発揮する。
注射剤である DNAワクチンは一度の投与で長期間にわたって効果が持続することが期待されていることから、特に服用の難しい高齢の患者の利便性は大幅に向上する。
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