イタリア、ECB前総裁のマリオ・ドラギ氏が次期首相に 

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欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ(Mario Draghi)氏は2月13日、イタリア首相 に就任した。
新型コロナウイルス対策と低迷する経済の立て直しを行なう。

ドラギ氏は2011年11月1日から2019年10月31日までECBの第3代総裁を務めた。'Super' Mario と呼ばれる。

連立与党の中核だった「五つ星運動」と中道左派「民主党」に加え、1月に連立離脱した「イタリア・ヴィーヴァ」や、これまで野党であった中道右派の「同盟」や「フォルツァ・イタリア」なども含めた大連立内閣が発足した。

大臣のうち、8人はテクノクラートで、残りは連立の諸党から選んだ。「五つ星」から4人、「民主党」「同盟」「フォルツァ・イタリア」から各3人、「イタリア・ヴィーヴァ」と「自由と平等」から各1人が選ばれた。


イタリアでは以前から経済の立て直しが最優先課題であった。

2018/10/29 イタリア、来年度予算案で欧州委と対決

2019/5/10  イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ

昨年からは新型コロナ問題が発生、対策が急がれるなか、各党が政争を続けて きた。


2018年6月1日に 「五つ星運動」と「同盟」の連立で、法学者で政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足した。
政治姿勢の異なる2つの党の連立で、当初から早期瓦解の可能性も指摘されていたが、2019年8月に、「同盟」が離脱、連立が崩壊した。

ライバル関係にあった「五つ星運動」と野党の「民主党」、その他が連立を組み、第二次Conte内閣が誕生した。

本年に入り、「民主党」から独立した少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」がConte首相を批判、連立を離脱した。

Conte首相は大統領に辞表を提出、新たな連立政権で第3次内閣を目指したが失敗した。


マッタレッラ大統領は欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏を大統領府に呼び出した。ECB総裁として欧州ソブリン債危機を沈静化させた手腕が高く評価されている。

イタリア最大与党で議席の約3割を握る左派「五つ星運動」は2月11日、ドラギ前総裁を次期首相として支持することを決めた。党員によるオンライン投票で 賛成が59.3%、反対は40.7%だった。

与党の中道左派「民主党」やベルルスコーニ元首相率いる野党の中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」など、極右政党「イタリアの同胞」を除く全ての主要政党から幅広い支持を取り付けた。

ドラギ首相は、コロナ渦からの早期回復計画と、EUから与えれる復興基金(2000億ユーロ以上)をどのように使うかを早急に決めることが求められている。

欧州連合(EU)首脳会議は2020年12月10日、新型コロナウイルスで傷んだ経済の再生を目指す復興基金と中期予算の計約1兆8000億ユーロで合意した。承認を拒否してきたハンガリーとポーランドが妥協に応じた。

EU首脳会議は2020年7月17~21日、90時間以上にも及ぶ連続協議の末、「歴史的」とも評される復興パッケージに合意した。
欧州理事会では中期予算計画(多年度財政枠組み)の議論で、予算の主要拠出国だった英国のEU離脱を受けて大幅な歳入減となる中、復興パッケージの予算規模などをめぐって加盟国間の対立が先鋭化していた。

2020/12/21 EU、コロナ復興基金と中期予算でようやく合意 

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2018年3月4日の総選挙では、パオロ・ジェンティローニ首相の「民主党」が大敗した。

イタリアでは絶対多数を占める政党はなく、多数の政党が乱立する。このため連立政権とならざるを得ないが、政策ごとに主張が異なり、なかなかまとまらない。また、仮に連立が成立しても、特定の政策で譲りあえない場合、離脱の可能性もある。

このため、総選挙後政治の空白が続いていたが、反EUの「五つ星運動」と「同盟」が連立することとなった。

  2018年選挙
元老
(上院)
代議院
(下院)
五つ星運動 112 +58 227 +118
同盟 58 +41 125 +107
(小計) (170)   (352)  
民主党 53 -52 112 -185
フォルツァ・イタリア 57 -41 104 +6
その他 41 -12 62 -46
合計 321   630  
(過半数) (161)   (316)  


2018年6月1日に両党の推す法学者で、政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足した。

「五つ星運動」と「同盟」は、反EUの立場では同じだが、政治姿勢の異なる2つの党の連立である。連立の早期瓦解の可能性も指摘されていた。

「五つ星」は失業者らへの最低所得保障など「ばらまき型」の経済刺激策を重視する。
同盟」は、EUの移民政策を批判、違法移民の強制送還の強化や、難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務づけたEUのダブリン規則の見直しを強く求める。

2018/6/5 イタリアの混迷 

その後、2019年8月に予想通り 連立が崩壊し、同盟が離脱した。

連立政権を構成する「同盟」党首のサルビーニ副首相が早期の解散総選挙を要求し、内閣不信任案を議会上院に提出した
これを受け、
コンテ首相は辞任の意向を伝えた。

同盟のサルビーニ党首右派ポピュリスト政権の誕生の可能性が生まれたが、五つ星運動と中道左派の民主党はサルビーニ政権誕生阻止することで共闘した。

ライバル関係
にあったこの2党、民主党出身のレンツィ元首相が2019年9月に旗揚げした テクノクラート、民主党内の反レンツィ派が2017年に結党した「自由と平等」を加え、連立組み換えに成功、第二次コンテ内閣が生まれた。

イタリアの連立政権の一角を成す少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」を率いるレンツィ元首相は、新型コロナウイルスによる経済悪化からの復興予算を巡って政府を批判してきた。

レンツィ元首相は2021年1月13日、コンテ首相がイタリアの問題に十分対処できていないと批判、その指示を受けた同党所属の2人の閣僚が辞任し、同党は連立を離脱した。

下院では連立与党は依然として過半を占めるが、上院では定数321のうち、18票減って148議席となり、過半数(161)を割り込んだ。

コンテ首相は議会で信任投票を求めた。1月18日の下院の信任投票では、賛成321、反対259で新任された。1月19日の上院の信任投票では賛成156、反対140の僅差で乗り切ったものの、絶対多数(161)には届かなかった。

コンテ首相は1月26日にセルジオ・マッタレッラ大統領に辞表を提出した。コンテ氏は新たな連立政権の樹立を目指した。

しかし、2度にわたる連立協議を通じて第3次内閣の発足を目指したが、各党派の合意取り付けに至らなかった。



合従連衡の経緯          与党〇、野党X
第一次
コンテ内閣
第二次
コンテ内閣

2021/1

ドラギ内閣
五つ星運動
同盟

 離脱

民主党 民主党  分離
イタリア・ヴィーヴァ

 離脱X

フォルツァ・イタリア
混合会派
自由と平等
イタリアの同胞(極右)

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