第3四半期の親会社帰属損益は480億円の赤字で、通年予想も同額となる。
単位:百万円
売上高 コア
営業利益営業利益 当期利益 親会社
株主帰属2019/4-12 2,730,767 181,037 160,568 108,280 76,272 2020/4-12 2,355,441 113,612 728 -28,403 -47,830 増減 -375,326 -67,425 -159,840 -136,683 -124,102 2020/3 3,580,510 194,820 144,285 86,560 54,077 2021/3予 3,193,000 153,000 23,000 -22,000 -48,000 増減 -387,510 -41,820 -121,285 -108,560 -102,077
2020/4-12月期の営業損益
コア営業損益(百万円)
ケミカルズはMMA、石化、炭素(コークス等)のいずれも大幅減益
2019/4-12 2020/4-12 増減 内訳(億円) 機能商品 53,612 39,909 -13,703 ケミカルズ 38,393 -5,863 -44,256 MMA -191、石化 -127、炭素 -125 産業ガス 66,503 58,861 -7,642 ヘルスケア 21,936 22,380 444 その他 8,640 8,965 325 全社 -8,047 -10,640 -2,593 合計 181,037 113,612 -67,425
非経常項目(百万円)
ヘルスケア
(田辺三菱製薬)-84,534 2019/10/18にイスラエルの中枢神経系治療薬(パーキンソン病等)の研究開発 を行なうNeuroDerm Ltd.を総額11億ドル(経費込み1,252億円)で買収したが、予定した収益性が低下する見込みとなり、技術に係る無形資産を減額(詳細後記) MMA
(旧 三菱レイヨン)-19,382 米国子会社 Lucite Internationalのテキサス州BeaumontにおけるMMAモノマー及びMAA生産を終了し、工場を閉鎖することを決め 、減損損失を計上した。 2020/11/6 三菱ケミカル、テキサスのLuciteのMMAプラント閉鎖
これに関連し、コア営業損益のなかに、特別退職金 -901百万円、工場閉鎖関連損失引当金繰入額 -3,318百万円 、合計 -4,219百万円を計上した。
なお、2020年12月に新エチレン法(アルファ法)によるMMAモノマーのプラント建設を前提にルイジアナ州ガイスマーの土地を取得した。2022年半ばを目途に投資の最終判断を行い、2025年中に35万tのMMAモノマー生産設備の稼働を目標とする。
その他 -8,968 合計 -112,884
三菱ケミカルHDは2020年初めに田辺三菱製薬(従来は56.93%所有)をTOBにより100%子会社とした。
三菱レイヨンも2009年に100%子会社にしたうえで統合している。
このため、上記の減損損失は全額が株主帰属損益となる。
田辺三菱製薬について:
田辺三菱製薬は2019年10月18日にイスラエルの中枢神経系治療薬(パーキンソン病等)の研究開発 を行なうNeuroDerm Ltd.を総額11億ドル(経費込み1,252億円)で買収したが、1年後に仕掛研究開発費について845億円の減損損失を計上した。
既報 2020/11/7 三菱ケミカルHD、医薬品で減損損失計上
田辺三菱製薬は、2019年9月のコーポレートレポート2019で「ND0612」について下記のとおり述べていた。
2022年度上市をめざす。デバイスと医薬品を組み合わせた製品であり、他社の参入障壁も高く、市場価値の持続が期待される。ピーク時売上500~800億円を目標とする。
(2017/7の買収手続き合意発表時には、「現在、米国および欧州で フェーズ3に移行し、2019年度に上市が見込まれる」としていた。)
しかし、2020年11月の発表では、「第3相臨床試験の治験施設の開設および患者組み入れにおいて重要な立ち上げ期間に、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大が重なるなどしたため、2018年11月に発表した計画から約1年半の開発計画の延長を決定。このため、欧米での申請は2023年度になる見通し」としている。
買収時にはフェーズ3の準備もできていなかったことになる。どの程度、状況を把握していたのだろうか。
買収当時、この買収を疑問視する記事があった。
NeuroDermはND0612の市場規模、臨床試験の適切性、有効性について不正確な説明をしている、既にAbbVie Inc.のDuopa/Duodopaのポンプ薬剤が市場で確立されているとし、NeuroDermの企業価値は0ドルと見ている。
コロナによる遅延は想定外であるが、多額の投資に当たり、「ND0612」の可能性、問題点等について十分な検討をしたのであろうか。
田辺三菱製薬の業績は急速に悪化している。
同社は多発性硬化症治療剤「ジレニア」をノバルティス(スイス)に導出し、ロイヤリティ収入は、収益の柱となっていたが、ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めた。
2019年2月に仲裁手続きに入ったため、IFRSの収益認識基準に従いロイヤリティ収入の一部について売上収益の認識を行っていない。
2019/5/16 注目会社の決算 田辺三菱製薬
田辺三菱製薬は2020年4月28日、カナダの連結子会社Medicagoが開発中の季節性インフルエンザの予防をめざした植物由来VLPワクチン(MT-2271)の第3相臨床試験を行なった。
2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン
主要評価項目の成功基準を満たさなかったものの、プラセボより優位なインフルエンザ発症抑制効果を確認した。
しかし、米国FDA追加の臨床試験の実施を求められたため、米国での承認申請を行わないことに決定した。これにともない、2020年3月期決算で無形資産(仕掛研究開発費)の約240億円を減損処理している。
なお、Medicagoは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応したVLPの作製に成功した。
2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験開始を発表
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