韓国のLG Chemが同業のSK Innovationを車載電池の営業秘密の侵害で訴えていた係争で、米国際貿易委員会(ITC)は2月10日、SK Innovationに米国への輸入禁止命令を下した。
SK Innovationは米ジョージア州に持つ車載電池工場で部品調達ができず生産停止を迫られる。
SK Innovationは2018年11月26日、米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。
能力は9.8GWhで、2021年に生産を開始、2022年に大量生産に移る。
新工場が完成すれば、SK Innovationは韓国(忠清南道瑞山市)とハンガリー(Komárom )、中国(常州)を含めて「グローバルの四角生産体制」を構築することになる。
2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設
同社は2020年に隣接して第二工場を建設することを明らかにした。能力は11.7GWhで2023年稼働を目指す。両工場が稼働すると、年間31万台の電気自動車用の電池を生産できる。
LG Chemは2019年4月30日、SK InnovationがLG技術者を採用することにより、リチウムイオン電池技術を盗用したとし、LGの米国子会社と共同で米国ITCとDelawareの連邦地裁に提訴したと発表した。
SK InnovationがLGのリチウムイオン電池部門の77人の高度の技術と経験を持つ従業員を雇用し、LGの企業秘密を取得したと主張した。
ITCに対し、LGの企業秘密を侵害するリチウムイオン電池のサンプルと基盤技術を米国に輸入するのを止めるよう求めた。
米国国際貿易委員会は5月29日、調査開始(discovery)を決定した。
今回ITCはSK InnovationがLG Chemの営業秘密を侵害したと判断し、関税法第337条の違反を適用し、営業秘密を侵害したバッテリーと部品に対する「アメリカ国内への輸入禁止10年」を命じた。
すでに輸入されたものも、営業秘密侵害に該当する品目であれば今後10年間、アメリカ国内での生産流通や販売が禁じられる。
ITCは2020年3月の予備決定で、「SK Innovationの文書毀損などの証拠隠滅行為は営業秘密奪取を隠すための犯行意図を持って行われたことは明白であり、早期敗訴判決だけが適切な法的制裁だ」とした。今回の最終決定はその延長線上にある。
但し、公益を考慮し例外 を認める限定的排除命令("a limited exclusion order")である。
Ford Motor の電気自動車 F-150 向けのリチウムイオン電池の米国での生産のための部品の輸入は、新しいサプライヤーに移行するまでの4年間、認められる。
Volkswagenの電気自動車の米国での生産のための部品の輸入は2年間、認められる。また起亜の電気自動車で、SKの電池をつけて米国の需要家に販売されたものについて、EV電池の修理、交換のための部品の輸入を認める。
ITCは、事実上の猶予期間を設定し、LG Chemとの和解を促した。
LG ChemはSK Innovationに2000億円規模の賠償金を要求しており、SK Innovationは「金額が法外」として拒否していた経緯がある。
ITCの第三者判断を踏まえ、両社は和解の金額について交渉を始める。両社の和解が成立すればITC命令は解除され、SKは輸入・生産活動を始められる。
付記
Ford Motor のJim Farley CEO は2月11日、LG Chem とSK Innovationに和解を求めた。
"A voluntary settlement between these two suppliers is ultimately in the best interest of US manufacturers and workers."
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