米連邦最高裁は2月22日、トランプ前大統領の納税申告書を含む財務記録の開示を巡る訴訟で、コメントなしでトランプ氏側の訴えを退け、ニューヨーク州検察当局への開示を認める判断を下した。
下級審では、マンハッタン地区のCyrus Vance検事(Carter政権での同名の国務長官の息子)によるトランプ氏の納税記録提出を求める召喚状に従うよう、トランプ氏の会計事務所Mazars USAに命じていた。
Vance検事はこれまで、裁判所がトランプ氏側の訴えを退けた場合、直ちに召喚状を執行する考えをトランプ氏側に伝えている。
これを受けトランプ氏は、Vance検事の捜査は米国の歴史で最大の政治的魔女狩りで、ニューヨーク州の民主党は犯罪撲滅ではなく政敵を引き下ろすのにエネルギーを使っていると批判、正義でなくファシズムだと述べた。
最高裁はこれとは別に、トランプ氏が昨年の大統領選で敗北したウィスコンシン州とペンシルベニア州の投票を無効にするよう求めていた訴えも棄却した。
付記 米紙は2月25日、マンハッタン地区検察がトランプ前大統領の納税記録を含む財務記録を入手したと報じた。
ニューヨークのマンハッタン地検が2019年、トランプ氏と不倫関係にあったとされるポルノ女優ら2人にトランプ氏の指示で「口止め料」が支払われた疑惑をめぐる捜査の過程で、同氏の会計事務所にトランプ氏の納税記録の開示を要求した。地検側はその後、捜査を脱税や保険・銀行詐欺の疑いにも拡大した。
これに対し、トランプ氏はこの捜査を「米国史上最悪の魔女狩り」と呼び、大統領の免責特権を理由に納税記録の開示を拒否し続けてきたが、連邦最高裁は2020年7月、開示はできるとする判決を下した。
米連邦最高裁は2020年7月9日、トランプ米大統領の財務記録について、ニューヨーク連邦地検の閲覧を認める判断を示した。ただし、過去数年にさかのぼる納税記録の開示を請求していた連邦議会に開示する必要は認めなかった。
ニューヨーク地検の開示請求について最高裁は、賛成7、反対2の賛成多数で、大統領には刑事捜査を絶対に受けない特権などないと判断した
最高裁は判決で、「いかなる市民も、たとえ大統領でも、刑事手続きにおいて証拠提出を求められばそれに応じるという広く共通の責務が、絶対的に適用されないなどあり得ないのだと、この法廷の偉大な法曹家が200年前に判断を確立した。その原理を今一度、確認する」と判断を示した。
一方で最高裁は、関連した別の2件の請求について、検察が捜査資料として閲覧するトランプ氏の財務記録の内容を連邦議会と共有する必要はないと判断した。連邦議会には大統領の個人情報の開示を請求する相当の権限があるが、それは無限ではないと述べた。
この2件の請求は下級裁に差し戻された。
トランプ氏の弁護団は、召喚状は過度に広範で、政治的な嫌がらせに等しいとして、ニューヨーク州マンハッタンの連邦地裁にあらためて異議申し立てを行った。
だが同地裁は2020年8月、召喚状は有効と判断した。トランプ氏は直ちに控訴した。
しかしニューヨークの連邦高裁は2020年10月7日、改めてトランプ氏側に提出を命じた。
トランプ氏は大統領の免責特権を盾に、歴代大統領が慣例としてきた納税申告書の開示を拒否、検察が悪意から「大統領に嫌がらせ」をしようとしたと主張したが、高裁は「トランプ氏の主張はそうした結論を出すのに十分でない」と退けた。
トランプ氏の会計事務所Mazars USAは10月13日、この判決について、執行を一時的に停止するよう連邦最高裁判所に申し立てた。
今回、最高裁はこれを却下した。
トランプ大統領は自ら3人の最高裁判事を指名、保守派6 対 リベラル派3 と保守派勢力を強化したが、郵便投票を無効としての大統領選挙での再選は最高裁の支持を得られず、自らの納税申告書開示でも最高裁の支援を受けられないこととなった。
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New York Timesは2020年9月27日、次のように報じた。
過去20年以上にわたるトランプ氏や関連企業の納税記録を入手したが、過去15年間のうちの10年で所得税をまったく納めていない。
大統領が当選した2016年に納税した連邦所得税はわずか750ドルだった。
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