帝人は1月29日、富士フィルム子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)にTOBを実施すると発表した。最大216億円を投じて子会社化する。
富士フィルムは所有する50.13%の全てを応募することで合意している。第二位株主(10.41%)のニデックは応募しない意向を示している。
帝人は同日、J-TECとの間で資本業務提携契約を締結した。
TOB期間は2月1日~3月2日で、50.13%~64.98%の取得を目指す。1株当たりの買い付け額は820円で、1月29日終値より約28%高い。
64.98%(26,389,900株)の場合の取得価額は216億40百万円となる。
TOB成立後も上場を維持する。
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ニデック、INAX、 富山化学工業は、名古屋大学医学部口腔外科学講座の上田実教授の指導のもとにヒト組織・細胞を用いた移植組織の研究開発を進め、将来の事業化を模索することとし、1999年2月1日に新しいベンチャー企業としてJ-TECを設立した。
ニデックは愛知県蒲郡市に本拠を置く企業で、眼科医療機器の開発・製造・販売、自家培養角膜の研究を行なっている。
J-TECの当初の株主は次の通りで、ニデックが主体となっている。
ニデック 63.4% 富山化学工業 13.3% INAX 13.3% 東海銀行グループ 10.0%
現在の事業は次の通り。
(1)再生医療製品事業 | |||
: | ① | 自家培養表皮 | |
正常な皮膚から増殖能力が優れた表皮細胞を取り出して人工的に培養し、皮膚のようにシート状にしたものを受傷部位に移植する培養表皮移植の技術 | |||
② | 自家培養軟骨 | ||
軟骨組織はケガなどで一度損傷を受けると自然には治らない組織。 (軟骨組織には血管がなく、損傷を受けても、それを治すための細胞も、細胞を増やすための栄養も供給されないので、軟骨は自然治癒しない。) 軟骨細胞には増殖する能力があるため、患者の軟骨組織の一部を取り出し、軟骨細胞が増殖できるような環境を整えて作るのが自家培養軟骨。軟骨欠損に自家培養軟骨を移植することで修復が期待される。 |
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③ | 自家培養角膜上皮 | ||
角膜のもととなる細胞は角膜輪部(瞳の周辺の部分)に存在し、ここから新しい角膜ができる。 角膜に重度の障害を受けた場合、わずかでも正常な輪部が残っていれば、その輪部組織から角膜上皮細胞を分離・培養することにより自家培養角膜上皮をつくり、これを移植する。 |
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(2)再生医療受託事業 |
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自社製品(自家培養表皮、自家培養軟骨)の開発で得た経験・知見と、研究開発、臨床開発、薬事、生産、信頼性保証、営業などの再生医療等製品の開発・市販に必要な組織体制を保有しており、蓄積したノウハウと確立したシステムを生かし、受託サービスを提供。 | |||
(3)研究開発支援事業 |
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J-TECでは、医療用培養表皮や培養軟骨の開発で蓄積した高度な培養技術を応用して、研究用ヒト培養組織(ヒトの細胞を用いて体外で培養し、再構築させた組織)モデルを開発し、販売している。 ヒト組織に極めて近い構造を再現できるため、動物や単純な培養細胞の代替とな る種々の実験への適用が可能で、外用医薬品や化粧品の開発、皮膚を用いた各種研究に使用することができる。 |
その後、J-TEC株主の富山化学は富士フィルムの完全子会社となった。
富士フィルムは2018年5月14日、大正製薬から富山化学株式34%を取得して富山化学を完全子会社化すること、放射性医薬品の富士フイルムRIファーマと富山化学を統合し、富士フイルム富山化学としてスタートさせることを発表した。
富士フイルムは2010年8月、J-TECによる40億円の第三者割当増資を引き受けると発表した。増資引き受け後は、同社株式の41%を保有することとなる。
富士フィルムは2014年2月14日、J-TECの新株予約権の引き受けを発表した。これにより持株比率は50.33%になり、連結子会社となる。
富士フイルムは、コラーゲンなどの高分子材料に関する知見やノウハウと、素材を微粒子化・多孔化する成型技術などを応用し、「足場」の素材に求められる生体適合性、生分解性、機械強度などの性能について研究を進め、遺伝子工学を応用して、生体適合性に優れるコラーゲンをモデルとしたリコンビナントペプチド(RCP)とその量産技術を開発した。
このRCPを「足場」材として、細胞と組み合わせた再生医療材料に展開を図るため、「細胞」/「サイトカイン」を用いた培養技術に秀でたJ-TECと強固な関係を結び、研究開発を加速させる目的で資本提携を行うことを決定した。
2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携
現在のJ-TECはJASDAQ グロース市場に上場している。大株主は富士フィルム(50.13%)、ニデック(10.40%)である。
富士フィルムは保有するJ-TEC株式を全て手放し、今後は創薬支援用のiPS 細胞製品や培地、細胞治療薬の開発などに経営資源を集中する。
帝人は、「Quality of Lifeの向上に努め」「社会と共に成長し」「社員と共に成長する」という企業理念のもと、
高機能素材、
複合成形材料を製造・販売するマテリアル領域、及び
医薬品・在宅医療機器等を製造・販売するヘルスケア領域を中心に事業を行っている。
特に、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンを掲げ、持続可能な社会の実現に貢献する「環境価値ソリューション」、「安心・安全・防災ソリューション」、そして「少子高齢化・健康志向ソリューション」の3つのフィールドで、社会に価値を提供することを目指している。
成長を見込める再生医療関連の技術、製品を取り込み、ヘルスケア事業の競争力を高める。
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