米下院、1兆9千億ドルのCOVID-19対策法案可決 

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米民主党の議会指導部は2月27日未明、1.9兆ドルの追加の新型コロナウイルス対策法案を下院で審議し、同党単独で可決した。


バイデン(次期)大統領は1月14日、1兆9千億ドル(約197兆円)規模の追加経済対策案American Rescue Plan を発表した。

2021/1/18 バイデン次期大統領、1兆9千億ドル規模の追加経済対策案を発表

米連邦議会上院は2月5日、今会計年度予算の修正の大枠となる予算決議案をハリス副大統領の決定票で51対50の賛成多数で可決した。

通常、上院の決議は野党のフィリバスターを避けるため、60票の賛成が必要であるが、予算決議の形をとることで単純過半数で通すことができる。

予算決議案

連邦歳入総額、歳出総額、財政赤字(黒字)額を示した上で、国防、農業、エネルギー等20の政策分野の歳出上限額を規定するほか、当該年度以降の複数年度の財政見通しを示すもの。大統領に送付されず法的拘束力を有するものではない。

予算決議案の審議時間が50時間に限られているためフィリバスターを回避できる。

予算決議案が成立すれば、財政調整法を審議する。

予算決議に各委員会への財政調整指示(歳入、歳出、財政赤字、公的債務上限を変更するために既存の法律を改正する指示)が含まれると、各委員会はこの指示を受けて財政調整法案を策定、策定された法案は予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院の本会議で可決、大統領の署名を経て成立。

審議時間が20時間に限られているため、上院でのフィリバスター財政調整法には適用されない。

今回の経済対策は年度予算ではないが、例外的に予算決議案を通じて、民主党の賛成多数で通す予定。


上院では与野党は50/50だが、この場合のみ、上院議長を兼ねる副大統領が投票して決着させることができる。

2021/2/9 米議会、予算決議案可決、1.9兆ドル刺激策へ前進

今回の下院の議決は下記の通りで、民主党から2議員(Kurt Schrader of Oregon & Jared Golden of Maine)が反対票を投じた。最低賃金の15ドルへの引き上げに反対とされる。

民主党 共和党 合計
賛成 219 219
反対 2 210 212
棄権 1 1
合計    221 211 432

法案は上院に回され、一部修正される見込み。

民主党は、修正分の下院議決を含め、3月中旬までに法律としたいとしており、1月20日に発足したバイデン政権にとって最初の大型経済対策となる。

トランプ大統領が昨年12月27日の夜サインした9千億ドルの新型コロナウイルス追加景気対策予算案では失業保険の上乗せを3月14日までとなっており、民主党はその期限までに延長を決めたい。

今回の法案には失業保険の積み増しを8月末まで延長する措置が含まれる。

下院が通した法案には、最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれているが、上記の通り、今回は「予算決議」の下での法案となり、法案の内容が限定される。

これについては上院の議事運営専門員(Parliamentarian)が判断することになるが、2012年からこの職にあるElizabeth MacDonough 弁護士が「最低賃金引上げ」は対象外であると判断した。
下院が議決した法案のうち、この部分は修正が必要となる。

サキ大統領報道官は、バイデン大統領はこれを法案に盛り込めないとの判断に「失望している」とコメント。大統領は「今後の最善の道筋を探るために議会指導部と取り組む。フルタイムで勤務しているのに貧困生活を送る人がこの国にいるべきではないからだ」とした。但し、大統領は今回の判断を尊重し、経済対策の早期成立が必要だと訴えていると説明した。
 

最低賃金引き上げをめぐっては、議会予算局が15ドルになれば140万人の雇用が失われると試算、民主党内にも反対が強く、今回の2名の反対票を生んだ。

連邦政府が定める最低賃金は2009年以降、時給7.25ドルである。(但し、州法では10ドル以上が10州以上ある。)

今回の法案とは別に、個別に最低賃金引上げ法を通すことは可能で、共和党の上院議員は時給10ドルへの引き上げを提案している。民主党内部では、15ドル以下の最低賃金の企業に罰金を科す案など も検討されている。


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