四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定を巡り、四国電が決定の取り消しを求めた異議審で、広島高裁は3月18日、異議を認めて再稼働を容認する決定を出した。
3号機は現在、テロ対策施設の工事を進めており、10月末にも再稼働する見通し。
付記
四国電力は6月16日、伊方原発3号機を10月12日に再稼働させると発表した。営業運転の開始は11月12日。
再稼働の条件となるテロ対策施設が10月5日に完成し、再稼働に向けた環境が整う。
付記
伊方原発3号機で、重大事故に対応する待機要員1人が2017年3月~19年2月に計5回、宿直勤務中に無断外出し、保安規定上の要員数を一時満たしていなかった問題が6月に判明した。この間、保安規定で22人と定めた待機要員が1人欠けた状態で、原子力規制委員会は9月、保安規定違反と認定した。再稼働は延期になった。
付記四国電力が保安規定違反を受け延期している伊方原発3号機の再稼働について、愛媛県知事は11月19日、安全性向上などの要請事項の順守を条件に了承する考えを四電の長井社長に伝えた。
ただ「無条件ではない」と強調し、協力会社一人一人に至るまでの原子力事業者としての責任の自覚▽安全性向上と県民の信頼回復への取り組み▽「えひめ方式」(異常事象に関する通報連絡体制)の徹底―の3事項を要請した。
(えひめ方式:伊方発電所で発生した正常状態以外の全ての事態について、四国電力が県および伊方町に直ちに通報連絡し、県が全ての事案を公表する)四国電力は11月22日、伊方原発3号機の運転を12月2日に再開すると発表した。2022年1月4日から商業運転を始める。
付記
広島地裁は2021年10月4日、(停止中の)伊方原発3号機について広島県などの住民が再稼働を認めないよう求めていた仮処分の申し立てを退ける決定を出した。
広島県や愛媛県の住民7人が2020年3月に「大地震で重大な事故が起きる危険がある」として、再稼働を認めないよう求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てた。
裁判長は「地震の大きさは、観測地点の地盤ごとに増幅などの特性が異なるため、伊方原発以外での原発で基準を超える揺れが観測されたからといって、危険性があるとは言えない」と指摘して、住民の申し立てを退けた。
仮処分を申し立てたのは伊方原発から50km圏内にある山口県東部の島の住民3人で、原発近くの活断層や阿蘇山の噴火のリスクを主張した。
山口地裁岩国支部は2019年3月15日、仮処分申請を却下した。
活断層については、音波探査で、十分な調査が行われていると認定、佐田岬半島沿岸部には「 活断層が存在するとはいえず、基準地震動の評価に不合理な点はないとした。阿蘇については、運用期間中、巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断できる とした。
住民側の即時抗告審で広島高裁は2020年1月17日、「運転差し止め」を命じた。
中央構造線について、四国電力側の調査は不十分で、横ずれ断層である可能性は否定できない。
破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火を想定すべきで、噴出量を20~30立方キロとしても、噴火規模は四国電力想定の3~5倍に達する。四国電力の降下火砕物や大気中濃度の想定は過少で、これを前提とした規制委の判断は不合理とした。
2020/1/20 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め
今回、広島高裁は、「現在の科学的知見からして、原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する危険性が具体的に高いとは認められない」とし、運転を認める決定を出した。
海上音波探査を踏まえて原発敷地の2km圏内に活断層はないとした四国電の判断に「不合理な点があると認められない」とした。
阿蘇山の噴火リスクでは「専門家の間でも意見が分かれている。原発の安全性に影響を及ぼす噴火を引き起こす可能性が高いとは認められない」と結論づけた。
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伊方3号機については、広島市と松山市の住民4人による仮処分申請で、広島高裁が一旦、運転差し止めの決定をしたが、後に広島高裁がこれを取り消している。
2017/3/30 広島地裁 |
申し立てを却下
新規制基準は最新の科学的知見を踏まえている。 |
2017/12/13 広島高裁 (即時抗告審) |
運転を差し止める決定 阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合は安全が確保されない。 2017/12/15 広島高裁 四電が保全異議を申し立て |
2018/9/25 広島高裁 (異議審) |
四電の保全異議を認め、決定を取り消し 阿蘇の破局的噴火については、頻度は著しく小さく、国民の大多数も問題にしていない。想定しなくても安全性に欠けないとするのが社会通念。 破局的噴火以外で火砕流が伊方原発に達する可能性は十分小さい。 |
2018/10/27 |
再稼働 |
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